Stokowski Spectacular
1.Sousa - The Stars And Stripes Forever 3:42
2.Mussorgsky - Entr'acte Act IV 'Khovanschina' 4:35
3.J.Strauss II -Tales From The Vienna Woods - Waltz Op. 325 15:08
4.Ippolitov-Ivanov - Procession Of The Sardar (From The Caucasion Sketches) 3:37
5.Chabrier - Espana - Rhapsodie 6:51
6.Haydn? - Andante Cantabile (From String Quartet In F, Op. 3 No. 5) 3:04
8.Saint-Saens - Danse Macabre (Solo Violin Sidney Sax) 7:13
8.Brahms - Hungarian Dance No. 1 In G Minor 3:28
9.Tchaikovsy - Solitude Op. 73 No. 6 3:26
10.Berlioz - Hungarian March (From The 'Damnation Of Faust') 4:57
指揮/レオポルド・ストコフスキー
演奏/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
コンサート・マスター/シドニー・サックス
録音/1975/011 ウェストハム・セントラル・ミッション
P:アンサニー・ホッジソン
E:レイ・プリケット
英PYE NIXA PCNH 4
レコードラックの中から忘れていたレコードが出てきました。ストコフスキーはデジタル時代にはちよっと間に合いませんでしたが、録音には常に新しいものにチャレンジしていました。このレコードはストコフスキー93歳の時にパイレコードに録音されたレコードで、この初出時は4チャンネルレコードとして発売されました。
パイレコードには2枚のアルバムを残しています。当時の日本の発売窓口はテイチクで、ULX3244Yという番号で発売されていました。ただ、4チャンネルでは発売されていなかったと記憶しています。手元にはCDで再発されたものもありますが、こちらはPRTというところから発売されています。ただ、このパイレーベルはその後EMIに吸収されています。ですから、今はワーナーが販売権を持っています。
1曲目の「星条旗よ永遠なれ」はアメリカ生活が長かったストコフスキーが郷愁を覚えてレコーディングに組み入れたものでしょうか。ストコフスキー自身の編曲でこの曲を演奏しています。93歳ですからノリノリの演奏というわけではありませんが、テンポを途中でぐっと落とすなどストコフスキー節は満開です。
3曲目の「ウィーンの森の物語」は何度も録音しているストコフスキーですが、ここでは昔のアレンジではなく途中にチターの響きを入れた新しい編曲を施しています。通常なら7分台の曲ですが、相当凝ったアレンジでここでは15分以上をかけてこのワルツを紡ぎ出しています。まあ、このテンポでワルツを踊るのはちょっと不便で、多分ドレスの裾を踏んづけてしまいそうです。
レコードA面の最後はイッポリトフ=イワーノフの「酋長の行列」です。曲目のセレクトは多分ストコフスキーの意向なんでしょうが、ここでは4チャンネル効果を狙ってド派手な演奏をしています。
この時代はまだ、ハイドンのセレナードとして流通していたんですなぁ。まあ、普通の指揮者ならレガートを多用してロマンティックに演奏するのでしょうがストコフスキーはそんな下世話なことはしません。軽くいなしています。それでいて中間部は木管を多用して一味違うセレナードを披露しています。
このレコードわざわざコンサートマスターのシドニー・サックスがクレジットされています。この時代の臨時編成のこのナショナルフィルを引っ張っていた人物です。サンサーンスの「死の舞踏」では彼がソロをとっています。元々はヨゼフ・サコノフと言い、シドニー・サックスという名前でも活躍していたヴァイオリニストです。ロンドンのナショナル・フィルをチャールズ・ゲルハルトとともに設立しリーダーを務めました。また、ビートルズをはじめポピュラー分野での録音にも数多く参加しています。
このアルバムの中で特異なのはチャイコフスキーのOp.73でしょう。原曲は「D.M.ラートガウスの詞による6つの歌」でその6番目の「かつてのように私は一人に(solitude)」が演奏されています。もちろん編曲はストコフスキー自身で、歌曲をオーケストラ用に編曲しています。こういうセンスはストコフスキー独特のもので、いい曲はどんどん編曲をして録音しています。多分、この曲を録音しているのは、このストコフスキーとそれをオマージュしたアルバムを製作したホセ・セレブリエールぐらいでしょう。
このアルバムは4チャンネル効果を考えて選曲したストコフスキーのなかなか力の入ったアルバムになっています。
このアルバムは廃盤で今では配信のみで別のアルバム形態でリリースされています。