エドゥアルド・マータのドヴォルザークとエルガー | geezenstacの森

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エドゥアルド・マータ

ドヴォルザークとエルガー


曲目
ドヴォルザーク/Symphony no 7
1.Allegro   10:45

2.Adagio     10:55

3.Scherzo     7:59

4.Allegro     9:35

5.エルガー/エニグマ変奏曲Op. 36   34:04

 

指揮/エドゥアルド・マータ
演奏/ロンドン交響楽団
録音/1987

 

VOX PRIMA MWCD7153

 

 

 現在VOXレーベルはどこから発売されているのか知りませんが、1990年代は「MOSS MUSIC GROUP」から発売されていました。これもその時代のCDで、この頃は時代の最先端を行っていてパッケージはプラスチックを採用せず、紙を使っていました。90年代の初めはまだ、レコードが幅を利かせていて陳列棚はレコード用に作られていて、CDは縦長のパッケージで売られていました。その名残がこの紙ケースにも残っていて、縦に陳列すると下のように陳列することもできました。要するにオールマイティのパッケージでしたが追従するメーカーは現れず、やがて消滅していきます。このパッケージ、嵩張らずエコで軽く良かったんですがねぇ。

 

イメージ 1

     

 

 録音場所の記載はありませんが、多分ウォルサムストウ・タウン・ホールではないかと思われます。ドヴォルザークは好きな作曲家で、交響曲全集もベートーヴェンに次いで揃えているのですか、このCDは忘れていました。VOX PRIMAというシリーズは1980年以降のデジタル時代に入ってから使われたレーベルです。初期はレコードも発売されていましたが、そのうちCDだけの発売になりました。

 

 このマータのドヴォルザークの交響曲第7番は土俗的な雰囲気はあまり感じられず、プチフォーマルな装いを持っている洒落た演奏になっています。ロンドン響の余裕ある体力もあってか随分と遅いテンポで全曲を演奏しています。第1楽章、第2楽章と、実に悠々と進んでいきます。先にデイヴィスの7番を紹介していますが、聴き比べるとデイヴィスの方が爆演を繰り広げている印象です。ここでは、スケルツォも殊更粘るでもなく淡々と進んでいきます。感情を抑えた演奏であるにもかかわらずテンポの設定ゆえか非常に作品の構造が判る分析的な演奏なっています。

 

 マータはメキシコ出身の指揮者としては初めてメジャーデビューした指揮者で当時のRCAに鮮烈にデビューし数々の名盤を残しています。一部で“熱血漢”とも称されたマータですが、ここではそういった面影はあまり感じられません。最後まで手綱をきっちりと引き締め、アクセントつける、エンジンブレーキかける、パワーを溜める、発散させるというコントロールをきっちり行っています。ロンドン響持ち前の輝かしいブラス、艶のあるストリングスは最後の最後に見せ場をつくってはいますが全体としては大人しめの演奏です。ただし、コーダでのホルンの咆哮はブラボーものです。

 

 

 

 

 

 エルガーの「エニグマ変奏曲」は二部形式による主題に、14の変奏が続く作品構成になっています。変奏は主題の旋律線や和声、リズム的要素から飛躍し、最終変奏は大団円を作り出しています。エルガーは、各変奏の譜面に、あたかも副題であるかのように、頭文字や愛称を記入しています。これが、「作品中に描かれた友人たち」が誰であるのかを解く手懸かりとなっています。曲は以下の構成になっています。

 

主題 アンダンテ、ト短調。
第1変奏 L'istesso tempo "C.A.E."
第2変奏 Allegro "H.D.S-P."
第3変奏 Allegretto "R.B.T."
第4変奏 Allegro di molto "W.M.B."
第5変奏 Moderato "R.P.A."
第6変奏 Andantino "Ysobel"
第7変奏 Presto "Troyte"
第8変奏 Allegretto "W.N."
第9変奏 Adagio "Nimrod"
第10変奏「間奏曲」 Allegretto "Dorabella"
第11変奏 Allegro di molto "G.R.S."
第12変奏 Andante "B.G.N."
第13変奏「ロマンツァ」 Moderato "* * *"
第14変奏「終曲」 Allegro Presto "E.D.U."

 

 エニグマ変奏曲は、イギリスのオケにとっては手馴れたもので、マータの指揮も実に恰幅よく、そのスケールの大きさの中で要所要所ポイントをキメていく素晴らしい仕上がりです。ただこの録音、編集が杜撰で曲と曲との間や音の響きに編集跡が随所に聴き取れます。特に、終曲に入ると録音の編集跡がブツブツと出てきてしまうのには閉口します。わかってしまう。スピーカーで聴いてすらこれですから、ヘッドフォンで聴いたら悲惨です。商業録音なのですからもう少し完成度の高いものを提供して欲しいものです。本当に残念。有名な「ニムロッド」はこの演奏では13分ぐらいのところから始まります。第9変奏曲です。わずか4分ちょっとの変奏曲ですが重厚なオーケストラの響きが満喫出来ます。こちらの「エニグマ」は持ち前のマータの爆演型の演奏になっています。 このCDは国内盤は発売されなかったようですが、「ニムロッド」の音源部分は故ダイアナ妃がお好きだったようですし、映画「エリザベス」でも使われていました。最近はオーケストラの演奏会のアンコール・ピースとして盛んに演奏されています。

 

 

 エドゥアルト・マータは1942年9月15日、メキシコのメキシコ・シティに生まれた。メキシコ音楽院に学び、メキシコ国立交響楽団などの音楽監督を務めたあと、1977年にダラス交響楽団の音楽監督、1989年にピッツバーグ交響楽団の首席客演指揮者に就任した。1974年からはヨーロッパでも活動を開始し、ロンドン交響楽団などを指揮した。しかし1995年1月4日ダラスへ向かう中、メキシコで自ら操縦する小型飛行機が墜落し、52歳の若さで亡くなった。


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