オーマンディの
「大峡谷」とスウェーデン狂詩曲
曲目/
グローフェ/組曲「グランド・キャニオン」
1.Sunrise
2. Painted Desert
3.On the Trail
4.Sunset
5.Cloudburst
6.アルヴェーン/スウェーデン狂詩曲第1番「夏至の徹夜祭」Op.19*
ヴァイオリン/ジェイコブ・クラチマルニック
指揮/ユージン・オーマンディ
演奏/フィラデルフィア管弦楽団
録音:1957/12/23
1959/12/12*
P:トマス・フロスト
英CBS 61266
さすが、英CBSからリリースされたことだけあります。アメリカ本国や日本では絶対こういうカップリングはありえないでしょう。フューゴ・アルヴェーンはスウェーデンはストックホルム生まれの作曲家です。このアルバムに収録されているのは彼の代表作とも言える「スウェーデン狂詩曲第1番「夏至の徹夜祭」 Op.19」という作品で、全3曲ある狂詩曲の第1番です。よく知られている理由のひとつにテーマがNHKの「今日お料理」のテーマ曲に似ているからです。このアルヴェーンについてはこちらでも取り上げています。
ちなみに「今日の料理」のテーマはこちらです。
で、アルヴェーンの「スウェーデン狂詩曲」です。どちらも20世紀初頭の名曲です。イギリスからスウェーデンは近い距離ですからカップリングせしてあっても違和感はないんでしょうなぁ。オーマンディはこの曲はCBSにしか録音していません。しかも、モノラルを含めるとなんと3回も録音しています。 ステレオ初期の録音ですが、素晴らしい音で録音されています。この曲はどちらかというとポピュラーでも数多く取り上げられていて、イージーリスニングの世界では、マントヴァーニを筆頭にパーシー・フェイス、フランク・チャックスフィールド、スタンリー・ブラック、フランク・プゥルセル、アルフレッド・ハウゼetcと取り上げています。それだけ魅力的な旋律なんでしょうなぁ。
さて、本題のグローフェの「大峡谷」です。フィードラーを取り上げたときに主だった録音をピックアップしてリストにしていますが、この曲はステレオ効果を発揮できる作品として各社が取り上げこのステレオ初期の時期に録音していますが、その中では華麗な音の響きという点ではピカイチです。さすがフィラデルフィアサウンドと謳われただけのことはあります。ストリングスの響きは他の追従を許しません。
当時のCBSはこのオーマンディ/フィラデルフィアを筆頭にバーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック、セル/クリーヴランドと抱えていましたが、サウンド的に優れていたオーマンディに白羽の矢を立てたんでしょうなぁ。面白いことに、この時代のバーンスタインは注目はされていましたが大衆性という意味ではオーマンディのほうが上だったんですなぁ。セールス的にもオーマンディのレコードはよく売れていて、オーケストラの小品はほとんど、オーマンディが引き受けていました。
このレコードで嬉しいのは、1958年のシーズンでコンマスを降りたジェイコブ・クラチマルニックのヴァイオリン・ソロを聴けることです。クラチマルニックはこの後アムステルダム・コンセルトヘボウ、ニューヨーク・フィルハーモニック、サンフランシスコ交響楽団と渡り歩きます。サンフランシスコを去ったあとはロスに移住し、スタジオミュージシャンとして映画やテレビのサウンドトラック、アルバム、テレビのジングルを録音しています。ジャンルにとらわれず活躍したんですなぁ。
そんな彼ですから、ここでは第3曲の「山道を行く」でそのジャジーな雰囲気をたっぷり感じさせてくれます。
オーマンディの指揮はあくまでオーソドックスで、テラークのカンゼルのように実際の雷の音をかぶせるという奇抜なことはしていませんが、嵐の豪雨の最終楽章は迫力満点です。プロデューサーのトマス・フロストもいい仕事しています。