続いて、事例3の再現答案です。こちらは大失敗したと確信し、事例文そのものを開く気力もなくなり、合格発表後まで封印していました。このため、再現率はやや低いと思います。(模範解答を読む前に再現していますが、ややメイキャップされてる恐れあり)


当日は事例1、事例2が比較的取り組みやすかったため、昼休み中は事例3がかなり難化するのを覚悟。午後開始当初は落ち着いて対応していました。設問分析の時点では生産管理の細かい内容を聞かれているように感じましたが、与件文の大枠把握段階で、設問要求に対する根拠がかなり薄いことに気づきました。特に、第2問、第3問で振り分けるべき根拠がほとんどはっきりせず、難問と感じました。


第1問、第4問を先に片付けた上で、気持ちを落ち着けながら第2問に取り組み始めましたが、第3問も配点20点で全く捨てる訳にもいかず、時間的に非常に苦しくなりました。難問が出た場合の鉄則として、とにかく与件文に即して、他の受験生が抜いてくるような根拠は盛り込むよう努めました。冷静に対処したつもりでしたが、第2問でなかなか方向性を打ち出せず、最終的に終盤はかなり焦っていたように思います。


第1問
強みはX社から評価と明記されているので、素直に抽出。弱みは製品開発、営業部門がない点は分かったが、もう一つが悩みました。(自動車業界への依存度の高さを答えましたが、設問要求が「自動車業界における弱み」であり、2次部品メーカーとしての弱点を挙げるか、特定企業への依存、特定系列への依存と書くべきでした)
→試験終了後、ここが大きな反省点として印象的だっため、事例Ⅲは大事故を起こしたと認識しました。


第2問
(設問1)
根拠の振り分け、抜き出しがほとんどできないほどの難問と感じた一方で、1カ所だけ「製品設計変更なども含むVE提案」とあまりにも直接的に答えが明記されている点に戸惑いました。ただ、組み立て工程におけるコストダウンということで、直感的に「組立容易性」の言葉が思い付いたので、部品共通化と合わせてVE提案に絡めました。
一方で、コストダウン、短納期化のいずれにおいても現状が部分最適になっている点は指摘可能と思ったので、設問1、2の両方で生産管理の一元化、全体最適を挙げました。(設問1、2で7~8点ずつでも取れれば御の字と考えました)


(設問2)
混乱の内容がイメージできませんでしたが、該当個所を3度目ぐらいに読んだ時、「別々に納品」という点に着目。一方で、スーパー難問が出題された際は、必ず図にして整理するよう先生より教えを受けていたので、X社部品/Y社部品、駆動制御系部品/電子制御系部品、金属プレス加工部品/樹脂成形加工部品の組み合わせを整理し、そもそもX社、Y社向け製品を同じタイミングで生産しなければならない点が混乱要素と考えました。
設問1では生産設計中心に解答し、設問2では生産管理中心とも考えましたが、念のため生産管理面は設問1、2双方で触れました。特に混乱が生じる場合、原因は計画、統制面が確立されていない点を指摘するケースが多いと考え、設問2では生産計画、統制面で書き込みました。(今回、生産管理面の細かい設問要求が複数あったので、どこかで生産計画、統制上の問題点を答える必要があると考えていました)


第3問
設問要求は明確であり、根拠が拾えれば容易な問題と思われましたが、実際には事例文にほとんど根拠がなく、相当な難問に思われました。①は余力管理、進捗管理、②は現品管理、余力管理が問われていると考え、①は進捗関連の情報、進捗に影響する情報、②は原価および生産の猶予に関する情報と考えてみました。
最初は双方ともC社の情報をY社に提供すると考えましたが、②はC社側で努力が必要なため、Y社の情報をC社に提供すると考え直しました。①については、C社側の生産進捗に混乱を与えないような発注計画をY社側で立てるという視点(発注管理的発想)で、C社状況をY社に知らせると考えました。


第4問
第2、3問が歯が立たなかったため、先に第4問を処理しました。駆動制御系/電子制御系、金属プレス/樹脂成形と整理していくうち、駆動制御系は国内需要が減退しており、その分を中国に転換するのではないかと考えました。強みは設備改良、改善技術と金型内製ですが、どう生かすか悩み、そのまま列挙しました。(設問要求は中国工場進出に関してであり、国内面の視点から先に答えたのは失敗でした。また2次部品メーカーから脱却するストーリーで答えられませんでした)
→試験終了後、第1問と合わせて、この点が大きな後悔として意識されたため、事例3は大事故を起こしたと覚悟しました。


試験終了後の当日夜、プールで泳ぎながら改めて振り返っているうちに、見落としていた事例テーマーやストーリー、設問全体構成の流れに気づき、大事故を起こしたと実感。事例1、2は平均前後、事例3はかなり低い点で、事例4でも取り返しきれなかったため、不合格を覚悟しました。


