SKYのモーツァルト
曲目/
1 歌劇「フィガロの結婚」:序曲 03:53
2 アイネ・クライネ・ナハートムジーク:ロンド 02:41
3 歌劇「フィガロの結婚」:自分で自分がわからない 02:30
4 交響曲第34番:終楽章 03:46
5 交響曲第35番「ハフナー」:アンダンテ 05:21
6 歌劇「魔笛」:序曲 06:48
7 アイネ・クライネ・ナハートムジーク:ロマンス 05:32
8 ホルン協奏曲第4番変ホ長調:ロンド 03:34
9 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」:手をとりあって 02:56
10 音楽の冗談:プレスト 03:57
11 春への憧れ 02:53
12 トルコ行進曲 06:31
演奏/スカイ
Tristan Fry
Herbie Flowers
Francis Monkman
Kevin Peek
指揮/ネヴィル・マリナー
演奏/アカデミー室内管弦楽団
P:Dick Lewzey
E:Stieve Price
録音1987 CTSスタジオ,ロンドン
MERCURRY 833 908
その昔「Sky」というグループがありました。創設当時のメンバーであったクラシック・ギター界の大御所「ジョン・ウィリアムス」はもうこのアルバムでは参加しいませんが、アメリカやヨーロッパてはヒットした作品です。かつて巨匠セゴヴィアに師事し、60年代はクラシック・ギタリストとして活躍したジョン・ウィリアムズを中心に、78年にUKで結成されたプログレッシブ色の強いフュージョン・バンドがSkyでした。彼らが87年に発表した通算8枚目でラストとなるのアルバム『MOZART』です。彼らが英マーキュリーに移籍したことでこの共演が実現しています。79年からドラマーとしてバンドに参加していたトリスタン・フライによるモーツアルトの死後200年を記念した企画として始まり、自身もティンパニストとして在籍していたアカデミー室内管弦楽団とのコラボレーションの下に進められたプロジェクトです。主にスティーヴ・グレイがアレンジを手掛けたモーツアルトの楽曲を、バンドとフルオーケストラが共演しています。しかし、このころのマリナーは色々な方面にチャレンジしていますなぁ。
80年代に一時期を風靡したグループの作品ということで期待して購入したCDだったのですが、このアルバムはイージーリスニング・クラシックというおもむきでそれまでのクラシックを題材としながらも意欲的なアレンジで上品に洗練されすぎていて、いわゆるフュージョンサウンドとは一線を画しています。ギターのジョン・ウィリアムスの抜けた穴は大きいというところでしょうか。しかし、このアカデミー室内管弦楽団との競演盤は全編モーツァルトで固められコンセプトとしてははっきりしているし、これ自体聴く分には楽しめます。このCDが発売され頃にはモーツァルトの没後200年記念の企画が進行していたし、なにせMERCURRYの親会社フィリップスはその企画を一番推し進めていたのでこのアルバムはその流れの中の一環として企画されたような気さえします。ちなみに、マリナーがサントラを担当した映画「アマデウス」は1985年に公開されています。
こういったクラシックのアレンジ企画ものは当時ジャズからのアプローチとしてギュンター・ノリスやオイゲン・キケロなどが盛んにやっていたがその中でもクラシックの本格的なギタリスト「ジョン・ウィリアムス」が中心となってクラシックからポップスの世界へ逆アプローチしたことが斬新だったように思います。サウンド的にも「アリオラ」レーベルからオーディオ的にも満足するファイファイ録音で登場し、当時は45回転LPとして発売され話題になったものです。小生もベルリオーズの「断頭台の行進」と「怒りの日」を今でも持っていますがすばらしくスリリンクな仕上がりになっています。CDで聴くより遥かにいい音で今でも手放せないでいます。
さて、このCDはモーツァルトの名曲を11曲ピックアップして演奏しているが概して交響的作品との競演よりもオペラのアリアやピアノ曲のアレンジの方が楽しめるようです。「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」からは2曲選ばれていますが「ロマンツァ」の方はケヴィン・ピークのギターをフューチャーしてしっとりとした曲調でまとめられている。交響曲からはあまり馴染みのない第34番と第35番「ハフナー」がチョイスされています。前者は畳み掛けるようなドラムスのリズムをベースにフルオーケストラを使って快活に仕上げられています。ハフナーからはアンダンテをアレンジしているのでこちらはしっとりとしたピアノがシンセサウンドのベースの上を静かに謳い始め、やがてギターが加わるのですが、まるでピアノ協奏曲を思わせるアレンジで意表をつかれます。「魔笛」の序曲は原曲のオーケストレーションを生かしながら一番従来の「スカイ」のスタイルに近いアレンジで何かほっとしたものを感じます。ちょっと異色なのは8曲目のホルン協奏曲で、ここではホルンの代わりにハーヴィのチューバがソロ楽器としてフューチャーされているて、一瞬この早いパッセージをチューバで?とびっくりさせられるがここはご愛嬌でしょうか!?。この曲だけは単にテューバ協奏曲にアレンジされているだけでスカイとしての演奏ではないが思わず微笑んでしまう。憎い選曲です。チェンバロを効果的に使った「音楽の冗談」はコミカルなこの曲の特性をうまく引き出したアレンジで楽しめるし、木琴で始まる「トルコ行進曲」もしゃれたアレンジでジブシー風のヴァイオリンを挟んだり一度終わったと見せかけてオマージュ風のエピロークを付け加えるなどして最後を飾るにはふさわしい仕上がりになっています。
バックのマリナーの指揮するアカデミー室内管弦楽団の演奏はいつもの生真面目な表情とは違いリラックスしてモーツァルトの音楽を楽しんでいる演奏でスカイを好サポートしています。