私の小説レビューG

私の小説レビューG

私の読んだ小説の記録です

           星がひとつほしいとの祈り

 

★★★

20代から50代女性それぞれの悲哀、苦悩、そして幸せを描く7編からなる短編集で、どれも特段に派手さはないが、しみじみとした心に静かにジワっとくる作品ばかりだ。

 

中でも表題作「星がひとつほしいとの祈り」で、盲目の華族の令嬢に献身的に尽くす女中と主人公の令嬢との強い心の絆が美しく、そして悲しい別れの物語で凄く良かった。 

 

でも、「椿姫」の少年が、ほとんど見ず知らずの女性に、何であそこまで付き添うのか意味不明だし、「斉唱」の神経症の少女が、たかが佐渡に一泊してトキを見ただけで簡単に心を開いたのも意味不明というか説明不足だ。

 

「沈下橋」では、罪を犯して逃走中の有名女性歌手が、元義理の母を頼ってきて10年ぶりに再会する話で、犯罪者とそれを匿う者、どちらも決して正義ではないが、2人の間に今もある何らかの絆のようなものが仄かに描かれて良い作品だ。

 

原田マハは、どちらかと言えば女性読者に多く好まれると思うが、

普通に良い作家だなと思う。

           永遠に解けないパズル

 

★★☆☆

将来は脚本家を目指していて、学校では大人しくて目立たない存在だと自分では思っている男子中学生が、校内カーストの最上位にいる、これまでまったく接点のなかったイケてる令嬢のクラスメイトから、その女子生徒の伝記を書いてくれるよう突然に頼まれる。

 

男子生徒は女子生徒と接していく中で、彼女の煌びやかな外面とは別の心の内を知る事になり2人の距離は次第に縮まっていくが、私はこの女子生徒にあまり魅力を感じなかった。 

 

市川拓司は私の大好きな作家で、割とベタな恋愛小説が多い気がするが、ベタが決してダサいとかクサいわけではない。

でも、このヒロインの女子生徒がダサいのは、彼女の学校での地位とか、保身のために仮面を被った学校での振る舞いとか、主人公とのカラミとか、自身の保身のために引き寄せていたクラスメイトを簡単に裏切って捨てたりとか、どれも何かカッコ悪いのだ。

 

主人公の男子生徒も嫉妬からくる卑怯さなんかがあったりするが、

中学生なら嫉妬でそんな行動や言動を取ってしまうのも普通だよなと別にダサいとかは何も思わなかった。

 

それからひとつ気になったのは、ヒロインの父親が縫製工場の最高責任者で物語の中で重要なポイントなのだが、私も縫製工場に勤務しているから分かるのだけど、縫製工場が地域の水や土を汚染するような事は普通ない。 もし近隣住民に被害があるとすれば自動裁断機の騒音や熱風、埃などで、もっと作者は事前リサーチをちゃんとすべき所だ。 

 

 

       プロジェクト・ヘイル・メアリー プロジェクト・ヘイル・メアリー(下)

 

★★★★

アストロファージと呼ばれる謎の地球外微生物群に太陽エネルギーが食われ、このままでは太陽活動が低下して地球は30年内に氷河期を迎えて人類と共に動植物の多くが死滅してしまう事になる。 

 

しかし、太陽系近隣の恒星も同じ被害に見舞われる中、ひとつだけアストロファージの被害に合ってない恒星があった。 そこで主人公のジュニアハイスクールの科学教師(実は優秀な科学者)が、その11.9光年彼方の恒星系へ地球を救う方法を見つけるためにたったひとり(仲間のクルーは既に全員死亡)の片道切符で派遣される。

 

そして、その11.9光年先の恒星系に着いた時、そこに居たのは主人公と同じ目的で自身の故郷の星を救うために遥々他の恒星系から来ていたひとりの地球外知的生命体だった。 主人公と地球外知的生命体との交流と友情、2人の幾多の困難と、ラストの主人公が友情の為に自らの命を捨ててもいいという崇高な決断。 そのような主人公の数奇な運命を描いた作品。

 

映画の原作本である本作は、読み易くて非常に面白くてSF小説や科学に興味のない人でも十分に楽しめる作品だと思う。

            廃校教師

 

★★★☆☆

中学校が舞台で毎日の多様な激務に忙殺され疲弊する教師達。

そんな学内で教師が謎の急死し、続いてイジメを行っていた加害者生徒も同じく謎の急死を遂げる。 そして、それらの死亡事件が発生した時、すぐ傍にいた若い男性教師は、死亡した人物らとトラブルを抱えていた。 

 

やがて男性教師が赴任してくる前に勤務していた中学校は、何年も前に廃校になっていて存在していなかった事が分かる。

この男性教師も奇妙で怪しい人物だが、主人公の女性教師も職場の環境改善の正義感に燃える、他の職員達から見たら結構厄介で鬱陶しい人物だ。

 

本作は、角川ホラー文庫から出版されているので、真相が幽霊オチでもしょうがないのだけど、そんな超常現象ではなくて、普通の教師目線の学校小説でも良かった気がするが・・・。

               抜萃のつゞり

 

今回はいつもの小説レビューではなく新聞、雑誌、書籍などからエッセーやコラムを抜萃し小冊子にまとめたものを読んでみた。

どれもいい話やためになる話ばかりで、なんか小中学生の頃に一番好きだった道徳の教科書みたいだ。

でも、今こうして読んでみて、いい話、正しい話ってそれほど深くは心に残らなくて、やっぱり私は悲しい話や哀愁を帯びた話の方が印象深く心に刺さるかな。