名フィル演奏会 第82回市民会館名曲シリーズ | geezenstacの森

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第82回市民会館名曲シリーズ

欧州音楽紀行II フランス

曲目/

1.ビゼー:交響曲ハ長調 

2.ベルリオーズ:幻想交響曲 

 

指揮/川瀬賢太郎
演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

会場/名古屋市民会館

 

 この日はどんよりと曇った1日でしたが南から湿った空気が流入して、名古屋は30度を超えました。真夏日です。そんな日に清涼感あるヒゼーのハ長調の交響曲と、雰囲気ぴったりのベルリオーズの幻想交響曲はぴったりのプログラムでした。おりしも、金山駅のコンコースの天井からはこの公演を知らせる懸垂幕広告が下がっていました。

 

 

ビゼーは指揮棒なしで演奏。ハープは4台使用。こだわり、名フィルでは初の幻想、ビゼーも久しぶりの演目。

正指揮者の選択は、フランス。ベルリオーズとビゼーの二大交響曲です。「幻想交響曲」は、川瀬賢太郎が長年名フィルで指揮することを強く望んでいた作品で、ついに実現します。

 

 

 

 今回の演奏会のステージです。左にハープが4台並んでいます。こんな幻想は初めてですがベルリオーズの本来の指定は確かに4台になっています。他のセクションの配置と陣容は以下のようになっています。

 

  

 ビゼーは第54回定期で演奏されて以来の再演になります。ビゼーの「ハ長調」は、17歳で作曲され、完成から80年・亡くなって60年経ってようやく初演された、あまりにも愛らしい作品で、欧米ではよくバレエ化されて舞踏作品として演奏されることもしばしばあります。

 

 今回指揮者の川瀬賢太郎は、この曲を指揮棒無しで演奏しました。最初は神奈川フィルとの演奏で指揮棒を折ったというエピソードが頭の隅にありましたからまた指揮棒を折ったんかいなと思ったほどです。

 

 

 そういうこともあり、10本の指で華麗に踊りながらの演奏です。第一楽章からアクセントを強めに押し出した演奏は、まさに踊るようなリズムで聴く演奏というよりも、見る演奏を楽しみました。この日の演奏を聴いて小澤征爾が若かりし頃フランス国立管弦楽団と録音したこの曲の演奏がまさに頭をよぎりました。まさに下記のような演奏でした。

 

 

 休憩を挟んでこの日のプログラムの後半はベルリオーズの幻想交響曲です。第1楽章序奏はじっくり構えたテンポで開始しました。昔はクリュイタンスにしろミュンシュにしろだいたい13分台で演奏していましたが最近の指揮者はじっくりと15分以上をかけて演奏しているものが増えました。先にこのブログで取り上げたインバルの演奏もそうでした。幻想交響曲自体がアヘンで冒頭から幻想の世界をさまようのですから遅いテンポの中でいかに狂気の世界を表現するかは本来は難しいものですが、あえて果敢にそれにチャレンジしていた姿勢は感心しました。個人的にこういう演奏が好きですから、もう第一楽章から食い入るように聴きました。この楽章はいわば緩―急―緩の構成を採っているだけに、安らぎを求める終結の個所が、情熱的な狂乱のあとの自然な帰結という印象を生むような、有機的な結びつきを持つテンポの設定になっていていて、納得の解釈でした。

 注目の第2楽章は、4台のハープをうまく生かして優雅な舞踏会の世界を組み立てていました。変にワルツのテンポをディフォルメしたりせずにさりとて仰々しく奏でるわけでもなく、ごく自然に音楽を歌っていました。どのみち現実の世界の音楽ではないので、基本淡々ととしたイメージで、その中に木管のフレーズだけはくっきりと浮かび上がらせるという対比が見事でした。

 

 それに引き続く第三楽章も荒涼とした野辺の風景をやはり、木管楽器類をうまく踊らせていました。前半三楽章は静をイメージした音楽ですが、この部分をじっくり描いていたのは小生の思い描く幻想とイメージがマッチしていたのでいたく気に入った次第です。この楽章では4台のティンパニが使われますが、奏者が右からステージに登場し、左にはけて言ったのがちよっと気にかかりました。

 

 一番盛り上がるのが第四楽章と第五楽章なんでしょう。ここでも、川瀬賢太郎の演奏する「断頭台への行進」はおどろおどろしいほどのゆっくりとしたテンポでした。ここも小生のチェックポイントで、断頭台に引きずり出されるのですから速いテンポはありえないですからね。そういう部分でもゆっくりしたリズムの中で狂気の行進が描かれました。速い演奏では興ざめです。


 唯一残念だったのは第四楽章と第五楽章の間はアタッカで続けて演奏して欲しかったのですが、ここはしっかりと間をとっていました。ところで上はステージ写真で金が写っていないのが気になりました。第五楽章は鐘が大活躍するはずですからね。毎回、名フィルのツィッタ〜をフォローするのですが、今回もそこにこの鐘の謎が取り上げられていました。

 

 

 なんと舞台裏にセットされていたんですなぁ。それもチューブラーベルで誤魔化すことが多いのですが、ちゃんと2つの鐘が用意されていました。会場ではこの鐘の音がちようどいい音量で響き渡りました。

 

 
 今回のコンサート、前半は小澤征爾を、後半はエリアフ・インバルを彷彿とさせる演奏で非常に楽しめました。