2017年モントリオール国際音楽コンクール(ピアノ部門)が終わって | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

カナダで開催された、モントリオール国際音楽コンクール(今年はピアノ部門)が、終わった。

これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)感想を書いてきたが、とりわけ印象深かったピアニストについて、忘備録的に記載しておきたい。

ちなみに、これまでの記事はこちら。

 

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

ファイナル 第1日

ファイナル 第2日

 

 

 

Sélim Mazari (France AGE 24)

潤いのある美しい音が印象的。

美しいといってもべたつかない、いかにもフランス風な音色。

スカルラッティのソナタ ホ長調 K.162、ベートーヴェンの「エロイカ変奏曲」、ドビュッシーの「映像」第2集あたり、大変美しい。

 

Ismaël Margain (France AGE 25)

こちらも同じくフランス風の美しい音色。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調が印象的。

バッハのパルティータ 第1番も、やや直線的だが悪くない。

 

Eddie Myunghyun Kim (South Korea AGE 27)

ヴィルトゥオーゾ風の勢いとロマン的な美しさが印象的。

バッハ/ブゾーニのトッカータ ハ長調 BWV 564が良かった。

 

JeungBeum Sohn (South Korea AGE 25)

スマート系技巧派。

と思いきや、セミファイナルのラヴェル「夜のガスパール」やバラキレフ「イスラメイ」はおとなしめだったのが残念。

でも1次のリストのピアノ・ソナタはとてもうまかった。

 

Jinhyung Park (South Korea AGE 21)

今回ファイナリスト。

スマート系技巧派。

とてもうまい。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第24番 嬰へ長調「テレーゼ」、リストの「タランテラ」、ヒナステラのピアノ・ソナタ 第1番、ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調あたりが印象に残っている。

 

Vladislav Kosminov (Uzbekistan AGE 29)

私の勝手なチョイスでは今大会のMVP。

強靭なタッチ、深々とした音は、2015年浜コンのDmitry Mayboroda(ドミトリー・マイボロダ)に匹敵する。

ただ、「知」と「情」のバランスでいうと、Mayborodaが「知」寄りであるのに対し、Kosminovは「情」のほうに傾いている。

知的というよりは、やや感覚的なところのある演奏。

方向性でいうと、リヒテルとホロヴィッツの間くらいか。

野生的な直感による豪快さと情感が魅力であり、もし私が宣伝業者だったら「リヒテルの再来」とでも書くかもしれない。

彼がYouTubeにアップしている自身の演奏動画をいくつか観てみたが、それらの中には粗いものも多い。

しかし、今回のコンクールくらいの完成度で弾いてくれたら、私には何の不満もない。

バッハの平均律第2巻 より 嬰ハ短調 BWV 873、モーツァルトのピアノ・ソナタ第9 (8) 番 ニ長調 K.311、リストの「スペイン狂詩曲」、ラフマニノフの「音の絵」op.39-5、いずれも印象的な名演。

今後の活躍に大いに期待したいピアニストである。

 

Caterina Grewe (Germany AGE 29)

音が美しく、端正な演奏。

プロコフィエフのピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調、キレッキレというわけではないが端正で力強さもあり、良い。

 

Albert Cano Smit (Spain / Netherlands AGE 20)

今回ファイナリスト。

抒情派。

音が大変美しく、歌心もある。

シューベルトのピアノ・ソナタ 第13番 イ長調、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」、シューマンの「フモレスケ」あたりが印象的。

 

Atsushi Imada (Japan AGE 26)

少し思いつめたような趣のあるシューマンの「交響的練習曲」が印象的。

 

Nathanaël Gouin (France AGE 29)

音が美しく、また適度なロマン的情感とテクニックがある。

リストの「森のささやき」「小人の踊り」、サン=サーンス/リストの「死の舞踏」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調、ショパンのピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調あたりが良かった。

 

Julia Kociuban (Poland AGE 25)

情熱的で奔放、個性的。

シューマンの「謝肉祭」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」、どちらもアラはあるが勢いがあり、情感にも欠けておらず、素晴らしい。

 

Stefano Andreatta (Italy AGE 25)

今回第3位。

技巧的に大変安定しており、力強さや繊細さもあって、バランスが良い。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第13番 変ホ長調、ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調、クレメンティのピアノ・ソナタ 嬰へ短調 op.25-5、ショパンのピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調あたりが印象深かった。

 

Yejin Noh (South Korea AGE 30)

今回ファイナリスト。

技巧もかなりあるが、その上で情感や情熱をそれとなく表現した音楽的な演奏なのが魅力。

2015年浜コンではファイナルへ進めなかったが、今回進むことができて良かった(コンチェルトはやや精彩を欠いていたが)。

ハイドンのピアノ・ソナタ 第48番 ハ長調、チン・ウンスクのピアノ・エチュード 第4番「スケール」、ラヴェルの「スカルボ」、ショパンのノクターン 第13番 ハ短調 op48-1、リストの「ノルマの回想」、バッハの平均律 第2巻 より ニ長調 BWV 874、シューマンのピアノ・ソナタ 第1番 嬰へ短調、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの3楽章」、いずれもかなりの名演(ペトルーシュカは、あと一歩力強さと完成度がほしいけれども、それでもかなりのもの)。

 

Ho Yel Lee (South Korea AGE 27)

端正で力感もあるピアニスト。

シューベルトの「さすらい人」幻想曲、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」が印象的。

 

 

以上、気に入ったピアニストは24人中14人とかなりの高確率だった(第1位、2位のピアニストがいないのは、ご愛嬌)。

ただ、ファイナルでのコンチェルトについては、全体的にパッとする演奏がなかったのは残念。

KosminovやKociubanあたりを残していれば、きっと個性溢れるコンチェルト演奏が聴けただろうに…。

 

 


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