名古屋シュピールシンフォニカー 第13回演奏会 | geezenstacの森

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名古屋シュピールシンフォニカー

第13回演奏会

 

プログラム

1.チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」

2.ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽編曲版)

アンコール

チャイコフスキー/弦楽セレナードより「ワルツ」

ブラームス/ハンガリー舞曲第5番

 

指揮/髙谷光信

演奏/名古屋シュピールシンフォニカー

 

 

 名古屋まつり初日のメインプログラムはこの演奏会でした。このオーケストラは昨年も鑑賞しています。指揮の井﨑正浩氏のバイタリティあふれる熱演が印象的でした。で、今年も期待大でした。このオーケストラは東海地方の大学の卒業生を中心に結成されたオーケストラで、今年は髙谷光信氏を客演指揮に迎え、プログラムもチャイコフスキーとブラームスに絞ったものという意欲的なものです。しかも、メインは「名古屋シュピールシンフォニカー」の演奏会。ブラームスのピアノ四重奏曲をシェーンベルクが管弦楽用に編曲したバージョンでの演奏です。

 

 

 髙谷光信氏の演奏は今年1月のベートーヴェンの第九についで2回目です。今回のチラシ告知には全く謳われていませんが、このコンサートはウクライナ支援のチャリティという側面もありました。実は高谷氏はウクライナ・チェルニーヒウフィルハーモニー交響楽団 常任指揮者でもあり、一般社団法人 日本ウクライナ音楽協会 理事長でもあるのです。

 

 そして、今年2月27日に「今、愛するウクライナが危機に瀕(ひん)している。私が常任指揮者を務めるチェルニヒウフィルとは20年間共に音楽を奏でてきた。そのチェルニヒウが激しい戦場となっている。民間のアパートが爆撃され燃えている映像がSNSで流れてきた。私が借りていたアパートだった」とツィートしていたのです。

 

 

 最初はチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」です。チャイコフスキーとしては比較的初期の作品で、プロコフィエフの同名のバレエ音楽とは異なり、物語に沿った構成ではなく、楽想を自由に描き綴っています。上がチャイコフスキーの楽器配置ですが、中央にチェロが鎮座し、ヴァイオリンは対向配置になっています。まあ、モンタギュー家とキャピレット家の対立を描いていますからこの方がいいのでしょうなぁ。

 

リハーサル風景(ツィッターより転載)

 

 高谷氏の指揮はメリハリがしっかりしていて、ウクライナとも縁のあったチャイコフスキーの音楽はぴったりです。昨年も感じたことですが、オーケストラのソノリティが高く大卒OBのオーケストラとしては最高水準にあるのではないでしょうか。

 

 

 何と言っても聴き物は後半のシェーンベルクによる管弦楽編曲版によるブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番」です。人によってはブラームスの交響曲第5番という人もいるぐらい素晴らしいオーケストラの響きがします。ブラームスのオーケストレーションではホルンの扱いが突出していて、それがために作品に渋さが増しているのですが、このシェーンベルクの編曲になる「ピアノ四重奏曲第1番」はトランペットを活躍させ、さらには近代的なグロッケンシュピール、シロフォンやスネアドラムなど、ブラームスが用いなかったものまで使用しているため音に華やかさがあります。まあ、一皮向けたブラームスの響きと言えるでしょう。

 

 オーケストラの演奏レベルが高いので、旋律線の交錯がきちんと響きとして現れ、なおかつ指揮者の巧みなバトンテクニックによって全体としてはブラームスの持つ室内楽的な響きが十分に響き渡っていました。

 

名古屋シュピールシンフォニカー

 

 アンコールではチャイコフスキーは弦楽セレナードから第2楽章のワルツが、そしてブラームスからはハンガリー舞曲第5番が演奏されました。これが、また自在のテンポの変化でアンコールならではの演奏になっていました。ここまでテンポが揺れ、ダイナミズムが変化する演奏は初めてでした。それにオーケストラは必死についていくのですからこれも驚きです。

 

 アンコールもしっかり楽しませてもらいました。

 

 

 このウクライナの女性たちが招待されていました。