2017年モントリオール国際音楽コンクール(ピアノ部門) 1次予選 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

モントリオール国際音楽コンクールが始まった。

今年はピアノ部門。

5月2日は、1次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

 

 

Sélim Mazari (France AGE 24)


■Domenico Scarlatti: Sonata in G minor, K. 87; Sonata in E major, K. 162
■Ludwig van Beethoven: Variations and Fugue in E-flat major, op. 35 (Eroica)
■Claude Debussy: Images, deuxième série

 

 

Helene Heejun Han (South Korea AGE 26)

 

■Robert Schumann: Fantasiestücke, op. 12
■Samuel Barber: Sonata, op. 26

 

 

Ismaël Margain (France AGE 25)

 

■Johann Sebastian Bach: Partita no. 1 in B-flat major, BWV 825
■Johann Sebastian Bach (tr. Ferruccio Busoni): Ich ruf’ zu dir, Herr Jesu Christ, BWV 639
■Ludwig van Beethoven: Sonata in A-flat major, op. 110

 

 

Eddie Myunghyun Kim (South Korea AGE 27)

 

■Ludwig van Beethoven: Sonata in F-sharp major, op. 78
■Franz Liszt: Fantasie und Fuge über das Thema B–A–C–H
■Johann Sebastian Bach (tr. Ferruccio Busoni): Toccata in C major, BWV 564

 

 

第1日前半の上記4人は、深夜のため寝てしまい、聴けなかった。

下記4人は、第1日後半。

 

 

JeungBeum Sohn (South Korea AGE 25)

 

■Joseph Haydn: Sonata in B minor, Hob. XVI:32
■Franz Liszt: Sonata in B minor, S 178

 

 

ハイドンからして、かなりうまい。

とても滑らかなタッチ。

リストも良い。

かなりのテクニックを持っているし、豪快さや情感にも欠けてはいない。

いま同時並行で開催されているルービンシュタインコンクールの、2次予選のChenの同曲演奏(記事はこちら)に比べると、迫力はやや劣るけれども、それでも十分といって良いだろう。

 

 

David Jae-Weon Huh (South Korea AGE 30)

 

■Joseph Haydn: Sonata in C major, Hob. XVI:48
■Sergei Rachmaninov: Corelli Variations, op. 42
■Tōru Takemitsu: Ame no ki sobyō II ‘In memoriam Olivier Messiaen’
■Franz Liszt: Mephisto-Walzer (Der Tanz in der Dorfschenke)

 

ハイドンはなかなか悪くない。

第2楽章も、とても速いというわけではないが丁寧な演奏が印象的。

ラフマニノフも、味わいのある演奏だった。

武満とリストは、ちょっと用事があり聴けなかった。

 

 

Giuseppe Guarrera (Italy AGE 25)

 

■Johann Sebastian Bach: Partita no. 5 in G major, BWV 829
■Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata in D major, K. 576
■Frédéric Chopin: Barcarolle in F-sharp major, op. 60
■Milij Balakirev: Islamey, Fantaisie orientale

 

こちらも用事のため聴けなかったかと思ったが、実はまだ終わっていなかったため、聴くことができた。

バッハは、丁寧な演奏だが、曲によってはやや重いか。

ジーグもやや重くがつがつと直線的であり、もっと優雅さ・軽やかさがほしい。

モーツァルトは、なぜかバッハより軽やかであり、なかなか良い。

しかし、例えば第1楽章の展開部など、もう少し陰影のような表現が聴かれればなお良かった。

第2楽章はなかなか味わい深かったが、それでもフォルテになると気合が入りすぎているような弾き方になる。

ショパンは、メロディの歌わせ方がうまく、なかなか良い。

バラキレフは、2015年浜コンのChenによる同曲演奏ほどではないにしても、キレがあって良い。

最後の畳みかけなどは、Chenに比べるとやはり物足りないけれども。

 

 

Maddalena Giacopuzzi (Italy AGE 25)

 

