あおば鰹 料理人季蔵捕物控 | geezenstacの森

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あ お ば 鰹

料理人季蔵捕物控

著者:和田はつ子

出版:角川春樹事務所 ハルキ文庫

 

 

 初鰹で賑わっている日本橋・塩梅屋に、頭巾を被った上品な老爺がやってきた。先代に“医者殺し”(鰹のあら炊き)を食べさせてもらったと言う。常連さんとも顔馴染みになったある日、老爺が首を絞められて殺された。犯人は捕まったが、どうやら裏で糸をひいている者がいるらしい。季蔵は、先代から継いだ裏稼業“隠れ者”としての務めを果たそうとするが・・・・・・。(「あおば鰹」)義理と人情の捕物帖シリーズ第三弾、ますます絶好調。---データベース---

 

 

宇江佐真理さんの「髪結い伊三次捕物控え」シリーズが好きだった小生にとっては対方の後継シリーズと言えるでしょう。まあ、古書店でふと見つけたシリーズで、現在は電子書籍版しか無いようなのでコツコツと探していくことにします。髪結が料理人に代わっていますが、美味しそうな江戸の庶民料理が次々と紹介されるのも愉しみな作品… 物凄く面白い!というほどではないですが、レベルは一定以上で安心して読めるし、それなりに愉しめるので、次の作品も読んでみたいと思えるシリーズです。これはそのシリーズ第3作です。

 

目次

■第一話 振り袖天麩羅
■第二話 あおば鰹
■第三話 ボーロ月
■第四話 こおり豆腐

 

『振り袖天麩羅』

 料理茶屋・夢さくらの看板娘の姉妹が、厨での調理中に着物に火がうつり火傷を負って死亡(実は一人は絞殺)し、その母親が後追い死した事件です、ただ、この事件は、それだけにとどまらず、この後起こる様々な事件の発端となっています。この事件の概要を承知していないと、その後の別の事件の展開が理解できないところもあるのではないでしょうか。

『あおば鰹』


 日本橋・塩梅屋に、現れた頭巾を被った上品な老爺… 先代に“医者殺し”(鰹のあら炊き)を食べさせてもらったと言う老爺が首を絞められて殺された事件。この事件から話が革新方向へと進んでいきます。ようやく2つ目になった新参の落語家が登場します。この人物がこの物語の重要なキーパーソンとなってきます。

『ボーロ月』


 身寄りのない子どもを育てている尼寺・寿慶院の庵主や子どもたちが殺害されます。物語の性格上人が死ぬのがわかりますが、女も子供も簡単に死んでいくのがちょっと理解しづらい小説でもあります。ただ、時代の背景としては、以前NHKで放送された木村佳乃や、松平健が演じた、「NHKスペシャルシリーズ大江戸」の中で紹介された商人が花開かせた商都という回で幕府ではなく、商人が街を守っていたと紹介されたのを思い出し、これはさもありなん話だと理解した次第です。で、この3つの事件には、黒砂糖と白砂糖の取引を巡る利権が絡み、裏で糸を引く黒幕が…という事で、話が展開していきます。

 

『こおり豆腐』

 

 そして、次に砂糖の取り引きを裏で仕切る菓子屋・柳家の隠居「虎翁」が狙われる段になって、主人公の季蔵がようやく活躍する展開になります。ただ、本格的に、裏家業を展開するのかなという前にあっけなく「虎翁」が亡くなってしまいますから、展開としてはやや物足りないのですが、先の髪結伊佐次でこういう展開になれていましたから良しとしましょう。
 

 独立していると思える第一話から第三話が関連して、第四話で全体に絡むひとつの大きな事件が解決されるという展開が愉しめました。