名古屋市高年大学鯱城学園 第142回公開講座
北斎か、広重か〜
くらべて際立つ2つの個性〜
たまたま、名古屋市の広報で上記の公開講座が開催されるということで出かけてきました。初めて訪れる場所で、御園座の少し南にあります。
個人的にも浮世絵は好きでこのブログでも頻繁に取り上げています。広重の「東海道五十三次」などめぼしい版はすべて取り上げているのではないでしょうか。
ところが振り返ってみても北斎の浮世絵展には一度も出かけていないのです。そんなこともあり、この公開講座に興味があり、出かけてみました。
ライフ誌が西暦1000年から1999年の1000年で最も重要な人物を1999年に発表していますが、その中で唯一選ばれた日本人が葛飾北斎でした。なおかつ、画家で選ばれているのはレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、范寛、ピカソ、そしてサンティだけです。ゴッホもルノワールも選ばれていないんですなぁ。ということでは、広重は北斎のライバルではありません。
よく知られていることにゴッホの絵には浮世絵が取り入れられていたり、模写した作品も存在しますが、それらをチェックしていくと使われているのは多くは広重の作品なんですなぁ。ちなみに北斎の絵を模写したものは一枚もないようです。ゴッホは広重の穏やかな描写ながら情景に応じた描写や自在な視点、遠近感に魅せられたのでしょうかねぇ。
数万枚の作品を残した北斎はデッサン力や作品の隙のない構成にとっつきにくいものを感じたのかもしれません。彼の残した北斎漫画などはその最たる例なのでしょう。ただ、天才北斎は90年以上生きた人ですから、その技術の進歩は波の形にもうかがい知ることができます。
北斎「おしをくり はとう つうせんのづ」45歳ごろ
北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」70代前半
そして、絵画の世界だけでなく枠祭は音楽の世界や陶芸の世界をも魅了し影響を残しています。
ドビュシーの「海」の初版の楽譜
浮世絵や北斎の影響は、絵画にとどまらずそのほかの芸術にも派生していきます。たとえば、ガラス工芸家や陶芸家などとして知られる芸術家、エミール・ガレ(1846-1904)。ガレは、自然の中で咲く花々や生き物を、非常に繊細な表現で自身の作品へと落とし込んでいます。
北斎「桔梗に蜻蛉」
ガレのデザインした花瓶と家具
こういう話で1時間30分の講演がありました。下が当日のレジメです。
広重と比較することで、北斎の抜きでた画力の才能を改めて再認識した次第です。
なを、この講演は8月10日から9月9日までオンライン配信が行われる予定です。