名古屋シュピールシンフォニカー
第15回演奏会
曲目/
1.アーノルド/第六の幸福をもたらす宿
2.ファリャ/「三角帽子」第1・第2組曲
3.エルガー/交響曲第1番
アンコール
エルガー/エニグマよりニムロッド
指揮/高谷光信
演奏/名古屋シュピールシンフォニカー
名古屋まつりの20日のメインのイベントはこの「名古屋シュピール・シンフォニカー」の演奏会でした。このオーケストラは普通のアマチュアのオーケストラとは一味違い、チャイコフスキーやらブラームスを安易にプログラムに載せないところが魅力があります。それこそ、クラシック演奏会のパイロット的な存在で、今まで生で聞いたことがない様な曲目を演奏してくれます。
直近2回の演奏会は下記で取り上げています。
そんなことで今回も期待が持てました。前半は早速マルコム・フーノルドの管弦楽組曲「第六の幸福をもたらす宿」が演奏されました。この曲吹奏楽の世界ではよく取り上げられる曲です。ただ、元々は映画音楽だったということでシンフォニー・オーケストラが取り上げることは目つたにありません。そういう意味では非常に幸せな出会いでした。マルコム・アーノルドは一般には演歌背園学の作曲家としての方が知られているのではないでしょうか。最も有名な作品は「戦場に掛ける橋」でしょう。この曲も管弦楽組曲が存在しますが、この「第六の幸福をもたらす宿」も非常にわかりやすい作品です。
1930年代に中国と中国人を心から愛して自らの人生を捧げて、100人の中国人孤児達を日本軍の攻撃から懸命に守り抜いたイギリス人女性宣教師グラディス・エイルウォード(1902年 - 1970年)の半生を描いたアラン・バージェスの小説を基にした映画化作品であり、マーク・ロブソンが監督、イングリッド・バーグマンとクルト・ユルゲンス、ロバート・ドーナットが主演して、シネマスコープを用いて撮影された。映画の題名となっている「六番目の幸福」(The Sixth Happiness)とは、中国では人の幸福には「長寿、富貴、健康、道徳、天寿」の5つがあると伝えられていて、最後にもう1つ、各自その人だけが持つことが出来る唯一の幸福が存在しており、自分自身で見つける自分だけの幸福をこの6番目の幸福というわけです。で、グラディス・エイルウォードは中国の奥地ワンチェンという村で宿を開いて布教に努めるというわけで曲のタイトルに宿がついています。
第一楽章のように高らかにテーマが響くのですが、後ろから山越えの厳しさを表すように、伴奏が迫ってきます。不安や焦燥感を掻き立てまくった後、主題が鳴り響き曲は一転、軽やかにドラムマーチが始まります。
ピッコロが歌い出すのは先程登場した童謡のメロディ。最初は遠くから聞こえて来るように軽やかに、そして楽器を変えながら何度も繰り返し続け、徐々に盛大になっていきます。転調してクライマックスを迎えると、木管達による温かな愛のテーマが流れます。最後は決意のテーマの断片と、盛大なハーモニーで終幕です。曲全体を通して登場する二つのテーマ、そしてマザーグースのメロディーなど、親しみやすい旋律が多く使われています。なかなか楽しめる演奏でした。
2曲目はファリャの「三角帽子」の組曲です。まあ、これも珍しいといえば珍しい曲目でしょう。ただ、コンサートではこの組曲盤がよく演奏されている様です。第2組曲の「粉屋の踊り」が一番有名なのでしょう。ただ、第1組曲の冒頭のティンパニの打ち込みとそれに続くトランペットのファンファーレも聞き物でしょう。第1組曲は序奏部/粉屋の女房の踊り(ファンダンゴ)/代官の踊り/粉屋の女房/ぶどう、多声2組曲は近所の人たちの踊り(セギディーリャ)/粉屋の踊り(ファルーカ)/終幕の踊り(ホタ)で構成されています。ソロ楽器が色々と活躍するという点ではオーケストラのメンバーが活躍できる曲でしょう。前半ということで、やや音楽がおとなしかったのが残念でした。ちょっと安全運転だったのでしょうか。
後半のプログラムのエルガーの交響曲第1番も日本では滅多に演奏されることはありません。尾高忠明氏がBBCウェヘルズ響のシェフを務めていましたから2000年代になってかなり取り上げられる様にはなってきましたけどね。第1楽章はAndante. Nobilmente e semplice - Allegroということでゆっくりとしたテンポで始まります。この曲のテーマとなる主題がヴィオラと木管楽器に提示されます。これが全合奏に発展した後、一段落してからアレグロの主部へと入っていきます。まあ、ティンパニがかなり活躍しますから、ステージ上は彼の動きを見ていても面白く聞けるかもしれません。
第2楽章は部局の楽章に相当します。この楽章は行進曲風の旋律が登場しますからかなり聴きやすいのではないでしょうか。オケの方もだんだん調子が出てきて、指揮者のきびきびとした棒にピッタリとついていました。この楽章はアタ塚で次の第3楽章に繋がっていきます。こちらはアダージョの楽章です。第2楽章の主題と第1楽章のテーマが回想されます。
フィナーレはテーマが演奏され循環形式で統一が図られています。ここでもティンパニが大活躍し見ていても楽しい気分にさせてくれます。ただ、聴きなれない旋律の連続で火ゃくせきは静まり返っていたのが印象的でした。ホルンに多少のふらつきはありましたが、学生OBのオーケストラだけあって非常に魔詰まっていました。このオケは年に一度各セクションが室内楽のアンサンブルを披露する演奏会も行っているので、各セクションが非常に纏まっているのも特徴です。下はマーティン・ブラビンス/BBC交響楽団の演奏を貼り付けてあります。
終演後は盛大な拍手があり大いに充実していた演奏だったのが窺い知れます。最近の東海地区のアマチュアのオケの敷台には中村氏とこの高谷氏、それに和田氏がよくとうじょぅしますが、1番の成長株はこの高谷氏ではないでしょうか。音楽に深みが出てきています。
そうそう、珍しいことにアンコールではこのエルガーの「エニグマ変奏曲」より「ニムロッド」が演奏されましたが、指揮者がまだ完全に敷台に登る前にコンサートマスターがチューニングを兼ねて冒頭を演奏し始めました。アンコールが指揮者主導ではなくオーケストラ主導で始まったのは初めてだったのでちょっとびっくりしました。ただ、ここでも見事なアンサンブルを聞かせてくれたのはいうまでもありません。しかし、最近はこの「ニムロッド」がアンコールピースに使われる機会が増えたなぁと思います。
そのアンコールでの演奏です。こちらはソフィエフが指揮しています。
そうそう、このオケの2025年の室内楽演奏会は2月16日 名古屋市西文化小劇場で14時から開催されます。多分長丁場で終了は18時頃になりますからしっかり予定を開けて聴きに行ってください。