理系教育を重視するのは大切なことかもしれませんが、 合わない学校に行くと大変なことになります。今時ここまで極端な学校はさすがにないでしょうけど、以下は私の出身校の話です。
【追試について】
数学でこまめにテストを実施する学校があります。それ自体は悪いことではないのかもしれません。私の母校でも、大体2週間に1回くらいの頻度で数学のテストが行われていました。
が、問題なのは「追試」 です。
このテストが70点未満だった場合は、朝7時半に登校して追試を受けなければなりません。
この追試は、学年末に赤点対象者のみに実施されるものではなく、ぼほ日常的に実施されるものです。
追試は20点満点で、14点以上が合格。
14点未満の場合は、それに満たないだけ素点から減点されてしまいます。
14点に達するまで、追試は何回でも実施されます。
例えば本試験の素点が68点で追試験が13点だった場合、素点は67点に減点されてしまうのです。追試をサボった場合は、素点から20点減点 されます。
追試の不合格者の名前は、都度廊下に貼り出されます。
成績の悪い生徒は毎日のように7時半に登校し、追試を受け続けなければなりません。
かつて私は、このルールの適用により、いつまで経っても追試に合格できなかったため、素点が0点より悪い点数(マイナス点)になってしまったことがあります。
数学の成績の悪い生徒は高利貸から金を借りたような状態になり、追試の多重債務が重なり、身動きが取れなくなります。
いつまで経っても追試に合格できない生徒の名前は四六時中廊下に張り出されることになるため、学校に行くのすら辛くなってしまいます。
しかも当時は体罰も当たり前のように行われていました。試験最中に問題がほとんど解けていないと、見回りに来た先生に怒鳴り散らされ、試験の最中に教室から追い出される、なんてこともあったため、数学が苦手な生徒には毎日が地獄のような環境でした。
【成績のつけ方】
数学に関しては四六時中テストが行われていたため、定期試験なんて形式的なものでした。期間中に実施されたテスト全てが成績の算定対象になりました。
つまり、定期考査が100点満点だったとしても、それ以外に9回テストが実施されていれば、成績はテスト10回分の計1000点満点が算定対象となります。
しかも、成績は、1000点満点を10で割って100点満点とするわけではなく、成績が学年でトップだった子の点数を100点とし、それ以外は、トップの子の成績との比較(百分率)の点数となります。
このやり方だと、100点から0点(先ほど説明したように、0点より悪い点数、つまりマイナス点になる生徒もいる)まで、点数があまりにも幅広く広がりすぎてしまいます。(標準偏差が大きすぎる)
その結果、生徒たちは数学至上主義に陥り、他の科目の勉強を全くしなくなってしまいます。
【「文系」の取り扱い】
文系でも数Ⅲまで勉強させられます。
数学の先生が「バカは文系に行け」というようなことを平気で口にしていました。よほど成績が悪くない限り、原則国公立大学受験が義務づけられています。
【イジメの問題】
勉強が忙しい学校でイジメが起こらないかと言うと、それは大嘘です。
・生徒も教師もいつもイライラしている
・成績の良い子が露骨にえこひいきされる(被害者よりも加害者の方が成績が良い場合、こういう学校は加害者の味方をします。加害者の方が「いい大学」に入れる確率が高いからです。こんな環境なので、成績優秀な生徒がイジメの常習犯になる場合も少なくありません。)
こういう学校だからこそ、むしろイジメは起こりやすいのかもしれません。成績が悪い生徒に人権がない状態、と言っても過言ではありませんでした。
Σとかは見るだけで拒否反応が出るようになり、問題が全く解けなくなってしまいました。
三角関数は、
tanΘ= sinΘ/cosΘ
sin^2Θ + cos^2Θ = 1
くらいは何とか分かりますが、それ以外の加法定理とかは、結局入試本番まで覚えることができませんでした。それでも何とかなりましたが。
空間座標上を移動とか回転とか、動いた部分の体積を求めろとかなると、もはや絶望的。
たとえ中学受験や高校受験がそのやり方で何とかなったとしても、大学受験で同じやり方が通用するとは限りません。同じやり方で勉強を続けて成績が上がらないのであれば、やり方を変えればいい話なのに、「高校に入ったら数学が苦手になってしまった」と、自分で自分を決めつけてしまう人が多い気がします。
日本において、むやみやたらに多くの物量を機械的に解かせようとするやり方が、大量の算数嫌い・数学嫌いを作り出しているような気がします。
私がどのようにしてこの難局を乗り越えたかというと、「物量大作戦」とは真逆の、「とにかく徹底的に考える」でした。
学校の授業を無理にキャッチアップしようとすると身体愁訴が出てくるので、一切無視。授業中は、ノートに書き写した通信添削の問題をずっと考えていました。
普通の人には数分で分かる問題が、私は1時間かけないと分からないのです。
空間図形に至っては、1時間どころか、登校時から下校時まで、(数学以外の授業中も)ずっと同じ問題を考えて続けている日もありました。
• 移動した図形をイメージできるようになるのに数時間
• それを積分式を表すと解説のようになるのだと理解できるようになるのに数時間
• その積分式の解法を理解するのに数時間
それくらい空間音痴だったのです。
でも、そうやって数学の空想に耽っている時は、不思議と楽しかったです。
さっぱり訳が分からなくなった学校の授業を放棄し、何か月かこのような状態を続けていたら、模擬試験で解ける問題も増えて、解く速度も上がってきました。
つまり、学校の数学の成績はずっと底辺のままでしたが、模試の数学の成績はみるみる上がってきたのです。
かつての私のように、処理力も理解力も十人並みかそれ以下の生徒には、「多くの問題を機械的に解く勉強法」よりも「少ない問題をじっくり考える」勉強法の方が合っていると思います。