では、以下がその解答内容です。




第1問(配点20点)
(a)
金属プレス、樹脂成形両部門有し金型内製化。

生産設備の改良・改善技術有しコスト減可能。

(b)
製品開発・営業専任部門なく社長に営業依存。

自動車業界向け部品製造への依存度の高さ。


第2問(配点40点)
(設問1)
開発・設計や日常受注業務を金属プレス、樹
脂成形両部で別々に行っているが、生産管理、
設計開発を全社的に一元化。完成車メーカー
に対し、部品共通化、組立容易性を考慮した
製品設計に変更するようVE提案を実施し、
全体最適でコストダウンを実現する。

(設問2)
(a)
現状別々納品のY社向け樹脂成形、金属プレ
ス両加工品を同時生産する必要があり、X社
向け部品生産と合わせ生産手順、工程が混乱。

(b)
金属プレス、樹脂成形両部の生産計画策定を
一元化。X社向け、Y社向け部品の①生産手
順のマニュアル化②生産工程の整理③生産進
捗状況を両部門間で共有―等で、全体最適に
より混乱解消し、短納期化、コスト減実現。


第3問(配点20点)
①
C社の受注状況、生産余力、生産進捗状況等。
②
Y社の受注状況、製造原価、納品予定等。


第4問(配点20点)
国内完成車メーカーの動向を受けた受注量減
少傾向やハイブリッド車等普及による駆動制
御系部品の需要減少の恐れあり、国内工場は
電子制御系向け部品に集約。海外工場は生産
設備の改良・改善技術、金型加工技術を生か
し、駆動制御系部品、金型をX社や完成車メ
ーカーに供給し、受注量を維持、拡大する。

続いて、同じく2次試験翌日に作成した再現答案の事例2です。こちらも再現率はかなり高いと思います。


最初、過去・現状分析系の設問が多く、課題、改善アドバイスがない点に意外感を持ちました。与件文を読んで、特に生ゴミ処理リサイクルでの好循環に舌を巻きました。抜き出し系の問題中心なので、平均点は高くなりそうですが、与件文に沿って答えれば平均は確保できると感じました。


与件文は長かったですが、切り分けは順調に対応でき、第1問から順に解答しました。途中、「便益」の言葉に戸惑いましたが、素直に「顧客にとってのメリット」と考え、関係性強化の視点で解答。また、環境関連に関しては「エコ活動参加機会」との切り口で、顧客参加機会として答えました。


アドバイスを必要としない新しいタイプの事例で逆に面白く感じました。課題見極め能力、助言能力だけでなく、順調な会社の強み、やってきたことを分析し、学び取る力も求められているんだと感じました。一方で、実態企業の経営環境があまりにも悪くなってきているため事例問題化しづらくなり、こうした生存力ある企業を出題せざるを得なくなったのかとも考えました。(よって解答の方向性を考える際、問題提起や課題指摘等の要素は入れようがないと認識)


第2問は、地元中高年女性の便益でやや悩みました。根拠周辺に「地元」との記載が多くあることや、競合がI県全体もしくは全国規模であるため、逆に地元に根付いた点をアピールして顧客に便益を提供したと考えました。(振り返ってみると、期待効果の入れ方が失敗している)


第3問は、まとめのキーワードに悩みましたが、配点10点で大差ないと考え、特に切り口等意識せず「人事政策」「活性化」で答えました。過去問や演習ではこうした短い字数の解答に時間を取られ、大崩れの原因になることがあったため、特に意識的に見切りをつけた。


第4問は、顧客視点で考えた場合、生ゴミを引き取ってもらえるのはメリットと感じましたが、もう一つを悩みました。レジ袋は顧客にとってのメリットが弱いと感じたのと、自治体への寄付活動等も顧客にとっては間接的、やや遠回りのメリットしかないと思われたため。そこで、エコ活動に参加する機会を顧客に提供するととらえれば、自治体への寄付や環境活動も顧客への直接的メリットとして指摘できると考えました。


第5問は、前問が顧客視点だったので、逆にこちらの問題はB社視点での期待効果と認識。利用根拠が多少かぶっても構わないので、地元に根差している点、大手競合との差別化の視点で、B社視点での期待効果をまとめました。生ゴミ処理の好循環については、最初の大枠把握時から感動したので、「価値連鎖」という言い方で指摘しました。(振り返ってみると、「差別化と関係性強化で売上拡大」と同じ文言でまとめてしまっており、結果的に2つの視点から答えた形を取っていなかったのは失敗)


事例2も大外しはなく、平均点は確保できているかという感触でした。


では、以下がその解答内容です。




第1問(配点10点)
肥大化した取締役陣の人間関係で築かれた仕
入先を一旦見直し、顧客視点で顧客の嗜好特
性、店舗特性等を分析して品揃えを整理し、
品質・価格に見合う仕入先を選定し直した。


