ロジャー・ノーリントン・サンプラー | geezenstacの森

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ロジャー・ノーリントン・サンプラー

 

曲目/

1.Beethoven: Symphony #2 In D, Op. 36 - 1. Adagio Molto, Allegro Con Brio    11:56

2.Beethoven: Symphony #3 In E Flat, Op. 55, "Eroica" - 2. Marcia Funebre: Adagio Assai    12:35

3.Sinfonie No. 6, Op. 68, Pastorale - III Allegro - IV Allegro - V Allegretto    17:41

4.Beethoven: Symphony #7 In A, Op. 92 - 4. Allegro Con Brio    9:05

5.Beethoven: Piano Concerto #1 In C, Op. 15 - 3. Rondo: Allegro Scherzando    8:32

6.Berlioz: Symphonie Fantastique, Op. 14 - 5. Songe D'Une Nuit Du Sabbat    10:37

 

指揮/ロジャー・ノリントン
ピアノ/メルヴィン・タン*
演奏/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ

 

録音/1986-07-28/30 1
   1987-10 2
   1987-09 3
   1988-08 4
   1988-03 5
   1988-03 6  アビーロード第1スタジオ

 

P:ダヴッド,R,ムーライ
E:マイク・クレメンツ

独EMI ELECTROLA CDZ 7 62807 2

 

 

  CD普及期にドイツで発売されたサンプラー的なコンピュレーションアルバムでした。限定盤でプレスがスイス、解説はドイツで印刷されたドイツ語がメインというもので1989年発売の一枚です。この「「我々の世代のアーティスト」シリーズの一枚で、他にピアニストのツァハリスやアルバン・ベルク四重奏団のものが手元にありますが、他にはムーティ、フランク。ペーター・ツィマーマン、イツァーク・パールマン、そしてバリトンのオラフ・ベーアのものが発売されていました。いかにもドイツEMIの人選というものです。まあ、当時のEMIにはメインのアーティストはこれぐらいしかいなかったという証でもあります。ただ、当時は日本ではCDを発売すれば売れるという状況だったのでこういうサンプラー的なものは発売されなかったように記憶しています。

 

このシリーズ他のアーティストは取り上げていましたがノーリントンはうっちゃってありました。

 

 

 

 なにしろ、収録内容を見ればベートーヴェンとベルリオーズだけで、個人的にノーリントンは注目していて単品でベルリオーズは所有していましたし、ベートーヴェンの交響曲全集ものちに購入していますから取り上げる意味がなかったというわけです。

 

 

 

ただ、ベートーヴェンは当時、次から次に全集を購入していましたからノーリントンのものを単独で取り上げることはなかったようで、ここで取り上げる次第です。
 
 最初に取り上げているのは交響曲第2番です。これは奇数番号と偶数番号ではベートーヴェンの性格が違うということからでしょう。普通なら1番を取り上げるところを2番にしたのは3番は外せないからでしょう。当時はホグウッドを筆頭にピノック、グッドマン、ガーディナー、ブリュッヘンと古楽によるベートーヴェンの交響曲全集が各レコードメーカーがしのぎを削って発売していました。
 
 その中で、EMIが白羽の矢を立てたのはこのノーリントンでした。しかし、当時はほとんど知られていませんでした。僅かな情報は1985年から1989年までボーンマス・シンフォニエッタの常任指揮者をしていたということぐらいです。シンフォニエッタは室内オーケストラと訳されるように小規模編成のオーケストラのことでこのボーンマス・シンフォニエッタもボーンマス交響楽団の中に設立されたものです。
 
 このロンドン・クラシカルプレーヤーズは1978年に彼が結成したもので、その活動期間とダブっています。第2番は全集の中で最初に録音したもので、当時の謳い文句はベートーヴェンのメトロノームの指定に忠実に演奏したものとして注目されました。ここでのティンパニの響かせ方は独特なもので、その響きは強烈な印象をもたらしました。

 

 

 ベートーヴェン指定のテンポの再現のみにとどまらず、楽器の配置、編成、当時の楽器の使用と妥協のない試みを実演に移して行ったのですが、中でもノリントンのこだわりは、ヴィブラートに関するものでした。現代のオーケストラの弦楽器や木管楽器に聴かれるような、常に音程を揺らすヴィブラートは1930年代までは一般的ではなく、基本的にピュアな音色で奏でられていたということを論拠にしたノンヴィブラート奏法がそれです。現代のオーケストラが纏うようになった厚化粧を削ぎ落とすことによって、作品の本来の美点が浮かび上がるのだ、という強い信念に基づき、ピリオド楽器オーケストラのみに止まらず、〈シュトゥットガルト放送響〉や〈南西ドイツ放送響〉など伝統をもつドイツの既存のオーケストラにも自身の考えを浸透させてゆきます。

 

 第3番はあまり出来が良くないように思え、アダージョが空中分解しているような演奏です。この演奏に比べるとホグウッドの方がまだましかなぁと思えてしまいます。

 

 

 概して偶数番号の演奏が優れていて、この田園も嵐の描写は聴くべきものがあります。

 

 

 

 ベートーヴェンの最後は交響曲第7番です。今となってはなぜ第4楽章が取り上げられているのかわかりませんが、これは失敗です。この全集題して偶数番が出来が良くて奇数番はやや低調です。ここでも元気がいいのはわかりますが、それが空回りをしていて闇雲に突っ走っていて、肝心の音楽が置き去りにされているような印象を受けます。

 

 

 さて、ベルリオーズですが、こちらもベルリオーズのメトロノームの指示通りのテンポで演奏しています。特に違いを感じるのはこの第5楽章のテンポでしょう。第4楽章もそうなのですが、第5楽章はラルゲット♩=63 アレグロ付点♩=104で演奏されています。普通の指揮者はもっと早いテンポで演奏しているのが大半で、この店舗を守って演奏しているのはブーレーズ/BBC響とこのノーリントンぐらいなものです。まあ、鐘の音が貧弱なのと音に締まりがないEMIの録音を気にしなければいっちょぅに値する演奏と言えるのではないでしょうか。