米Schwannのレコードカタログ
1979年4月号
前回はイギリスの「GRAMOPHON」のカタログを取り上げましたから今回はアメリカの「Schwann」です。こちらは月間でしたから何冊もありましたが、手元に残しているのは当時の最新号のこれ一冊のみです。月刊でしたから価格も一冊$1.25でした。ただし、「Schwann」には期間の「Schwann2」なるものも発行されていました。最初はレコードだけのカタログでしたが、この時代はレコードとテープを扱っていました。
面白いもので、日本の当時のレコ芸といっしょで、裏表紙はロンドン−デッカの広告が、また、表紙裏はRCAが広告を出しています。
表紙裏のRCAの広告
表紙だけは紙質がいいのでバックが白で抜けています。この時代すでにレヴァインがマーラーはシリーズ中盤に差し掛かっていました。でも、オーケストラはバラバラでついに全集には至っていません。RCAらしい仕事です。レヴァインはオペラの指揮者というイメージが強く、ここでも「アンドレア・シェニエ」で時を撮ったものが登場しています。バレエのボックスセットはアメリカの作曲家の作品を集めています。多分日本では出ていなかったのではないでしょうか。この時代のルービン種テインは小生にとっては過去の人でこんなアルバムがあったとは知りませんでした。
これが裏表紙のロンドンの広告です。多分毎号、下は余白の半分のみの広告を出していました。メータ、アシュケナージが二枚づつ、そして真ん中にはお得意のオペラと1979年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートのアルバムが告知されています。ボスコフスキー最後のアルバムですが、初のデジタルレコーディングということを大きく謳っています。それにしても今とは違い発売スケジュールもゆっくりしたものでした。メータってラローチャとベートーヴェンのピアノ協奏曲を録音していたんですなぁ。でも、話題にならなかったと思います。それはシューベルトも一緒でイスラエル・フィルとこんな録音を残していたことすら記憶にありません。アシュケナージはデッカのバレンボイムといった感じで当時は重宝がられていました。
この号でCBSは3ページにわたりアイザックメスターンのレコードを紹介しています。1ページ目では新譜です。メータ、プレヴィン、スクロヴァチエフスキー、シュナイダーと共演したアルバムを取り上げています。実のところこの当時メータはすでにニューヨークフィルと録音していたんですなぁ。1978年の録音です。2ページ目はスターンの旧録音版を集めています。恋歌レーベルのオデッセイのアルバムです。スターンがヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番をオーマンディと録音していたとは知りませんでした。ところがこの録音ネットを探しても見つかりません。多分日本でも発売されたことがないのではないでしょうか。ネットではモントゥー/ボストン響とのモノラル録音は確認できましたが、こちらは全く存在が確認できませんでした。多分国内版も出たことがないのではないでしょうか?
3枚目は1978年録音のロストロポーヴィチ/ナショナル交響楽団とのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。当時の最新録音でしたが注目された記憶はありませんなぁ。
ポリドールの広告です。上にはオーケストラもの下にまとめて室内楽作品です。面白いことにカラヤンの新譜はありません。ジュリーニ、アバド、ベームのものばかりです。カラヤンはこのじまデジタルを見据えてレコーディングを控えていたのでしょうか?
フィリップスはハイティンクがトップに来ていますが、新譜はいささか地味です。
反対に元気だったのがテラークです。デジタル時代到来とばかりにロバート・ショウの「火の鳥」をアピールしています。
さて、肝心のカタログです。上はインデックスの説明です。ボールド表記は擬似ステ、◆は廃盤予定商品、▲はアメリカで普及していた8トラカートリッジ、(Q)は4チャンネル録音、●はカセット表示ということです。その下は広告のインデックスとなっています。右はセクション別のベージ索引で、面白いのは直近2ヶ月のポップスの新譜も収録しているところです。
こちらはレコードの定価表です。これで当時の新譜はレギュラーが$7.98だったことがわかります。面白いのはEMI系のAngelは$7.98ですが、Captolは$6.98と安いのです。それに比べて、DGGやPhilipsは$8.98と1ドル高い設定です。これに対してLONDONは$6.98ですから当時も安く売っていたことがわかります。この時代米DECCAはレーベルとしてはもうなく、LONDON/DECCAというレーベルがあったくらいです。こちらはさらに安く$5.98となっています。一体どんなレコードがリストアップされていたんでしょうなぁ。廉価版のOdessyやロンドンSTSシリーズ、Seraphim、そしてRCAのVICSシリーズ、Turnabout、Nonsuchは全て$3.98でした。
アメリカは再販制度がありませんでしたから、価格は自由設定です。ですからカットアウト盤なんかは角を切り取って安売りの在庫処分は当たり前でした。
こちらは4チャンネルレコードの価格表です。日本ではバカ高い価格で売られていましたがアメリカではどの方式も基本はレギューラー盤と同じ$7.98です。ただ、CBSはSQ方式、RCAはDC-4方式でしか発売していません。その中でポリドールだけが$9.98という価格設定になっています。こうしてみると陣営が鮮明に分かれていることがわかります。日本のサンスイが提唱したQS方式はメジャーレーベルが少ないのが解ります。目立つのはTurnaboutはここでも$3.98とブレていません。唯一A&Mだけは全方位外交で全ての方式で発売しています。消費者サイドに立ったメーカーだったんですなぁ。日本にはこういうメーカーは存在しませんでした。ということで4チャンネルレコードはすぐに共倒れで消滅しています。
そういうSchwannもCD時代には商売としては成り立たなくなって2002年に倒産しています。