ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎 | geezenstacの森

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ボストン美術館 浮世絵名品展

北 斎

 

 

 このブログでは今まで近くに「貨幣・浮世絵ミュージアム(旧貨幣資料館)」があり、そこでは所蔵する歌川広重の浮世絵を中心にコレクションされた1800点もの作品が公開されていることもあり、頻繁に取り上げてきました。ただ、北斎は周辺の小説とか関連本で知ったいるのみでした。今回、愛知ムント署に出向いた時、その蔵書にこの一冊があったので借りることにしました。国内にある作品ならほとんどネットで目にしていて、30回改名したとか、93回転居したとかという情報も仕込んでいましたが、そすが海の向こうに所蔵され非公開であった作品群は目にしたことがありませんでした。そんなこともあり、この2013年から翌年にかけて全国で開催された「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」は目からウロコでした。この本はその時の目録でもあります。

 

「世界で最も有名な日本人画家」といえる北斎ですが、学術的な見地からなる北斎展を初めて実施したのは、実はボストン美術館。アーネスト・フェノロサのキュレーションのもと、1892~93年に"HOKUSAI AND HIS SCHOOL"展が開催されたのが嚆矢なのです。北斎=風景版画家というイメージを定着させたのが、「冨嶽三十六景」を中心としたシリーズでしょう。61歳から74歳までの為一を号していた時期の作品です。この本ではそのおなじ為一の時期に描かれ、風景版画と並んで評価が高い花鳥図や、画狂老人卍を号した晩年に描かれた最後の揃いもの「百人一首うばが絵とき」が紹介されています。あまり知られていない役者絵や、五枚続の風俗絵(北斎は続絵をほとんど作っていません)なども含め、70年に及ぶ北斎の長い画業が一覧できます。

 

最初期の三代目瀬川菊之丞の傾城あづま

新版浮絵 化物家鋪百物語の図

 

羽根田弁天之図

新版浮絵 両国橋夕涼花火見物之図

 

吉原遊廓の景 5枚綴りの一枚

 

組み上げ灯篭 浅草寺雷門

 

百人一首右派替え時 小野小町 

小野小町の句は

 

 花の色はうつりにけりないたつらに わが身よにふるなかめせしまに

 

 第2章は「華麗な摺物と稀覯本」。摺物(すりもの)は特別注文で制作された非売品の版画で、大量に生産される浮世絵版画とは違い、高級な用紙と精緻な技巧が凝らされています。ここでは摺物17件(19点)と版本7種が取り上げられています、

 

 

元禄歌仙貝合 ますほ貝

 

36枚のシリーズ摺物の一枚、センスは薄のデザイン、中央は武蔵野から見る富士山

 

花の兄

 

 「花の兄」とは、花の中で最も早く開花する梅のこと。すなわち、春興の狂歌帖です。完本で伝わるのは、ボストン美術館が所蔵する本作のみ。北斎の挿図は、遠方に凧があがっている事から正月の風景と分かります。

 

 第3章は「肉筆画と版下絵・父娘の作品」。資料性が強い北斎の作品6点とともに、展覧会最後には北斎の三女・阿栄(おえい)の作品も収録されています。いま北斎曼荼羅という作品を読んでいますが、その作品にもこの娘の応為が登場します。

 離縁した後に北斎宅に戻り、応為(おうい)の号で版本の挿絵や肉筆画を描いた阿栄。《三曲合奏図》は美人図を得意とした応為の代表的な作品で、フェノロサによる120年前の北斎展でも出品。フェノロサはこの展覧会で最も注目される作品だとして絶賛しています。

 

三曲合奏図

 

柳に烏図


この作品には「画狂老人」の落款があります。

 

 江戸後期に活躍し、かぞえ90歳で没するまでの約70年間、ひたすら絵の道を突き進んだ北斎。役者絵、美人画、花鳥画、風景画など様々なテーマを描き、伝統や流派に縛られなかったことも大きな魅力です。ほとんどの作品が日本初公開というこの画集には、優れた日本美術のコレクションで知られるボストン美術館所蔵品。ほとんどが近年まで門外不出の未公開だったため、色の劣化が少ないのが特徴。確かに、今摺られたばかりのように鮮やかな色彩のさくひんで、北斎の多彩さが十二分に感じられます。

 

 

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