私の小説レビューG

私の小説レビューG

私の読んだ小説の記録です

            キネマの神様 / 原田マハ

 

★★★★

主人公の39歳独身女性は、国内有数のデベロッパーで役職に就いていたが、会社で不当な扱いを受けて仕事を辞めた途端に賭け事と映画が大好きな父親が病気で倒れ、更に父親が各所に300万円の借金をしている事が発覚する。 そして彼女は、仕事を辞めた事を両親に言い出せないまま途方に暮れる・・・。

 

しかし、ひょんな事から映画雑誌編集社に再就職でき、そこで父親が書いた映画レビューをブログにして、更に英文にもして世界展開させ、世界中から1千万人もの読者を集め大成功を収める。

 

この物語は、映画を通しての友情の尊さや、崩壊しかけた自分自身、家族との関係、再就職できた経営難で傾いている会社が再生していく姿を描いたもの。

 

私がこれまで読んだ原田マハの作品の中で(まだ十数冊しか読んでないが)、本作は「たゆたえども沈まず」に次いで二番目に面白かったし、感動作としては今のところ本作が一番だ。

 

ただ、シラケるほどあまりにも都合の良過ぎる話をいくつも並べ立てて積み上げないと面白くて感動的な作品が書けないのなら問題だ。 この辺の大ご都合主義は、もう少しちゃんとしてほしい。 

           暗闇の囁き / 綾辻行人

 

★★★☆☆

冒頭から山中で道に迷った少年4人の内3人が何者かに斬殺される。

次に謎の少年、あっちゃん(亜希)、実矢、麻堵の意味不明な会話。

次に少年を捜しに来た若い女性が、少年に殺害されたような場面。

 

この時点では、すべてに少年が関わっているというだけで読者にはまだ点だけが提示されて、それらが線で繋がってないからまるで意味不明な状態から始まる。 これは小説にはよくある手法だが、度が過ぎると序盤からイラつく。

 

話が進んでいくと更に2人の人物が少年に殺害され、犯人は亜希ではないかと考えられるが、亜希は実矢と麻堵以外の誰の前にも姿を現さない。 

 

この物語は、亜希の存在を、いかに読者に信じ込ませるかがポイントなのだが、作者が逆にやり過ぎてて実矢と麻堵の兄である亜希は、以前は実際にいたが今はもう存在しないと途中で何となく勘づいてしまう。    

 

それなら実矢と麻堵の前に姿を現し3人で会話する亜希は何者なのかという点なのだが、それは実矢と麻堵の妄想による演技の会話とかいう真相ってなんだかなぁ。 そもそも少年が殺人を犯さなければならないほどの動機も妄想からってちょっと弱い気がする。 

 

そして、大好きだった兄2人を亡くし最後に残された麻堵は、どれほど心に大きな損失を負って生きていくのだろうか。 そして、こんな夢と現実の間で生きているような少年が、このまま普通の大人になれるのだろうか。 本作はホラー寄りの悲しい物語で、それなりに面白い作品ではあるが、妄想ってのがなぁ・・・。

           幸せな家族  そして その頃はやった唄

 

★★★

新しい家に引っ越してきた両親と長女、長男、次男の5人家族。

そんな幸せな家族を、保険会社のCMとして一定期間に渡りドキュメンタリーCMを撮る事になるが、そこから唄の歌詞通りに家族が次々と殺害されていく。 そして物語は最後にただ一人生き残った次男の独白から幕を開け、撮影スタッフが初めて家に来た日から始まる。

 

一見幸せそうな家族だが、早い段階から独善的な父親、気の弱い母親、内に秘めた芯の強そうな長女、出しゃばりな嫌われ者の長男、サイコパス気質が垣間見える次男とかなり歪な家族だ。

 

