ジャズでモーツァルト | geezenstacの森

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ジャズでモーツァルト

 

曲目/モーツァルト

Piano Concerto No. 20 in D minor, K. 466

1.Allegro

2.Romance

3.Rondo presto

Piano Concerto No. 23 in A major, K. 488

4.Allegro

5.Adagio

6.Allegro assai

 

ピアノ/ジャック・ルーシェ

ベース/ベノワ・デュノワイエ・デ・セゴンザック

ドラム/アンドレ・アルピノ

ウィズ・ストリング・オーケストラ

Anne Gravoin -(vln) Jacques Saint-Yves (vln) David Naulin (vln) Paul Rouger (vln) Richard Schmoucler (vln) David Braccini (vln) Matthias Tranchant (vln) Renaud Stahl (viola) Vincent Debruyne (viola) Mathilde Sternat (cello) Jean Claude Auclin(cello) Sylvain Le Provost(b)

 

録音/2005

TELAC  CD83628

 

 

 1960年代にバッハの名曲をピアノ・トリオ・ジャズで演奏、バロックの旋律をモチーフにして旋律をモチーフにして鮮烈なモダン・ジャズを創り上げ、世界的なセンセーションを起こした先駆的ピアニスト=ジャック・ルーシェの2006年生誕250周年を迎えるモーツァルトにちなんで録音したピアノ協奏曲集です。ジャック・ルーシェは好きなアーティストでデッカ時代の「プレイバッハ」から追っかけています。

 

 このアルバムは1990年代末から契約したテラークに録音したアルバムです。バッハでスタートしたジャック・ルーシェですがこのテラーク時代には、先に取り上げているヴィヴァルディを始め、エリック・サティ、ラヴェル、ドビュッシー、ヘンデル、ベートーヴェン、ショパンなどを取り上げ2005年にこのモーツァルトを録音しました。まさに、クラシックとジャズの融合を試みた偉大なジャズピアニストです。まあ、そのジャック・ルーシェも元々はMJQのジョン・ルイスに憧れてこの世界に入ったと言われていますが、小生もMJQを聴くようになってジャズ・クラシックの世界に足を突っ込みました。以来、スィングル・シンガーズ、オイゲン・キケロ、ギュンター・ノリス、さらにはフュージョンのデオダートや、ヒューバート・ローズ、ボブ・ジェームスなんかにも手を広げました。まあ、音楽はいいもんはいいのであります。

 

 ということで、このジャック・ルーシェ、いつものトリオと違いここでは協奏曲を演奏するということでストリング・オーケストラ付きぐっとクラシックに歩み寄っています。ピアノ協奏曲20番と23番のカップリングの仕方などはもう、明らかにこれはクラシックのピアニストに肩を並べようというジャック・ルーシェの意気込みでしょう。ただ、そのアプローチはあくまでもジャズがベースで、一時期チック・コリアやキース・ジャレットがクラシックを演奏するようなことがありましたがあれは愛嬌でしょう。


  ここでのオーケストラは弦楽のみの十二人編成です。主にクラシックベースの旋律を弾いています。そこにジャック・ルーシェ・トリオがジャズの即興を活かしながら最初は楷書体からすぐに草書体になったり、隷書体になったり自由自在にモーツァルトのメロディの中を駆け巡ります。映画『アマデウス』でも有名なこのピアノ協奏曲第20番 K.466は、やはり2楽章の美しさが特筆すべき点として挙げられますが、ジャック・ルーシェもこの2楽章には細心の注意を払ってアレンジしていることがうかがえます。ストリングスのバランスや、上品さを保ったトリオ・ジャズは、この神がかった2楽章の美しさを、また違った引き出し方で聴くものを魅了してくれます。さらに、緊張感と神々しさに満ちた2楽章が終わると、弾けるようなドラムが、勇ましく音楽を導いていきます。サンバ風のジャズ、ファンク調のジャズなどで、モーツァルトの舞曲を現代風にダンサブルにアレンジしています。2楽章とのギャップが心地好い。ジャズになってもちゃんとモーツァルトしています。名曲ですなぁ。

 

 

 

 



 続く、第23番もクラシカル。1楽章、ジャズ・ワルツと正統派クラシックが混在している雰囲気はなんとも言えず優雅なものです。ストリングスの音色は普通にモーツァルトの旋律を真面目に演奏しているのですが、このストリングスと絡むベースは自由に跳ねています。このギャップがまたなんとも言えない味を産んでいます。そこにさらにシンコペーテッドされたルーシェのピアノが乗ってきてドラムスと共にジャズのフレーズに流れ込んでいきます。このジャズとラシックの行き来がモーツァルトを知っているからこそ楽しめます。まあ、これはかしこまって聴く演奏ではありませんが、サロンか何処かで軽く飲みながらリラックスして聴くモーツァルトでしょう。

 

 

 

 

 

 

これまでに取り上げているジャック・ルーシェのアルバムです。訪問をお待ちしております。