口入屋用心棒48 身代金の計 | geezenstacの森

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口入屋用心棒48 身代金の計

 

作者名 :鈴木英治

出版 双葉社 双葉文庫

 

 

 秀士館再建の普請がようやく始まった梅の季節、上野北大門町で米問屋を営む岩田屋恵三の一人娘おさちが何者かにかどわかされた。南町奉行じきじきの命を受けて、その行方を追い始めた定町廻り同心の樺山富士太郎は、おさちの周辺に幾度となく姿を見せていた浪人者の存在を突き止める。一方、おさちの身を案じる湯瀬直之進は、黒頭巾で面体を隠した得体の知れぬ男たちから襲撃を受け……。悪名高い岩田屋の娘をかどわかしたのは一体誰なのか、そしてその目的とは!? 書き下ろし大人気シリーズ第四十八弾!

 

 

 ここ最近は小粒な事件の連続でしたが、富士山の噴火や大火という災害のバックボーンがありストーリーに厚みが出てきました。そして、この巻は前作の最後で米問屋岩田屋恵三の娘・おさちが誘拐された続きです。誘拐した人攫いの集団が、湯瀬を執拗に襲いますが、湯瀬はすべてを退けていきます。通常は敵方の首領のエピソードが冒頭に紹介されるのですが、今回はそれがありません。ということでは敵がどんな組織なのかははっきりしません。

 

 ただ、勾引かしにあったのは岩田屋のおさちだけでなく複数の娘がさら割れていることが定町廻り同心の樺山富士太郎の調べでわかってきます。

 

 湯瀬は岩田屋につめて用心棒という立場でなくおさちの探索の助っ人として事にあたります。そんな中で岩田屋に身代金として三千両を要求する文が来ます。いよいよ賊と対決するかという段になって岩田屋の主人の恵三は湯瀬をクビにします。何か裏があると読んだ湯瀬は倉田に助っ人を頼みます。はたして。二人して一味を捕まえると、実際は人攫いの一味でなく岩田屋出入のやくざ者が、娘が誘拐されたのを利用してひと稼ぎしょうと計画したものでした。


 これと並行して、前作で老中首座・堀江信濃守和政が、米どころ出羽笹高三万八千石高山家に無理難題を吹っかけて潰そうとしたが、藩主高山堂之介が切腹して難局を切り抜けたかに思われましたが。堀江信濃守は、藩主が死んだ藩にお手伝い普請を命じてどうしても高山家を潰そうとします。兄が亡くなったので高山家の殿様となった義之介は、お手伝い普請にかかる一万二千両を用意するために盗賊猿の儀介として再度盗みに入ります。


 そんなことで、この巻は岩田屋の娘・おさちの誘拐とおさちを秘かに思う浪人・河合綱兵衛(こうべえ)のストーリー、大名高山家の当主・義之介が盗賊家業再開、老中首座・堀江信濃守の失脚を謀る老中・結城和泉守の手先としての義之介、秀士館長・佐賀大左衛門を訪れた材木問屋因州屋の4つのストーリーがが同時進行しています。

 

 賊はどうも人買い集団と思しきことがおぼろげながらわかってきますが、ストーリーの全体像はまだ見えてきていません。この流れは結構引っ張られるかもしれません。