■Johann Sebastian Bach: Toccata in C minor, BWV 911
■Joseph Haydn: Sonata in C major, Hob. XVI:48
■Frédéric Chopin: Scherzo in B minor, op. 20
■Claude Debussy: ‘La terrasse des audiences du clair de lune’ (Préludes, book 2: No. 7)
■Claude Debussy: L’Isle joyeuse

 

こちらも実はまだ終わっておらず、聴くことができた。

バッハは良い感じ。

フーガの主題が各声部で歌われる際、歌わせ方がのっぺりせず、美しく歌わせるセンスがある。

ハイドンも良い。

第2楽章は、さきほどのHuhよりもさらに軽やかでテンポ良く、好印象。

フォルテはやや硬めだけれども。

ショパンもなかなかうまい。

表情付けが独特で、ところどころ大きくテンポを落としたり、音量に幅を付けたりするのだが、やややりすぎ感はあるものの、一本調子にならないのが良い。

ドビュッシーも丁寧で繊細なタッチで、特に弱音が良い。

ただ、やはり全体的にフォルテが硬く、少し聴き疲れする感じはどうしてもある。

 

 

結局、聴き逃したかと思いきや、けっこう聴くことができた。

それに、オン・デマンド配信はないかと思いきや、ちゃんとあるようである。

大変ありがたい。

前半の4人もまた聴いて追記したい。

さすがに疲れてきたけれども(笑)。

こんなにたくさんのピアニストの演奏が聴けるなんて、贅沢な疲れである。

 

 

 

―追記(2017/05/03)―

 

前半4人の演奏もオン・デマンド配信で聴いた(動画はこちら)。

 

Sélim Mazari (France AGE 24)

これは素晴らしい。

音色に潤いがある。

といっても陶酔的な音ではなく、フランスらしい冷静さを持った、覚醒的な音である。

エロイカ変奏曲、ドビュッシー「映像」第2集、ともに素晴らしい。

「金色の魚」、キレの良さと繊細さとを兼ね備えている。

 

Helene Heejun Han (South Korea AGE 26)

全体的に丁寧な演奏。

「夕べに」や「なぜに?」のような緩徐な曲で、ロマン的な情感がよく出ていて良い。

急速な曲では、やや微温的かもしれない。

それでも、丁寧さは魅力。

バーバーのソナタも好演。

 

Ismaël Margain (France AGE 25)

こちらも素晴らしい。

同じフランスのMazariと同様、音色に潤いがある。

美しいバッハのパルティータ。

やや直線的であり、もう少し遊びがあっても良いのかもしれないが。

ベートーヴェンのソナタ第31番は、素直な感じの美しい演奏で、大変良い。

この曲は、後期ベートーヴェンならではの清澄さをよく表現したこういう演奏がぴったり合うと思う。

技巧のキレについては、今回の選曲ではまだよく分からないけれども。

 

Eddie Myunghyun Kim (South Korea AGE 27)

「テレーゼ」、滑らかな演奏で、音色もなかなか美しい。

第2楽章も丁寧で悪くはないが、やや重いか(もう少しスケルツァンドな演奏が好み)。

バッハ/ブゾーニも、分厚いユニゾンや和音でもくっきりと歌われていて、好印象。

メロディを歌わせるセンスもある。

フーガでは、主題のスタッカートの粒がそろっていて大変に小気味よい。

「BACHの主題による幻想曲とフーガ」もかなりの迫力。

同時開催のルービンシュタインコンクールの、1次のYang(Yuanfan)による同曲演奏ほどのスマートさはないけれども。

 

そして、さきほど用事で聴けなかったHuhのメフィスト・ワルツ第1番もオン・デマンド配信で聴いたが、やや音色がガシガシしているというか、私のイメージする充実したリストの音とは少し違っていて、その割にガンガン攻めるというよりは少し重さもあるような印象で、うまいのだが少し違和感もあった。

ただ、後半の跳躍部分はかなりのテンポで弾けており、見事だった。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Sélim Mazari (France AGE 24)

Ismaël Margain (France AGE 25)

Eddie Myunghyun Kim (South Korea AGE 27)

JeungBeum Sohn (South Korea AGE 25)

 

あたりである。

 

 


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