銀座みやこクリニック院長の濱元誠栄です。
胃がんシリーズ最終回は
スキルス胃がんについて
スキルス胃がんは
進行が早い
粘膜下なので見つけにくい
といった特徴から
発見時に手術不能な大きさや
腹膜播種があったりして
手術による根治が難しいがんです
また、現在使用されている
抗がん剤
抗HER2薬
サイラムザ
免疫チェックポイント阻害薬
すべての薬剤が効きにくく
かつ、腹膜播種がある場合には
播種まで抗がん剤が届きにくいため
延命もなかなか難しいです
難治性のスキルス胃がんに対して
様々な試みが行われています
昨年の消化器外科学会でも
スキルス胃がんの特集がありました
その中からいくつか紹介します
①パクリタキセル腹腔内投与
腹膜播種がある場合に限りますが
この前まで先進医療で行われていた
胃がん腹膜播種に対する
S-1内服+パクリタキセル腹腔内投与
腹水の量が少ない場合に限り
従来の治療法よりも有効だった
という結果でした
保険適応に向けての第3相試験が
2020年から始まっています
ただ、先の結果を受けてか
自費診療で行う病院が増え始めたので
近くに行っている病院でないか
調べてみてください
腹膜播種がある場合には
腹腔内化学療法と併用して
播種の全摘手術を行っている病院が
全国に数か所ほどあるので
検討してみても良いと思います
ただ、胃がんや卵巣がんの腹膜播種は
大腸がんなど他のがんの播種と比べて
手術の成績が思わしくなさそうなので
個人的にはあまりオススメはしません
②腫瘍溶解ウイルス療法
昨年脳腫瘍で承認となった
日本発のデリタクト(G47Δ)
全文は読めませんが
マウスで効果が見られたようです
日本のしょうもない障壁の影響で
承認・発売がかなり遅れました
おそらく胃がんでの臨床研究は
日本国内で行うのではなく
外国が中心となると思います
もう一つ
スキルス胃がんで高率に見られる
p53遺伝子変異をターゲットにした
p53搭載の腫瘍溶解ウイルスも
期待が持たれています
岡山大学のベンチャーが開発した
こちらも日本発の製品です
日本で開発された製品ですが
日本のしょうもない問題で
臨床試験は海外が中心となります
おそらく、その後に日本に逆輸入かな…
③CAR-T療法
難治性の血液がんで劇的な効果を示して
一時期話題になったCAR-T療法
以前ブログで取り上げています
Claudin(クローディン)18.2という
胃腺がんの8割で発現しているたんぱくを
標的にCAR-T療法を行ったところ
第1相試験では良い成績だったようです
現在第3相試験が始まっており
実用化も近いかもしません
ただ、以前のブログにも書きましたが
保険適応されるとしてもおそらく
1回5000万円以上になるでしょう…
その他様々な試みがなされていますが
良い結果が出るものはありません
②③の実用化は5年以上先なので
今すぐできることと言えば
(腹膜播種がある場合に限りますが)
自費で①を行うことでしょうか
自費と言えば…
自由診療で行われる遺伝子治療や
免疫療法も選択肢に入るかもしれません
次回は
自由診療で行われている治療について
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