近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018
円熟を聴く 野平一郎(ピアノ)
【日時】
2018年5月4日(金) 時間 13:00~13:40
【会場】
びわ湖ホール 小ホール (滋賀)
【演奏】
ピアノ:野平一郎
【プログラム】
J.S.バッハ/ブゾーニ:コラール前奏曲 「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」 BWV645
J.S.バッハ:3声のシンフォニア から
第1番 ハ長調 BWV787
第2番 ハ短調 BWV788
第5番 変ホ長調 BWV791
第6番 ホ長調 BWV792
第7番 ホ短調 BWV793
第9番 ヘ短調 BWV795
野平一郎:バッハによるトランスフォルマシオンIV
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV971
近江の春 音楽祭で、私の聴いた3番目の公演。
作曲家兼ピアニスト野平一郎によるリサイタルである。
彼の実演を聴くのは今回が初めて。
プログラムとしてはほとんどがバッハの曲で、その間にバッハに基づく自作のパラフレーズがはさんである。
一つ前の小川典子の公演もそうだが、何気ないプログラムながらしっかりと考えられている。
まず最初に、バッハ/ブゾーニの「目覚めよと呼ぶ声あり」。
この曲で私の好きな録音は
●フレデリック・チュウ 1990年9月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ゴードン・ファーガス=トンプソン 1991年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ジャンルカ・カシオーリ 1996年8月セッション盤(Apple Music/CD)
●マウリツィオ・バリーニ 2005年セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●ハンネス・ミンナール 2013年6月25~27日セッション盤(Apple Music/CD)
あたりである。
これらに比べると野平一郎の演奏は少しごつごつしていたけれど、ブゾーニ編曲だからといって下手にデフォルメするのでなく、バッハらしい敬虔さが感じられたのは良かった。
それから、バッハの3声のシンフォニアからの抜粋と、あとイタリア協奏曲。
これらの曲のモダン・ピアノによる演奏で、私の好きな録音は
3声のシンフォニア
●アンドラーシュ・シフ 1992年12月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
イタリア協奏曲
●アンドラーシュ・シフ 1989年セッション盤(DVD)
●アンドラーシュ・シフ 1991年1月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
ピアノによるバッハというと、私にとっては一にも二にもシフである。
シフの弾くバッハは、各声部がまるで別人のように、あるいは手が3本も4本も生えているかのように、完全に独立して「歌」をうたっている。
バスや内声部がここまで「歌う」ピアノは、私はシフ以外に聴いたことがない。
神経質なほどに、声部ごとの独立性がきわめられている。
まさに完璧である。
しかし、神経質なまでに完璧で、こだわりぬいているにもかかわらず、きわめて重要なことに、彼の手になるバッハの音楽は、まさにその場で生まれているかのように自然体で、清澄であり、奇異性や作為性が感じられない(ここがグールドとの大きな違いだと思う)。
朝の風のように爽やかで、心からの愉悦に溢れている。
あまりに朗らかなので、涙が出てしまう。
そんなバッハに慣れてしまっている私には、今回の野平一郎の演奏は、各声部の独立性にせよ、歌心にせよ、物足りなさを感じてしまった。
シフと比べるのは、酷かもしれないけれど。
テンポをときに揺らして弾くのも、古楽器演奏からの影響と思われるが、シフのようには生き生きと聴こえなかった。
ただ、野平一郎のやや不器用で質実剛健な音楽性は、バッハでなくベートーヴェンやブラームスには合うかもしれず、そういった曲もいつか聴いてみたい。
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