更に古くて素敵なクラシック・レコードたち | geezenstacの森

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更に古くて素敵なクラシック・レコードたち

 

著者/村上春樹

出版/文芸春秋社

 

 

 村上春樹のクラシック音楽談義第2弾。104曲のクラシック音楽を取り上げ、さまざまな演奏家・指揮者のアナログ・レコードを紹介し、それぞれの演奏の特質について語る。美しいジャケットもオールカラーで掲載。---データベース---

 

 もう一年以上前になりますが、この本の前作となる「古くて素敵なクラシック・レコードたち」を取り上げています。よほど売れたんでしょうなぁ。通常ではこんなレコード時代のクラシックの個人の趣味本なんてうれ養いですからねぇ。2匹目の土壌を狙っていますから内容は更にディープになっています。

 

目次

二種類の好き嫌い
パガニーニ 24のカプリース(奇想曲)作品1
リヒアルト・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」作品40
J・S・バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001‐1006(上下)
ベルリオーズ「イタリアのハロルド」作品16
ベルリオーズ 「幻想交響曲」作品14
ボッケリーニ チェロ協奏曲第9番 変ロ長調
チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調 作品36
プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26
ラヴェル「夜のガスパール」〔ほか〕

 

 今はいい時代になったものです。ここに登場するレコードの音源はかなりの確率でYpuTubeにアップされています。そんなことで該当の音源を聴きながらこの本を読んでみることをお勧めします。この続巻では104曲が取り上げられていますが、中には手持ちのレコードが多いのか一つの曲を上下の2つのパートに分けて紹介している曲があります。まあ、こういう聴きかたをすれば読了までに2-3ヶ月かかるのではないでしょうか。上下のパートがある作品は、

 

・バッハ/無伴奏パルティータ

・シューマン/ピアノ協奏曲

・スカルラッティ/鍵盤ソナタ集

・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番

・ショパン/前奏曲集

・ブルックナー/交響曲第7番

・モーツァルト/協奏交響曲

・リスト/ピアノソナタロ短調

・シューマン/クライスレリアーナ

・グリーグ/ピアノ協奏曲

・ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番

・ショパン/スケルツォ第3番

・ブラームス/歌曲集

・モーツァルト/弦楽四重奏曲第17番「狩」

・ドヴォルザーク/チェロ協奏曲

 

となっています。これらの曲目を見ると村上氏の育った環境と時代の一端を伺うことができます。これらの音源が当時大量に発売されたものなのでしょう。まあ、村上氏には及びませんが、小生のコレクションもやはりこんな傾向です。ひとつ、ドヴォルザークの交響曲第8番では。次の演奏が取り上げられています。

 

・ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団 cbs

・ブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団

・イシュトヴァン・ケルテス/ロンドン交響楽団

・ズデニェク・コシュラー/スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

・ヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

 

 というアルバムが取り上げられています。これ、小生の手持ちのレコードと一緒です。この中で、コシュラーのものは日本ビクターの発売ですが、レーベルとしてはチェコの「オーパス」というレーベルでしたから、あまり大きくは取り上げられなかったものです。ですが、小生はコシュラーが好きでしたから持っていましたし、この曲を一番最初に所有したのはワルター盤でした。輸入盤を積極的に集めていましたからセル、ケルテスはそういう形で入手しました。一番最後に入手したのはノイマンのもので、こちらは中古盤で入手しています。で、この中からの一枚では村上氏はセルの演奏をチョイスしています。この辺り、小生は最初に聴いた印象が強いのでワルターが一番です。このあたりの感覚は個人差によるものですから、その人の置かれた環境が大きく影響すると思いますが、これらの演奏を所有しているということで村上氏にリスペクトしてしまいます。

 

 実際この作品は雑誌「ブルータス」の2021年11月1日号に掲載されたもの加筆されて単行本化されたものです。もともとは、「古くて素敵なクラシック・レコードたち」につづいて22曲分が増補分として掲載され、「村上RADIO」で放送された(第1回~第21回)すべての楽曲が各回ごとにまとめられて2ページの一覧にもなっていました。こんな経緯から補遺みたいな形ででたときから,続編がでるだろうなとは思っていたのでこの続編の刊行は予想されたものでした。まあ、「村上ラジオ」を聞いていればいかに村上 春樹と音楽が不可分なのか改めて印象付けられるというものです。


 レコードについて語っているということは、スタンスは前著と同じです。ただ、デジタル録音も含まれていてCD, LP 併売時代の80年代の音盤も多少含まれている印象はあります。それにしても100曲書くとなると,やはり紋切り型の発言が多くなるのが少々気になるところです。

 

 小説とは違いするすると読み進めることはできませんが、一つ一つ納得しながら読み進めると蘊蓄のある至福な一冊となるでしょう。是非とも演奏を聴きながら読むことをお勧めします。