レコード芸術1974年3月号 4 | geezenstacの森

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レコード芸術

1974年3月号 4

 

3月号裏表紙

 

 モノーラル特集の中でもっとも興味深かったのが、下の特集です。昨今のレコード復活ブームを支えている若者にはあまり興味のない話なんでしょうが、本来のレコードの歴史を紐解いていくと、正しくレコードを聞くためには、避けられない問題が当時はありました。それは下の記事が取り上げているカッティング方式の違い、もう一つはRIAA特性の問題です。まあ、中古レコード店でレコードを購入するにしても1955年以上前のレコードには手を出すなということです。

 

 

 ここで記事を執筆している岡俊雄氏は本業は映画評論家でした。それでいて、クラシック音楽にも精通していて、その歴史にも蘊蓄がありました。この岡氏が書いた「マイクログルーヴからデジタルへ」などは上下巻によるレコードの歴史を綴っている大著です。この本にある19章の「複雑をきわめたLP初期の録音特性」を簡素にまとめたのがこの記事というわけです。

 

 

 

 さて、この時期のレコード各社の新譜広告です。

 

 

 徳間音工は新しく「クラーヴェス」レーベルを立ち上げることになり、ヘルマン・アーベントロートをプッシュすることを予告で取り上げています。フルト・ヴェングラーやトスカニーニと同時代の人ですが、ほとんど知られていませんでした。この号はこの1ページだけの広告を打っています。

 

 原材料不足で新譜を思うように打ち出せないために、昨年末に発売されているショルティの第九をトップページで訴求しています。ショルティにとっては旧録音になる第九ですが、LP一枚に収録できない長さで、当時は2枚組で発売されています。時代は重厚長大がブームになっていましたから確かに売れたんでしょうなぁ。

 

 

 この時期にハンガリーのバルカントーンの録音を使ってバルトークの大全集が発売されていたとは知りませんでした。でも、あまり売れなかったと見えて、この後キングは廉価版で主だった録音を再発しています。そちらの方は小生手元にも何枚か残っています。ブロックフレーテ奏者として一斉を風靡したフランス・ブリュッヘンの旧譜がここでも訴求されてています。確かに「涙のパヴァーヌ」はベストセラーになっています。

 

 

 3ページ目でようやく本来の新譜の訴求です。ボスコフスキーは当時ウィーン・モーツァルト合奏団を率いてセレナード・嬉遊曲全集を進行注でした。話題盤であったルプーのグリーグ、主へマンのピアノ協奏曲もここで登場しています。誤植ですが、耳記事のアーゴ・レコードの民族音楽は静かなブームを読んでいました。地にキングはこれらを「世界の民族音楽シリーズ」として廉価版で投入しています。この中でJavaのガムラン音楽のものはよく売れ、のちにビクターのシリーズにも影響を与えています。

 

 

 こちらも、新譜ですがレコードではなくテープでの販売告知です。当時、オープンテープを広告で打ち出していたのはソニーではなくこのキングだったのです。レコード媒体ではないので計画的に生産できたのでしょう。実は本広告でも2ページを割いてマリナーの「調和の幻想」を別途アピールしていますし、トップに上げた裏表紙でもこの新譜を告知しています。力が入っていました。この録音は結構当時としては斬新で、

初盤のスコアをに基づき当時メンバーだったホグウッドが楽譜を校正。

当時の演奏スタイルの対向配置を実践し、中央にヴィオラとコンティヌオを配して録音。

通奏低音部にはチェンバロ、オルガン、テオルボ(大型リュート)、バスーンを適宜使用。

ただ、ピッチは現代のものを使用し、早めのテンポで上の装飾を排した演奏になっていました。

 

 

 マゼールは当時は八面六臂の活躍で色々なオーケストラとデッカに大曲を録音していました。この後クリーヴランド管弦楽団のシエふに落ち着きますが、ウィーンフィルとも録音を継続していて続々と新譜が登場しています。

 

 

 RCAに移籍はしたもののオーマンディはあらかたのレパートリーを録音し尽くしていたので、勢い新譜としては奇抜なものが取り上げられるという傾向がありました。ここでも、ピアノ協奏曲「黄河」と「労農行進曲」といったものがメインの新譜が発売されています。名古屋でのピンポン外交が契機となって当時の内閣総理大臣田中角栄氏の日中国交回復が実現したのが1972年でした。アメリカもそれに乗っかりオーマンディは1973年、フィラデルフィア管弦楽団を率いて中国公演を行っていて、(9月10日~223日)その際「黄河」を演奏していますそのため、この曲を録音したようです。ピアノはニューヨーク生まれでジュリアード音楽院出身のダニエル・エプステイン(当時27才)が担当しています。「修道女アンジェリカ」はこんな録音があったのかというイメージしかありません。発売が遅れた一枚です。

 

 

 アンナ・モッフォのアルバムの告知です。オペラではゲオルク(表示はギョルグ)・ショルティ、ラインスドルフ、プレートルといった面々が担当していますが、モッフォノ名前ぐらいは記憶に残っていますがレコードはこちらも全く記憶がありません。

 

 

 ルービンシュタインも来日するということで旧録音でショパン全集を作成しています。この時代RCAは旬を過ぎた大家に頼っていて若手が育っていないですなぁ。