呉明植(伊藤塾) | 司法試験情報局(LAW-WAVE)

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伊藤塾 のエースです。

塾生の支持が非常に高く、人気のある先生です。

 

 

【インプット】


インプット講義(入門講座)の分野では、受験界でNo.1の講師だと思います。

全体的な講義の質は塾長 よりも高いです。

 

特に、伊藤塾の目玉講座である基礎マスター講義 (他校でいう入門講座)や商訴集中講義 は、全ての入門者に自信をもっておすすめできます。


テキストを読み進めながら、細かくマーク箇所を指定していく講義スタイルが特徴です。

この講義におけるマーク指定は、その場の適当な思い付きでなされているものではなく、かなり入念な事前準備の中で考えに考えられた末に決められたものだと思います。

 

このようにマーク箇所や書き込みの指示が極めて的確なので、一通り最後まで講義を受講し終えた暁には受講生の手元に試験対策の観点から完全武装されたテキストが残ることになります。

 

この点が呉先生のインプット講義の最大の特徴であり、他の講師と比して最も優れた点です。

 

他の講師のインプット講義では、テキストのどこにマーカーを引くべきなのか、どこにどんな内容を書き込むべきなのかは、受講生がすべて自分で判断しなければなりません。

 

こういった通常の講義では、テキスト加工という講義の成果を上手に残せる受講生とヘタな受講生がどうしても分かれてしまいます

 

この点、呉先生の基礎マスでは、マーク箇所の選択やどのような内容をどのように書き込むかは、講師の入念な事前準備に裏打ちされた決まりごととして、全ての受講生に一律かつ半強制的に課されることになります。

 

したがって、呉クラスでは、講義の成果を上手に残すことは、講義開始の時点で全ての受講生に平等に保証されることになるのです(もちろん講義を最初から最後まできちんと受講すればの話です)。

 

この点が、呉先生のインプット講義の最大の売りであり、他校の講師の入門講座では絶対に享受できない恩恵だと私は思っています。

 

基礎マスでも入門でも、聴いたことがある人なら分かると思いますが、毎回きちんと復習をしていても、授業で聴いた内容など悲しいほど簡単に頭の中から消えてなくなってしまいます。

どんなに綿密に復習をしたつもりでも、講義で聴いた内容を十全に思い出すことは想像以上に至難の業です。

 

結局、どれだけ優秀な人でも、テキストを片手にもう一度自分で学び直さざるを得ないのが現実です。

その点は、どんなに分かりやすい入門講座を受けたとしても基本的には変わりません。

 

つまり、入門講座を1回受ければそれでインプットが終わるわけではないのです。

 

講義とは、あくまでも2回目、3回目…の学習(復習)を行うための最初のきっかけ(1回目)に過ぎません。むしろ、その後の自力での講義内容の上書きの繰り返しこそが、インプット学習の本番です。

 

司法試験においては、入門の受講後こそが学習の本番なのです。

そんな中で、完全武装されたテキストが入門修了時に手に入ることが、どれだけ有難いことか。

入門を終えた段階になってはじめて、その本当の価値が理解できるだろうと思います。

 

翻って、一見その場では分かった感じになるかもしれないトーク主体のスカスカなおしゃべり講義がどれだけ後の役に立たないのかも、入門を終えた段階になれば理解できると思います。

 

このように、呉先生のインプット講義の真価は、講義進行中の説明の分かりやすさにあるのではなく、講義終了後にもその効果が持続する点にこそあるのです(もっとも、呉先生の説明は分かりやすいと評判の伊藤塾の中でも分かりやすいほうなのですが)。

 

インプット分野では、受験界最高の講師です。

この点だけは全ての受験生に保証できます。

 

【アウトプット】

一方で、アウトプット系の講義(論文指導)については、既にコメント欄などで何度か触れましたが、私自身は普通に良くないと感じてます。

 

どちらかというと「普通」というほうに力点を置いているのでご了承を。

なぜなら(あくまで呉先生以外の90%以上の講師も同じであるという前提で申し上げますが)論文講義でも、「問題を読んで→マークをさせ」「解答を読んで→マークをさせ」という風に、結局は問題と解答の解説をしているだけだからです。

 

論文系の講座で真に講義されなければならない内容があるとすれば、それは答案が創り上げられていく処理過程(プロセス)そのものを見せることです。

 

