ありそうで無さそな同曲異演のコンピュレーションCD | geezenstacの森

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ありそうで無さそな

同曲異演のコンピュレーションCD

 

曲目/チャイコフスキー

ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35

ヴァイオリン/チョン・キョンファ

1.シヤルル・デュトワ/モントリオール交響楽団

 録音 1981/07 聖ユスターシュ教会,モントリオール

 P:レイ・ミンシュアル

 E:ジョン・ダンカーリー

2.アンドレ・プレブン/ロンドン交響楽団

 録音 1970/06 キングスウェイ・ホール,ロンドン

 P:クリストファー・レイバーン

 E:ケネス・ウィルキンソン

 

 

 カラヤンのすべてのCDの中で一番売れたのは「アダージョ・カラヤン」だそうで、本人が傾注していたベートーヴェンでも、オペラでもなかったんです。「アダージョ・カラヤン」はこの1タイトルで、日本だけで100万枚を売り上げ、全世界では500万枚の売り上げを記録したそうです。クラシックとしては異例の大ヒットなのですが、それがコンピュレーション・アルバムだったとはさぞかし天国の本人もびっくりしていることでしょう。

 

 昨今はCDが売れなくて業界の成績は低迷していますが、そりゃあ代わり映えのしないクラシックベスト100だとか○○大全集とかの企画ではいささかマンネリで、マニアとしてはとても手を出せるものではありません。出版社とて同じことで、丁度このタイミングで小学館が「ウィーン・フィル 魅惑の名曲」なんてものを発売しましたが、これとて、以前アスキーが2000年に出した「ウィーン・フィル世界の名曲」の焼き直しでしかありませんなぁ。そうそうレコ芸の1月号の新譜を見ていてピックリしました。交響曲の部分の新譜では取り上げられているCD全部がライブ録音の音源です。もうメジャーレーベルからしてスタジオ収録で手間隙かけて制作する時代ではなくなっているんですなあ。まさにトホホの世界です。

 

 さて、先程の「アダージョ・カラヤン」、このCDはヒーリング・ミュージックのブームにも乗ったんでしょうが、時代を読んだ企画の上手さとニーズが合致した成功例でしょう。で、今回取り上げたのは同じコンピュレーションでも切り口が違います。このCDは実在しません。一種のドリームCDなんですが、架空の音源を使ったものではありません。しかし、こういう切り口で制作されたCDはまだないのではないでしょうか。似たようなものはありますよ。ムソルグスキーの「展覧会の絵」のオーケストラ版とピアノ版をカップリングしたものとか、以前RCAから発売された演奏ものと解説ものを組合わせた名曲ものとかが存在しました。しかし、一人のアーティストにこだわったこういうコンピュレーションものはなかったように思います。マニアなんか飛びつく企画の様な気がします。一枚のCDで新旧の比較を楽しむことが出来るのですから。

 

 この例に漏れずユニヴァーサルなら、デッカ時代のカラヤンとDGのカラヤンの音源を組み合わせれば面白いCDが続々と出来そうな気がします。一枚のCDで、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」がウィーン・フィルとベルリン・フィルの演奏で聴けるなんて嬉しいではないですか。ソニー系列でも出来まっせ。オーマンディのサンサーンスの交響曲第3番なんかCBS時代とRCA時代の音源があるわけですからゴージャスなCDが出来ますわな。これ、いけるンとちゃいますか?

まあ、メーカーが作らないから、個人がパソコンでこういう組み合わせのCD-Rを作っちゃうんですがね。

 

 でも、本来こういう聴き比べが一枚のCDで出来たらマニアならずとも喜ぶんと思うんですけどねぇ。SHM-CDとかブルースペックCDなんて日本の中だけでこちょこちょやるんじゃなくてこういう遊び心を持ったコンピュレーションCDを企画出来る会社はないんでしょうかね。

 

ちなみに今日取り上げたチョン・キョンファのチャイコフスキーのCDは過去にこちらで取り上げています。

 

プレヴィンとの共演の演奏は彼女のデビュー盤です。デビュー当時の初々しさと、年輪を重ねて着実に成長したデュトワとの余裕の共演をこうやって一枚のCDにして聴き比べてみると、この11年間での彼女の成長を如実に確認することが出来ます。