近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018
円熟を聴く 小川典子(ピアノ)
〈ドビュッシー没後100年〉
【日時】
2018年5月4日(金) 時間 11:00~11:40
【会場】
びわ湖ホール 小ホール (滋賀)
【演奏】
ピアノ:小川典子
【プログラム】
ドビュッシー:夢
ドビュッシー:前奏曲集 第2巻 より 第8曲「水の精」
ドビュッシー:映像 第1集 より 第1曲「水の反映」
武満徹:雨の樹素描II
ドビュッシー:版画 より 第3曲「雨の庭」
ドビュッシー:ベルガマスク組曲 より 第3曲「月の光」
ドビュッシー:喜びの島
※アンコール
ドビュッシー:前奏曲集 第1巻 より 第8曲「亜麻色の髪の乙女」
近江の春 音楽祭で、私の聴いた2番目の公演。
ピアニスト小川典子による、ドビュッシー没後100年を記念したリサイタルである。
彼女が得意とするドビュッシーの曲たちの中に、武満徹を一曲だけ挟んだ形のプログラム。
びわ湖ホールということで、水に因んだ曲が多く選ばれているのも、粋である。
私は、彼女の実演を聴くのは初めてだが、彼女による有名なドビュッシーのピアノ曲録音はこれまでに聴いている。
今回の彼女の実演は、自身の録音と同様、硬質な音による辛口の演奏だった。
甘ったるさのない、一本芯の通った演奏。
その意味においては、彼女はドビュッシーに合っていると思う。
ただし、彼女の演奏はあまりにも芯が強いというか、強靭なタッチによる一本気な演奏、といったところがある。
語弊があるかもしれないが、「男前」なピアノなのである。
彼女にしてみれば、軟弱なドビュッシーなんて許せない、といったところなのかもしれない。
ただ、私としては、ドビュッシーにはもう少し繊細さがほしい。
私の中では、まるでブーレーズの指揮をピアノに移し替えたかのような、アラン・プラネスによる研ぎ澄まされたドビュッシーが理想なのだけれど(前奏曲集の旧盤。Apple Music/CD)、これと同じように弾いてほしいとは言わない。
言わないけれど、せめてもう少し柔らかく弾いてくれないものだろうか…。
その点、先日聴いた深見まどかのドビュッシーは、小川典子と同じく硬派の演奏ながら、柔らかさや繊細さもあり、音の響きへの感性もより鋭敏な感じがして、大変良かった(そのときの記事はこちら)。
ただ、小川典子も、強靭な演奏とはいえ粗いわけではなく、しっかりとタッチコントロールされ各音が明瞭に鳴らされているし、またドビュッシーらしい詩にも欠けてはいない。
よく聴かれるような曖昧模糊としたドビュッシー演奏に比べれば、よほど良い。
特に、ヴィルトゥオーゾ風の要素もある「喜びの島」では、左手の伴奏音型の歯切れよさといい、コーダでの和音の輝かしさといい、彼女の特質が遺憾なく発揮されていたように思う。
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