カール・リヒター サンプラー | geezenstacの森

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カール・リヒター

サンプラー

 

曲目

A面

1.J.S.バッハ/<クリスマス・オラトリオ>BWV248から第1曲:合唱「喜びの声あげ、この日をたたえよ」

2.J.S.バッハ    管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068から「ジーク」

3.J.S.バッハ    ブランデンブルグ協奏曲第5番ニ長調BWV1050から「第1楽章」

4.J.S.バッハ    <マタイ受難曲>BWV244から終曲:合唱「われらは涙ながらに膝まづき」

B面

1.J.S.バッハ    トッカータとフーガ ニ短調BWV565

J2..S.バッハ    イタリア協奏曲ヘ長調BWV971から「第1楽章」

3.ヘンデル    オラトリオ<メサイヤ>から第42曲「ハレルヤ・コーラス」

4.ハイドン    交響曲第101番ニ長調<時計>から「第2楽章」

 

指揮/カール・リヒター、オルガン(B1)、チェンバロ(A3,B2)

演奏/ミュンヘン・バッハ管弦楽団(A、B-3)

  ミュンヘン・バッハ合唱団(A-1,4、B3)

  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(B-4)

フルート/オーレル・ニコレ(A-3)

ヴァイオリン/ハンスハインツ・シュネーベルガー(A-3)

 

DGG   MG9903 (原盤2563098)

℗1971

 

 

 先に取り上げたクーベリックと共に発売されたサンプラーです。カール・リヒターについてはグラモフォンとアルヒーフの両レーベルにまたがって発売されていましたから個人的には訳のわからない指揮者でした。このアルバムの第1曲目に収録されている「クリスマス・オラトリオ」は実際にはアルヒーフ・レーベルから発売されているものです。下は収録されているカタログですが、見ても分かるように2つのレーベルが混載されています。そして、不思議なことに、全曲盤はある日ーふ、抜粋盤はグラモフォンから発売され、1枚ものはアルヒーフは2,300円、グラモフォンは2,000-2,200円と価格も違っていました。

 

 

 12月になって今の時期にちょうど良い選曲になっているので引っ張り出してきました。最初は「クリスマス・オラトリオ」BWV248から第1曲:合唱「喜びの声あげ、この日をたたえよ」です。

 

 

 管弦楽組曲は1960-61年ごろの録音ですが、今聴いてもいい音がします。何しろこの時代はあまり本格的な音源がありませんでした。カラヤンの演奏はモダンナイズされていて、どうしてもムードミュージック的な利き方になってしまいましたが、この李日田の演奏はトランペットの響きからしてバロックトランペットの輝かしいハイトーンが素晴らしいパースペクティブを演出しています。これを聴くだけでもリヒターの管弦楽組曲を聴く楽しみがあります。

 

 

 個人的にはリヒターのレコードを最初に購入したのはグラモフォンでもアルヒーフでもありませんでした。キングから発売された「世界の名曲シリーズ」でのモーツァルトでした。ですからリヒター=バッハというイメージは持っていませんでした。でも、伏木ですねぇ。テレフンケンにはモーツァルトそれ以外はポリドールと暗黙の了解でもあったのでしょうかねぇ。そんなことでリヒターのバッハはこちらでたくさん聴くことができます。リヒターはオルガンやチェンバロの名手ということで、ブランデンブルク協奏曲第5番ではチェンバロも受け持っています。ここでの演奏は合奏協奏曲という捉え方で、チェンバロはオーケストラの中に溶け込んでいます。小生は5番はチェンバロ協奏曲と思っていますからそういう点ではちょっと物足りなさを感じます。

 

 

 A面最後はリヒターの代表的な名盤と言われる「マタイ受難曲」から終曲です。この曲は来日した折にもライブで演奏されました。また、この曲はメンデルスゾーンが演奏してバッハ復活のきっかけともなった作品でもあります。このサンプラーの唯一の欠点は対訳歌詞がないことでしょう。せっかくの名曲なのに多分表面的に聞き流されてしまったのではないでしょうか。かくいう小生もその一人でした。

 

 

 さしずめ、リヒターのバッハはメンデルスゾーン以来の伝統をレコードに刻印した最初の指揮者と言えるのではないでしょうか。B面はそんなリヒターのオルガン曲から始まっています。1曲目は「トッカータとフーガト短調です。代表的名盤と言われていますが、小生にはちょっと模範的な演奏に聞こえないでもありません。あまりにも楽譜に忠実でもう少し遊びがあってもいいのになぁと時々思います。しかし、揺るぎない構成で演奏されたこの「トッカータとフーガニ短調」はやはり他の演奏者に比較しても抜きん出ているんでしょうなぁ。そうそう、このリヒターの「トッカータとフーガニ短調」はもう一つステレオ録音が残されています。デッカが1954年にスイスのヴィクトリアホールで録音したものですが、これも歴としたステレオでなんですなぁ。

 

 

 記憶が正しければこのカール・リヒターの演奏するイタリア協奏曲は人生最初に聴いた演奏のはずです。当時はNHK-FMで「バロック音楽のたのしみ」という番組が放送されていて、毎朝それをカセットに録音していました。で、学校から帰るとそのテープを聴きながら勉強するというのがパターンになっていました。そこで協奏曲という名前でも、チェンバロの独創曲だということを初めて知りました。まあ、そんなことで刷り込みのある演奏で、これがディフェクト・スタンダードです。

 

 

 このレコード、この時期の最大のハイライトとも言っていい曲でしょう。ヘンデルの「メサイヤ」です。今年は名古屋でも5年ぶりに「メサイヤ」が演奏されますが、まさにクリスマスにふさわしい曲でしょう。リヒターはこの曲をミュンヘンバッハO以外にロンドンフィルとも録音しています。やはり思い入れのある曲なんでしょう。

 

 

 最後は珍しくハイドンの交響曲です。ここでは101番「時計の第2楽書がピックアップされています。リヒターはハイドンの交響曲を2曲しか録音しませんでしたが、いずれも構成のどっしりとした演奏に仕上がっています。得難い指揮者でしたが、1981年2月15日、滞在していたミュンヘンのホテル「フィア・ヤーレスツァイテン」431号室にて心臓麻痺により急逝してしまいます。54歳という年齢はいかにも早すぎます。

 

 

 ということで、このレコードはカール・リヒターの音楽が凝縮されています。