冒頭から次男が犯人だと仄めかされていたから、ミスリードの罠かと警戒しつつも、次男が犯人だと思って読んでいたが、最初に死んだ父親と次に死んだ兄は、次男はすぐ近くにはいたが実際には何もしていない事故死で、特に唄の歌詞になぞらえてるつもりもなかったというのには逆に驚いた。

 

しかし、家族や撮影スタッフそれぞれのアリバイや行動を考えれば、最初から次男が事件に何か関係していると考えるのが当然なはずなのに、警察は次男を任意同行して事情聴取する事もなく丸1年も事件を解決できないのはあまりに無能過ぎると思った。

           母の待つ里 / 浅田次郎

 

★★☆☆☆

大手カード会社が始めた疑似母ふれあい里帰り体験サービス事業。

その1泊2日で50万円のサービスを利用する人生に疲れ悲哀を感じている初老の3人の男女。 それぞれ3人は別々に疑似母とのふれあう時間の中で変わっていく。

 

里帰りする方も迎え入れる疑似母の方も、そして里の村人までもがエキストラとして全員が演技をし、サービスを利用した客を徹底して里帰りした子供として扱うが、ん~これはどうなんだろうか。

 

もう最初から読んでいても違和感ありまくりで、どうしたって疑似母は偽者でしかないんだし、たった1泊でそこまで気持ちが入り込む事など普通考えにくい。 そもそも読んでいる読者も、これに感動感涙する事など難しい話でまるで説得力がないが、村人らの純朴さと疑似母役の里の老婆の優しくて誠実で温かい人柄が伝わってきたのは

唯一良かった所か。

 

最後に里の疑似母が亡くなってしまった時、たった2.3度、その都度大金を叩いて疑似里帰りした男女らが、居ても立ってもいられず弔問に訪れたその心が、この物語の尊い所かもしれないが、その昔は、感動感涙小説の名手だった浅田次郎だが、もしも彼が、これを感動作のつもりで書いたのなら、作家としての感性も錆び付いてズレてしまっていると言わざるを得ないかも。

           

 

★★★☆☆

オムニバスTVドラマ「世にも奇妙な物語」の原作本のような、いろいろな恐怖を描いた5編からなるサスペンスホラー短編集。

 

表題作の「激突!」は、スピルバーグが初監督した名作映画として名高く私も4回観たが、原作を読んでみてビックリ。 映画ではスピルバーグならではの捻りや物語の膨らましなんてまるでなくて、各シーンのカメラ割までが原作まったくそのまんまで、これじゃスピルバーグの初監督作品が素晴らしいんじゃなくて極限の理不尽な恐怖を描いた原作が素晴らしいんであって、スピルバーグは何にもしていないに等しい。

 

「狂った部屋」は、まったく才能がない作家志望の男が、作品が一文字も書けない激しい苛立ちを、妻や家の物にぶつけ続けた果ての狂気の結末は、部屋が狂い出したんじゃなくて本人が狂っているだけだと思うが。

 

「スローター・ハウス」は、幽霊屋敷を購入して移り住んでしまった

兄弟の悲惨な結末を描いたものだが、幽霊ネタに見せかけた別のオチだったら味があるのに普通過ぎて恐怖を感じず残念な作品。

 

「蒸発」は、世の中をもっと単純にしてほしいと願った男が、ある日を境に友人知人らが、自分以外の人達から記憶も存在も跡形もなく消え去り、やがて銀行預金も妻も自分の家も消え去ってしまう。

でも、ここまでで話を終われば、その後の孤独に取り残された主人公の恐怖を想像して面白いのに、最後は主人公自身も跡形もなく消え去ってしまう。 これじゃ主人公の恐怖も消え去ってしまってつまらない。 せっかくの秀作だったのに最後が大失敗。 

 

「不吉な結婚式」は、結婚式を直前に控えた男が、悪魔を恐れるあまりに結婚の儀式に関する独自の迷信に異常なまでに拘り身を亡ぼす話。 妻になる女性からしたら、こんな異常者と生活する事がなくなってめでたしなんだが。