チェクナヴォリアンとマータ
「春の祭典」
春の祭典
第1部
大地へのくちづけ Introduction 3:31
春の兆しと乙女たちの踊り 3:25
誘拐の遊戯 1:24
春のロンド 3:34
敵対する2つの部族の戯れ 1:54
賢者の行列 0:43
大地へのくちづけ(賢者) 0:23
大地の踊り 1:12
第2部
いけにえ Introduction 4:41
Mystic Circle Of The Young Girls 3:08
The Naming And Honoring Of The Chosen One 1:33
Evocation Of The Ancestors 0:40
Ritual Action Of The Ancestors 3:59
Sacrifical Dance (The Chosen One) 4:54
春の祭典
第1部 大地へのくちづけ Introduction 3:22
The Augurs Of Spring ; Dances Of The Young Girls 3:14
Ritual Of Abduction 1:24
Spring Rounds 3:10
Ritual Of The Two Rival Tribes 1:48
Procession Of The Oldest And Wisest One (The Sage) 0:39
The Kiss Of The Earth (The Oldest And Wisest One [The Sages]) 0:24
The Dancing Out Of The Earth 1:09
春の祭典 第2部 いけにえ Introduction 4:31
乙女たちの神秘的な集い 3:36
選ばれた乙女への讃美 1:37
祖先の呼び出し 0:43
祖先の儀式 3:46
いけにえの踊り(選ばれた乙女) 5:03
指揮/ロリス・チェクナヴォリオン
演奏/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1-14
録音:1977/05/16,17 キングスウエイ・ホール
E:ジェームズ・マリンソン
P:チャールズ・ゲルハルト
指揮/エドゥアルド・マータ
演奏/ロンドン交響楽団 15-28
録音:1978/05/02
E:ロバート・グー
P:チャールズ・ゲルハルト
タワーレコード TWCL-2016(原盤RCA)
今年のNHK-FMの「名演奏家ライブラリー」の第1回はピエール・ブーレーズの特集でした。その中で、前半をブーレーズ指揮フランス国立放送管弦楽団で、後半をブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で聴くという内容になっていました。満津岡さんも随分洒落た企画をするものです。そして、この放送でフランス国立放送管弦楽団との演奏の素晴らしさを再確認しました。調べるとこの演奏1963年度のADFディスク大賞とACCディスク大賞をW受賞していたのですなぁ。
で、思い出したのがCDの収容録量をフルに生かして「春の祭典」の2つの演奏を1枚のCDに収録していたお特盤があったなぁということです。タワーレコードが1000円盤で出していたものです。このCDには、ロリス・チェクナボリアン(Loris Tjeknavorian,1937年10月13日)とロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、そしてエドゥアルド・マータとロンドン交響楽団の「春の祭典」のRCA音源が収められています。
タワーレコードの好企画であり、当時は双方とも初CD化でした。ただ、収録データはいい加減で今回は記事にするために色々調べました。プロデューサーはどちらもチャールズ・ゲルハルトが担当しています。当時RCAは次世代を担う指揮者を探していましたからチェクナボリアンとマータに相次いで「春の祭典」を録音させたのでしょう。ただ、1年違いでエンジニアはジェームズ・マリンソンからロバート・グーに入れ替わっています。マリンソンは当時はまだデッカのプロデューサーでしたが長年RCA、リーダーズ・ダイジェストの録音を手掛けていましたからその縁で参加していたのかもしれません。ロバート・グーに関しては他の録音でも一切名前が出てきませんのでわかりませんでした。マータの録音には収録会場の記載はありませんでしたが、この当時はこちらもやはり、キングスウェイホールだったのではないでしょうかねぇ。
それにしてもチェクナヴォリアンの「春の祭典」は大太鼓の強打が強烈です。第1部の「賢者の行列」などは連打の嵐です。デッカのマリンソンの面目躍如といった感じです。ただ、第1部と第2部のインターバルが短く、第1部が終わって息つく間もなく第2部が始まってしまいます。普通は2秒ぐらい空白があるものですが、これはチェクナボリアンの指示なんでしょうかねぇ。マータの演奏の方はちゃんとインターバルがあります。そして、11曲の「選ばれた乙女の讃美」ではちょっと編集の荒さが目立ちまつ。音像はマータの録音より打楽器が全体に前に出ているのですが、中間部あたりから急にティンパニの音が引っ込んでしまいます。終曲に向かってはまた盛り上がってきますからこの音のアンバランスはちょっと気になりました。
この1977年という年はまだハイティンクが主席でしたが、既ににテンシュテットもLPOに登場していて、EMIにマーラーの交響曲第1番を録音しています。
ところでこの「春の祭典」は1960年台までは1947年版の楽譜が使われていましたが、現在では1967年版が主流になっているようです。で、このチェクナボリアン盤はこの1947年版を使用しているようです。
で、次はメキシコ出身の作曲家・指揮者のエドゥアルド・マータ(Eduard Mata,1942年9月5日-1995年1月4日,メキシコシティ)の演奏です。彼は不幸にも自分の操縦する飛行機事故で亡くなりました。52才。いかにも早すぎる死です。
マータもまた期待された新人で、この「春の祭典」の録音当時35才です。指揮者の世界では「青二才」と言われても仕方ない年齢ですが、ロンドン交響楽団から切れ味鋭い響きを紡ぎ出しています。個人的にはマータはダラス交響楽団とのコンビで知っているので彼がロンドン響とこんな録音を残していたとは知りませんでした。ジャケットの右下に表示されているのはレコード発売時のものですが、これは国内盤だけのデザインです。
マータは1973年、首席指揮者アンドレ・プレヴィンの急病により、ロンドン響に代役でデビューしています。そして、この録音の前年にダラス交響楽団の音楽監督に就任しています。ここではロンドン響は客演を続けてきた成果がきっちりと形になって現れています。
演奏は、土俗的あるいは印象派的な要素を排した普遍的なもので明晰で、鋭角的ではありますが、冷徹になるのではなく健康的で開放的です。ただ、録音は音像がやや遠目で、あるのが惜しまれます。ロンドン響の各奏者の力量を把握していて、バスクラリネットやバスーン、それにホルンなどのソロのバランスも見事で、オーケストラも指揮者の指示にピッタリと寄り添っています。ただ、この「春の祭典」をのちにダラス響と再録しているところを見るとマータ本人は満足していなかったところもあるのでしょうなぁ。ちなみマータはここでは1947年版と1967年版の折衷的な演奏をして、ダラス響とは1967年版で演奏しています。