ラベンダーの殺人 | geezenstacの森

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ラベンダーの殺人

 

著者:吉村達也

出版:カドカワ カドカワMINI文庫

 

 

 『瑠璃色の魔術』事件で、凶悪犯によって心身ともに大きなダメージを受けた警視庁捜査一課の女性刑事・烏丸ひろみは、捜査官の職を辞してリハビリに努めていたが、精神分析医・氷室想介の指導による芳香療法(アロマテラピー)で完全に立ち直った。そのひろみのもとに、緊急の通報。北海道富良野のログハウスで姉が殺されているという知人の女子大生からの連絡だ。真相を解く鍵はラベンダーの香りに。読者も表紙から漂うラベンダーのアロマをヒントに、謎解きに挑め。---データベース---

 

 1997年に発行された本です。カドカワミニ文庫と謳われている通り、通常の文庫サイズよりはるかに小さい長編が12㎝8.㎝というミニ本です。おまけにアロマチック・ミステリーと書かれているように表紙の一部分を擦るとラベンダーの香りがするという趣向の本です。ただ、手元にある本は古本の匂いしかしませんけどね。

 

 「警視庁捜査一課・烏丸ひろみ」シリーズの中の「香りの殺人」シリーズ1作目ということですが、実際にはこのストーリーではもう退職しています。過去の繋がりからこの事件に首を突っ込むことになります。巨額の遺産を相続した女子大生麻貴の姉が、北海道富良野の別荘で死体となって発見されます。誰に殺されたのか?なぜ部屋中にラベンダーが、敷き詰められていたのか?というのがこの小説のポイントです。

 

 「妖しき瑠璃色の魔術」の事件後、警視庁を退職した烏丸ひろみが、麻貴を助けることになるのですが、わずか130ページほどの短編ですからあっさり解決しちゃいます。また、作中で「妖しき…」事件のその後について触れています。気になっていたので少しスッキリしました。

 

 この小説面白いことに作中にこの本の「ラベンダーの殺人」がそのまま登場しています。そして、何よりもこの本のラベンダーの香りを嗅いだことが事件解決の糸口になるという仕掛けになっています。おもしろいしかけです。それにしても元警視庁捜査一課の刑事が単独で真犯人を追い詰めていくのですから、ちょっと考えられない展開にはなっています。

 

 そうそう、この小説は「アロマチック・ミステリー」という副題がついたシリーズの第1作ということでアロマオイルについての蘊蓄が滔々と固られています。これからアロマテラピーを考えている人には格好の入門書かもしれません。