第2問(配点30点)
地元の中高年女性に対し、売り場づくり、品
揃えを工夫して、パート含む従業員も地元の
中高年女性を積極的に採用し、I県全体や全
国展開する大手スーパーに対抗して地元重視
姿勢を強調し、地元に根付いたサービス提供。

不安、不便さ抱える高齢者の単身世帯に対し、
①注文の品届ける宅配サービス②何でも引き
受ける御用聞きサービス③高齢者単身世帯訪
問による安否確認機能等を提供し、地元に深
く根付いた姿勢をアピールして、関係性強化。


第3問(配点10点)
パート含めた従業員に対し、①能力尊重した
昇給制度②給与体系見直し③パート正社員登
用制度等の人事政策。

①売り場責任者に対し顧客対応の意思決定権
限委譲②売り場への予算付与③イベント企画
等権限委譲での活性化。


第4問(配点20点)
高齢化での農業世帯減少と都市化進展で、家
庭処理できなくなり、自治体が回収有料化し
た生ゴミの引取・処分。

地元自治体への寄付を通じた緑化事業、公園
整備や契約農家への堆肥無償提供等によるエ
コ活動参加機会の提供。


第5問(配点30点)
使用済みペットボトル等や生ゴミ処理等通じ
た自治体への寄付をHP上で公表し、地元環境
活動貢献をアピール。地元顧客に対し、エコ
活動参加機会の提供で大手スーパーと差別化
し、顧客との関係性強化し、売上拡大図る。

地元顧客の生ゴミ引取、地元自治体へ寄付、
契約農家へ堆肥無償提供、生産した有機野菜
の店頭販売、顧客来店増という価値連鎖の仕
組みを地域内に構築し、大手スーパーと差別
化して顧客囲い込み図り、売上拡大実現する。

それでは2次試験翌日に作成した再現答案です。まずは事例1から。再現率はかなり高いと思います。


事例1では、かなりの難問を想定していましたが、思いのほか強みや課題が分かりやすく、組織論の問題も過去出題事例の延長で考えれば、ポイントをつかみやすいように思われました。


設問分析や与件文の大枠把握で特に詰まりそうな点はなかったため、第1問から順に対処。詳細分析で根拠や課題の振り分けも比較的順調に進められたため、与件文から素直に根拠を抜き出す形で解答しました。


振り返ってみると第1問設問2の「商品特性」で付加価値が付けにくい点や価格変動性等を答え、それを受けて第4問に結び付けるべきだったのかもしれないです。当日は、経営環境変化の原因、背景になるものとして「値下げ要求」を指摘しましたが、的がずれてる気もしたものの、大外しにはならないと考えました。


第4問は「食品原材料以外」の判断に迷いましたが、食品から離れた商材を検討するのは突拍子もないように感じられたため、食品の原材料だけでなく「加工品」「完成品」を検討していると解釈。ニッチ市場を目指した関連多角化のニュアンスでゴーサインの方向で答えました。結果的に外してしまったようにも思われましたが、与件文から判断しにくい部分であり、他の受験生と差はつかないだろうと考えました。


事例1全体では平均点は確保できたと認識。組織論関連では違和感なくまとめられたと思うので多少加点してもらえればと感じました。


では、以下がその解答内容です。


第1問(配点30点)
(設問1)
業界の企業規模は相対的に小さく、生産者と
売り手の取引を円滑に進め、タイミングを計
ることで手数料を得られるため、二次・三次
問屋オーナー同士のネットワークを築けば、
業界で優位性を確保でき、売上得られるため。

(設問2)
食品原材料は買い手、最終顧客からの値下げ
要求が強くなる商品特性があり、①価格志向
強いドライ感覚な顧客増加②先方要求強まる
③中堅食品メーカー市場への大手商社参入に
よる企業間競争激化④末端顧客直接攻勢等。


第2問(配点30点)
(設問1)
二次・三次ネットワークを強化する大手商社
に対抗し、経営が厳しさを増す地方有力店と
の連携を維持・強化するのが目的である。物
流拠点革新し効率性高め、取引先だけでなく
地元末端顧客にも利益をもたらす効果がある。

(設問2)
メリットは、二次問屋の事業ノウハウや取引
先ネットワークを活用でき、安定的に経営継
続できる点。デメリットは、①A社組織文化
が浸透しにくい②従来と同条件の雇用でA社
内で不満出る恐れ③意識改革図りにくい点。


第3問(配点20点)
メリットは、①30歳代中心に意欲向上期待で
き次世代管理職層の早期育成可能②経営方針
変更に伴う意識改革等で、新陳代謝進む点。
デメリットは、①公正評価基準ないと不満が
出る恐れ②家族主義的一体感の喪失等である。


