口入屋用心棒49 隠し船の館 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

口入屋用心棒49 隠し船の館

 

作者名 :鈴木英治

出版 双葉社 双葉文庫

 

 

 一人娘のおさちをかどわかされた岩田屋恵三の屋敷から、老中首座・堀江信濃守の悪行を裏付ける帳面が何者かの手によって盗み出された。娘の無事を願いつつも必死に帳面を探す恵三に、やがて魔の手が伸びる。一方、おさちの行方を追って品川に向かった湯瀬直之進は、おさちと刻を同じくして姿を消していた浪人者の消息を掴む。直之進は江戸で暗躍する人さらい一味の隠れ家を突き止め、おさちたちを救い出せるのか!? そして消えた帳面の行方は!? 書き下ろし大人気シリーズ第四十九弾!---データベース---

 

 2023年1月双葉文庫刊の書き下ろしで、全三巻にも及ぶ長編の終わりです。ただ、このストーリー、通常は悪役がきっちり紹介されるのですが、ここでの悪役「墨兵衛」という人物は正体不明のまま死んでしまいます。人攫いをして諸外国に売り飛ばし、それで藩の財政を支えるという訳のわからない設定になっていますが、その辺りの追求はありません。いろいろ伏線はあるのですが、ほとんど回収できないままにあっけなく大団円を迎えてしまいます。直之進との関係は?のまま、なにはともあれ無事に解決を迎え、もう一つのストーリーの猿の大名の儀介も方もいろいろ助けの手が差し伸べられ国元の凶作対策もめどがつきやれやれです。ただ、シリーズも長くなると登場人物の整理が難しくなり本来のタイトルの口入屋は今では全く意味もなくなってきています。シリーズ最初の描写はそれまでの鈴木氏の作風を代表するキリッと引き締まった文体だったのに比べ、ここまでくると同じような描写が何回となく顔を出し、なおかつ日記調の語り口になり併用なんですが、時代小説という雰囲気が薄れてしまっています。

 

 ということでこの巻は前巻、前々巻を読んでいないと全く話の流れがわからない内容です。

 

 

 

 最近の小粒な物語が続いていたので、この三部作にいろいろな要素をぶち込んだまではいいのですが、拐かし、悪徳大名と悪徳商人、部屋住の大名の次男、三男の義賊の活躍、これらの要素を取り入れて三部作にしている訳ですがもう。オールスターの登場ですから交通整理ができていません。本来ならもっとかつやくするはずの町方の定廻り同心の樺山冨士太郎たちは名前は出てきますがほとんどストーリーには絡んで来ません。勿体無い展開です。このシリーズハッピーエンドで終わるなら次の50巻で着地点を見つけてもらいたいものです。口入屋の琢之助もほとんど登場しなくなっていますから、本来の形で締め括って欲しいものです。