2017年度 相愛大学音楽専攻科修了演奏会
【日時】
2018年1月14日(日) 開演 17:00 (開場 16:30)
【会場】
ザ・フェニックスホール (大阪)
【演奏・プログラム】
・菱沼 円(マルチパーカッション)
F.ジェフスキー:大地へ
J.ササス:マトルズ・ダンス
(Pf 美越 希)
・山本 裕子(フルート)
C.ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調 op.283
(Pf 関 由佳)
・井上 結衣(ソプラノ)
O.レスピーギ:舞踏への誘い
G.ドニゼッティ:歌劇 《リタ》 より "この清潔で愛らしい宿屋よ"
G.ドニゼッティ:歌劇 《ドン・パスクアーレ》 より "その騎士のまなざしに"
(Pf 髙木 理枝子)
― 休憩 ―
・川向 志保(マリンバ)
T.ゴリンスキ:ルミノシティ
一柳慧:パガニーニ・パーソナル
(Pf 美越 希)
・山本 舞(ソプラノ)
W.A.モーツァルト:すみれ
R.シュトラウス:きみはわが心の冠
G.ドニゼッティ:歌劇 《連隊の娘》 より "富も栄華の家柄も心を変えることはできないわ"
(Pf 髙木 理枝子)
・奥村 悠樹(チェロ)
J.ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 op.99 より 第1、4楽章
(Pf 細見 理恵)
― 休憩 ―
・鰐渕 陽介(マルチパーカッション)
小出稚子:花街ギミック
J.フィッシャー:雲の研究
・植田 和佐(クラリネット)
F.プーランク:クラリネットとピアノのためのソナタ
(Pf 高御堂 なみ佳)
・黒田 美羽(ソプラノ)
P.チマーラ:ストルネッロ
U.ジョルダーノ:歌劇 《アンドレア・シェニエ》 より "母が亡くなって"
V.ベッリーニ:歌劇 《ノルマ》 より "清らかな女神"
G.ヴェルディ:歌劇 《シチリア島の夕べの祈り》 より "ありがとう、愛する友よ"
(Pf 髙木 理枝子)
相愛大学の大学院(音楽専攻科)の修了演奏会を聴きに行った。
最初の菱沼さんは、マルチパーカッション。
ジェフスキーの「大地へ」は、植木鉢のようなものが4つ置かれ、それぞれ叩くと「ソ」「ド」「ミ」「#ソ」の音が鳴るようになっており(私には絶対音感がないため絶対音高は分からず、ここでは階名表記)、これを叩きながら英文を朗読する、という変わった曲。
この植木鉢、叩くと意外とよく響き、良い音が鳴る。
ササスの「マトルズ・ダンス」は、ピアノとドラムによるデュオ曲で、複雑なリズムだがノリが良く、ミシェル・カミロをもっと土俗的にしたような曲。
息を合わせるのが大変難しそうである。
次の山本裕子さんは、フルート。
曲はライネッケのフルート協奏曲で、ややかすれたような音になってしまってはいたが、最後の速いパッセージなど見事だった。
次の井上さんは、ソプラノ。
レスピーギの「舞踏への誘い」は、意外にも大変ロマンティックな曲。
あのレスピーギも歌曲ではこんな作風だったのか。
ドニゼッティのアリア2曲では、少し硬さもあるけれど、しっかりとした声が出ていたように思う。
休憩を挟んで、次の川向さんは、マリンバ。
昨年の卒業演奏会でも彼女の演奏を聴いたが(そのときの記事はこちら)、今回の曲(ゴリンスキの「ルミノシティ」)でも昨年同様、マリンバならではのぼわーっとした神秘的な響きが楽しめた。
一柳慧の「パガニーニ・パーソナル」では、一転して木琴らしいカチカチした音で、あまりにも有名なパガニーニの主題が現代風に面白く変奏されていた。
次の山本舞さんは、ソプラノ。
どことなく真面目でかっちりした印象の声であり、今回3曲中2曲でドイツ語の歌が選ばれているのも頷けた。
次の奥村さんは、チェロ。
こうして色々な曲を聴いた後にこのブラームスのチェロ・ソナタを聴くと、あぁやっぱりブラームスはいいな、と思う。
重々しくも情熱にあふれた、感動的な曲である。
演奏は、表現がやや硬く、もう少し音と音との間のニュアンスが豊かだと良かったけれど、男性らしい力強さはよく感じられた。
再度休憩を挟んで、次の鰐渕さんは、マルチパーカッション。
不思議な楽器がたくさん出てきた。
シャカシャカ音の鳴るお手玉大のボールのような形をした「アサラト」、転がすと雨のような音がする筒状の「レインスティック」、微分音程のわずかな音高差のある複数の「おりん」を並べた楽器、半球状の発泡スチロールに銅線を通してトライアングルを吊るした楽器、等々…。
どれもかなり独特な音がして、大変面白かった。
こんな音は、めったに聴けないだろう。
しかも、演奏はとても難しそう。
次の植田さんは、クラリネット。
プーランクのクラリネット・ソナタでは、私はマイケル・コリンズ盤(NML/Apple Music)が好きで、それと比べると急速なパッセージの滑らかさや高音部の繊細さに物足りなさを感じるけれど、中低音についてはかなり良かったように思う。
特に第1楽章の緩徐部分や、第2楽章が大変美しく、弱音でもふわふわすることなく、しっかりした音が出ていた。
そして、何といってもピアノ・パートの高御堂さん。
私は彼女のファンで、そのために今回聴きに行ったという面もあるのだが、こういった室内楽でもやはり彼女は抜群にうまい。
「修了演奏会」のような場では、どうしてもピアノ・パートは「いかにも伴奏」になりがちだが、彼女が弾くと途端に音楽的な演奏になり、室内楽としての完成度が高くなる。
雄弁な低音から美しい高音まで、豊かな表現力で聴かせるし、それでいて全体的にしっかりと緊密にまとまっていて、弛みがない。
上記コリンズ盤でピアノ・パートを弾いているのはマイケル・マクヘイルだが、高御堂さんの演奏はマクヘイルにひけを取らないと思う。
マクヘイルの演奏がカラッとしていて、新古典主義たるこの曲本来のイメージにより近いのに対して、高御堂さんの演奏はもっとしっとりしていて、この曲の「隠れた美しさ」を引き出すような趣がある。
東京にはもちろん名ピアニストが目白押しだけれど、関西にも魅力的なピアニストがいて、彼女はその筆頭格の一人だと思われる。
関西のピアノファンの方には、機会があったらぜひご一聴いただきたい。
そして最後の黒田さんは、ソプラノ。
彼女の歌声も、昨年の卒業演奏会で聴いたが(そのときの記事はこちら)、今回もそのとき同様、もうプロといっても過言ではない堂々たる歌いっぷりであった。
声量がかなりあるし、立ち居振る舞いも堂に入っていて、そのままオペラの舞台に立てそうである。
ゲオルギューのような「余裕」まではまだ聴かれないにしても、若いエネルギーにあふれ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、素晴らしい。
全体に、多彩な楽器や曲が聴ける、楽しいコンサートだった。
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