9月23日午前10時ごろ、JR名古屋駅新関西線ホームの12番線に新型特急車両「HC85系」が試運転で入線してきました。見慣れない車体だなぁと思い、よく見るとパンタグラフが無いではないですか。そういえば近々新型車リョゥの投入という記事を新聞で読んだことを思い出しました。
名古屋と飛騨高山方面を結ぶ特急「ひだ」、紀伊半島方面を結ぶ特急「南紀」の次期車両として使うことを見据え、開発されたものです。 特急「ひだ」「南紀」が走る高山本線と紀勢本線は、線路上空に車両へ電気を供給する架線がなく、一般的な電車は自走できない「非電化区間」です。そのため「ひだ」「南紀」では現在、ディーゼルエンジンで直接的に車輪を回転させる方式のキハ85系気動車(ディーゼルカー)を使用しています。
この新たに登場したHC85系は、車両に発電機があるため非電化区間も自走可能。形式名の「HC」は「Hybrid Car」を表し、「85」には、1989(平成元)年の登場以来30年にわたり走り続けてきたキハ85系から技術革新した車両、という意味が込められているそうです。
特徴はまず、「ハイブリッド方式の鉄道車両」なことが挙げられます。搭載するディーゼルエンジンの回転で発電した電気と、ブレーキ時にバッテリーへためた電気を用い、モーターを使って走るもので、かんたんにいえば「走行用の発電機とバッテリーを搭載した電車」とも表現できます。この車両の特徴は、
・トルクコンバータ(変速機)といった気動車特有の部品が不要になる。
・ほかに多数存在する電車と同様の機器を使うことで、メンテナンスの負荷やコストを削減できる。
・ギアチェンジがなくなり、乗り心地が向上する(キハ85系は変速1段・直結2段のトルクコンバータを使用)。
・エンジン数の削減(1両あたり2基から1基へ)、駅停車中のアイドリングストップなどで静粛性や乗り心地が向上する。
・バッテリーの併用で燃費が15%向上する(環境負荷が減る)。
ただ現在、日本のハイブリッド式鉄道車両で、120km/hの営業最高速度を実現しているものはありません。 そうしたなかJR東海は、ハイブリッド方式の旅客用鉄道車両で国内最大容量のバッテリーを採用するなどし、HC85系でも優れた動力性能――国内初となるハイブリッド車両による120km/hでの営業運転を目指すとしています。
HC85系は今後、1年間を目途にハイブリッド技術の確立に向けた基本性能試験、長期耐久試験などを実施し、その試験結果を踏まえて、2022年度を目標に量産車を投入することが検討されています。