第4問(配点20点)
従来の仕入れルートの強みとネットワークを
活かし、大手メーカー参入しにくいニッチな
市場を狙えるため、自社加工製品、完成品の
取り扱いに進出し得る。大手商社に対抗し、
末端顧客への販売強め、売上拡大を実現する。

2次試験終了後、思うところを書き留めていたので、少しずつ紹介しようかと思います。まず以下は、10月24日の2次筆記試験終了後に思ったこと…。


(事例3で大きく失敗したため、試験終了後は既に不合格を確信していました)


「絶対合格しよう」という気持ちだけは最後まで持ち続けていました。事例1、事例2では比較的落ち着いて対応できていたはず。一方で、事例3の終盤、気持ちが動揺し、冷静に根拠を見に行くことができなくなってたのも事実。時間がどんどん押し迫り、怖くなって与件文を読み返せない…。初めての経験でした。


途中からどんどん視野が狭くなり、他の設問や根拠を探し回ることに恐怖感を持つようになってしまいました。度胸が足りなかった。一方で、試験中は「スーパー難題が出た時は、(事例企業の)現状に即して…」という先生の教えも蘇りました。与件根拠から外れることがないように努めていたのも、また事実でした。


事例3終了後は、あの熾烈な1次試験を思い出し、「まだ決着していない」「事例4次第なんだ」と心に言い聞かせ、事例4は必死に冷静に、最後の最後まで力を尽くせたと思います。



思えば、2次試験前には平成20年度の事例を一通り解き直しましたが、8月半ばの1次試験直後に解いた時の方が良い文章に思え、愕然としました。期待効果や因果関係は確かに盛り込まれるようになってたものの、そもそも日本語がおかしくなっている。人に読んでもらえる文章になっていないような…。


試験直前は事例テーマばかりを強く意識するようになってしまい、設問1つ1つを読むことが困難になってしまっていました。5問全部をまとめて見る(森しか見ないようなイメージ)。もし全体を見渡せない場合は大崩れする。オプションゼミ辺りから、そんなプレッシャーに追いまくられるようになってました。


そして、そのまま完成度を上げられないまま臨んだ2次試験でした。


この試験、どんな時でも冷静に対処する力を問われているのかもしれません。終わってみれば、もう少し対処しようがあったのかも…。


戦略的方向性、全体戦略をつかむのが苦手で、どうしても細かい要素に視点が走りがち。今回の事例3では、オペレーション面での方向性が見えず、そちらに気をとられて全体戦略も見失ってしまうという悪い癖が出たのかもしれないです。


解答の方向性が見えなくなった時にこそ、知識ストック、白書知識もフル活用して全体の方向性を生み出す力が必要。全体把握、助言能力が不足していました。


もし、このまま合格できれば、きっと「なんてやさしい試験なんだろう」と思うに違いない。ただ、不合格だったら「なんて難しい試験なんだ」と思うだろう…。もし不合格だったとして、次の1年、何を勉強すればよいのか正直分からない。何が失敗だったんだろう…。


このあと合格発表当日まで、その自問自答を繰り返す日々が続きました。


 今日はTAC渋谷校で開かれた実務補習に関するセミナー「診断実習の世界」に出席してきました。2次試験口述試験受験者を対象にしたセミナーで出席者は百数十名。実務補習の内容や事前準備等の詳細に関する解説と実際の体験談が中心です。


 初めての診断実務経験となる訳で、プロの診断士としての対応が求められる。診断先から話を聞けるのは、初日もしくは2日目に設定されるヒアリングの2時間程度だけで、次にお会いする際には報告書を提示することになる。

 その1回の話から、先方の課題や改善方向性を見極めて1週間程度で報告書をまとめあげることになる。短期間で診断先企業の業種概要を調べたり、改善策を導き出して1冊の報告書にまとめあげなければならない…とのこと。


 今まで1次2次試験勉強で経験してきたことは、実はこうした分からないことに直面した時に、いかに手際よく調べ上げ、診断先に分かりやすく報告、提案できるか。そういう対応能力だったのかもしれないなと感じました。(勉強してきたことそのものが役に立つ感じでもなさそうですので…)

 自分はコンサルティング実務経験があったり、プレゼンが得意だったりという訳でもないので、実務補習に向けて大いに不安が積み重なる日々です。ただ最低限、相手の困っていることをきちんと聞き出すことだけでも頑張ってみようかなと思った次第でありました。

 現在の中小企業は非常に疲弊しており、忙しい中、時間を割いて素人同然の診断士試験合格者の相手をしてくださるのだから、相手の痛みを理解する姿勢を持ちなさい…との先生の言葉が印象に残りました。(それができないなら1次試験勉強からゼロからやり直しなさいとも)