渡 邉 暁 雄
music gallery wide
写真:木之下晃
文:船山隆、渡邉信子
日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団など様々な楽団の音楽監督、常任指揮者を担当した渡辺暁雄。90年に71歳で亡くなるまでのステージでの厳しい表情や、自宅でくつろぐ姿などを収める。---データベース---
名古屋市の中区には名古屋市立の図書館がない代わりに、愛知県の図書館が2つあります。一つは丸の内にある「愛知県図書館」ですが、もう一つ栄のど真ん中に「愛知芸術文化センター・アートライブラリー」というものが存在します。
愛知芸術文化センターへのアクセスは地下鉄からだとオアシス21の地下からのアクセスか、この南正面の2階からアクセスする人が多いと思いますが、本来の1階正面はこの左側にあります。ただ、駐車場への入り口がメインになっていて、ほとんど人通りはありません。しかし、ここから入館するとそのすぐ左手にそのアートライブラリーがあります。ここでは図書・楽譜の館外貸出を行っていますが、愛知県図書館の貸出カードは利用できず、新たにここ専用の貸出カードを作成する必要があります。また、どちらにお住まいの方でも1人3冊以内、15日間借りることができますが、県図書館と違い2週間というのがちよっとネックになっています。また、利用できる時間も違うので注意が必要です。
【開館時間】
火~金曜日 午前10時~午後7時
土曜日・日曜日・祝日 午前10時~午後6時
【休館日】
毎週月曜日および毎月第3火曜日(その日が祝日または振替休日に当たるときは開館し、その翌平日に休館します)
年末年始(12月28日~翌年1月3日まで)
整理期間(年間15日以内 *例年3月)
地下2階からの吹き抜けの1階にある芸術の図書館
ここがアートライブラリーの入り口です
取り上げた本はこの図書館に架蔵されていました
ただアートライブラリーと言うだけあって、芸術に関する資料を広く収集し、公開しています。美術・音楽・演劇・映画に関する図書や、展覧会カタログ・楽譜・雑誌などの文献資料のほか、クラシック音楽を中心としたCD・レコード、舞台芸術から音楽、美術作品などの映像ソフトなども収集しています。資料は公開されていますが、貸出しができるのは本と楽譜だけに限定されています。
前置きが長くなりましたが、今回取り上げる「music gallery wide 渡邉暁雄」ここで借りたものです。1996年に出版されたものですが、ついぞその存在は知りませんでした。もともと、渡邉暁雄氏は日本フィルハーモニー交響楽団と結びつきが強かった人ですが、NHK交響楽団とは違いあまり地方では繋がりが薄いオーケストラでした。小生なんかは「レコード芸術」を中学生ぐらいから読んでいましたのでその存在は知っていましたが、演奏に触れる機会は全くなく、いつ頃がわかりませんが地元の放送局で「サンデー・コンサート」をたまに見かけたことがあります。それも、例の「日フィル争議」があったことで、ますます地方とは縁遠い存在ではありました。ネットで調べても彼の写真は数えるほどしかありません。そんな彼の写真集です。珍しい写真が満載です。
ヘルシンキ 1989
ヘルシンキフィル 1980
マルケヴィチと
ストコフスキーと
バーンスタインと
ショルティと
ヘルシンキフィルとヴァイオリンは古澤巌 1982
3人の子供と信子夫人
この本巻末に彼の年譜が掲載されています。渡邉暁雄の指揮活動は
1.東京フィル時代 1953-55
2.第1期日本フィル時代 1957-68
3.京都市交響楽団時代 1970-1972
4.東京都交響楽団時代 1972-78
5.第2期日本フィル時代 1978-84
と一つのオーケストラに真摯に向かい合っていることがわかります。柔軟な風貌でしたが男気があったんでしょうなぁ。自分が育てた日本フィルが分裂した時、2/3以上の団員が残った日フィルに舞い戻り支援を続けました。調べた限りでは新日フィルへは登壇していません。そして、ドイツ古典派の作品は殆ど録音していないにもかかわらず、シベリウスについては2度全集を録音しています。反対に新日フィルを率いた小澤征爾はシベリウスの交響曲は一曲も録音していません。面白い構図ですなぁ。
さて、下は最初の全集から交響曲第3番を取り上げます。こシベリウスの演奏について、渡邊氏は京都市交響楽団の常任時代の公開トークで次のように述べています。
「バルビローリの演奏は柔らかく抒情的すぎる、カラヤンのは響きが豊かすぎて恰幅が良すぎる。マゼールのはあまりに劇的でアクセントが強すぎる。」とあの穏やかな表情で明確に批判した後、だから私の演奏がとはもちろん語られなかったが、次のように語った。
「フィンランドは確かに極北の地であって、気温は非常に低いのですが、強風に見舞われたり暴風に吹き荒らされたりすることは少なく、意外におだやかに感じられる機構なのです。るそしてフィンランド人の人々の性格もとても穏やかで、話す時も大声を張り上げたりすることはほとんどなく、小さな声でボソボソと必要なことだけを話すといった感じなのです。シベリウスの音楽もオーケストラ全体で盛り上がるというより、アルパートが演奏しているときは他のパートが休んでいるといったことが多く、コンサートで聴くと散漫に「見える」ことが多いのかもしれません」と付け加えた。---オーケストラから時代が聴こえる―西崎専一風媒社---
ということを頭の片隅に聴いてみましょう。納得の演奏です。