「プロセス」思考過程といってもいいですし、問題と解答の行間といってもいいです。

いずれにしても問題や解答のように見えるものではなく、目に見えないのが「プロセス」です。

この見えないプロセスを解説せずに、見えている文字(プロセスの結果)だけをなぞられても、それはインプットに屋上屋を架すだけの行為であり、要は基礎マスのリプレイに過ぎません。

 

たとえば呉先生は、基礎マスで学んだ知識を比較させるような概念的な問題がお好きです。

それは結局のところ、お得意のインプット的内容を、論文講義で更に積み増しているだけです。

そんな内容は基礎マスターで話せばいいことです。

こういった点だけをみても、残念ながら呉先生もまた、他の講師と同様アウトプットで話すべき内容(=論文指導力)をほとんど持っていないのだろうと推察されます

 

繰り返しますが、アウトプット講義については呉先生だけの話をしているのではありません。

このエントリーを書いたついでに、業界の論文指導の実態を書いておこうと思っただけです。

 

呉先生の論文系講義は、その他9割以上の予備校講師の中ではかなりマシな部類に入ります。

この点は公平を期すためにもきちんと確認しておきます。

 

いずれにしても、論文指導で本当に必要なものは、

 

① 答案の処理手順(方法論)を明確かつ実践的な形で示すこと

② ①の辿り方を講義で実演すること


この2点だけです。

 

しかしながら、この①②をやってくれる講師が受験界にほとんどいません。

「○○という概念と××という概念を比較してみたら、こんな新たなトリビアが生まれました」みたいな、インプットの上塗りでお茶を濁すのはいい加減にやめて欲しいです。

こういうのはいかなる意味でも「論文指導」とは呼べません。


①②のうち片方でもできる講師がいれば、論文指導力は「一流」と評価してよいと思います。

実際には一流と呼べる人はほとんど存在しないため、あとは全員二流と評価せざるを得ません。

論文指導においては、ほとんどの講師が二流の仕事しかしていません。

 

呉先生もまた、論文指導においては、残念ながら到底一流とは呼べません。

 

 

【自分はできる but 人には説明できない講師たち】

 

もちろん、呉先生をはじめとする講師たちの多くも、合格答案を書くことはできます(orかつてはできました)。

ただ、彼らは(自分では合格答案が書けるにもかかわらず)その方法を人には説明できないだけなのです。

 

司法試験の世界では、昔から答案の書き方は、まるで伝統芸能の継承のように、見よう見まねの繰り返しによって、各自がなんとなくその方法を体得していくやり方がとられてきました。

 

とにかく大量の答案を読み→大量の答案を書き→最初に問題提起なるものをすることをなんとなく学び→論点処理の過程で再度問題提起をすることをまたなんとなく学び→そうやっていつの間にか「事案の問題提起」とか「論点の問題提起」とかの本当はパターンにもなっていないパターンをパターンとして刷り込まれ→それらを繰り返し繰り返しカラダに沁み込ませていくうちに、なんだか分からないけど合格答案が書ける受験生が(場合によっては)出来上がる…という具合です。

 

もちろん「見よう見まね」で「なんとなく」やっている以上、できるようにならない受験生のほうが圧倒的に多いのは言うまでもありません。「見よう見まね」でできるようになる人は、非常に勘の良い受験生なのでしょう。

 

①自分ができることと、②それを人に説明できることは、根本的に別の能力です。

 

受験界のほとんどの講師は、こと論文の指導においては、②の能力(=人に説明できる能力)を磨いてこなかった人たちばかりです。残念ながらこれが司法試験業界の実態です。

 

しかし、その状況にもいずれ終わりがくるはずです。

 

①②の処理手順をきちんと教える講師 が受験生から一定の支持を得るようになれば、ここで私が申し上げていることは多くの方に理解していただけるようになるだろうと思います。

 

今回は(特に後半部分は)呉先生のファンの方にとって煩わしい話をたくさん書いてしまいましたが、そういうことでどうかご容赦ください。

 


 

 

【最終補足】

司法試験情報局は、当時の受験界の一般通念と大きく乖離しないよう、ある程度妥協しながら書き進められました。そのため、いくつかのエントリーで、私の本音(100%の真意)が示されていない部分があります。本エントリーには特にその自己欺瞞が強く表れてしまっています(申し訳ありません)。

私の理想の講師観・講座観・教材観は、初めから一貫して変わっていません。

私の最終的な本音(100%の真意)は下記をご覧ください。

司法試験情報局の見解の変化についての釈明<その1>

司法試験情報局の見解の変化についての釈明<その2>