話題の映画「この世界の片隅に」。

梅之助、観ようと思っていたのですがまだ観ていません。原作漫画コミックは読んでいるので、最近はレンタル開始まで待ってもいいかなぁ~なんて思ったりもしています。
戦中の軍港・呉を舞台にしているので、その方面に関心がある人にとっても、興味深い作品ですよね。
 
これまで当ブログでは
 
眠る旧日本海軍の戦艦たち① 「武蔵」(2015/03/07)からのシリーズで戦艦を、
眠る旧日本海軍の空母たち① 「珊瑚海海戦」(2015/03/25)からのシリーズで航空母艦を、
眠る旧日本海軍の巡洋艦たち① ビキニ環礁に沈む「酒匂」(2016/02/29)からのシリーズで巡洋艦を、
眠る旧日本海軍の駆逐艦たち① 若松港の駆逐艦たち(2015/06/03)からのシリーズで駆逐艦を、
 
簡単に紹介してきました(対米戦争期間のものに限る)。
戦艦や空母は数が限られているのでほぼ全てを網羅したものの、巡洋艦、駆逐艦に関しては数が多すぎる為、沈没後の海底写真が確認出来るものを中心に記事にしています。
 
今回は少し趣向を変えて、「この世界の片隅に」の主人公「すず」さんが観たであろう艦艇を、作品中からピックアップして紹介していきたいと思います。
 
「この世界の片隅に」第3巻 P.125より
 
第一弾は重巡洋艦「青葉」。
巡洋艦の分類などについては、上の「酒匂」の記事」を参照してください。
「この世界の片隅に」と「青葉」の関わりは、ここでは触れません。しかし、ポスターにも描かれているように、象徴的な意味で物語にとって重要だったりします。
 
 
「青葉」は「青葉型」重巡洋艦の1番艦として、1927(昭和2)年に竣工(2番艦は「衣笠」)。日中戦争では上海上陸作戦の支援などを行っています。
また元総理大臣の中曽根康弘氏は、対米開戦直前に海軍主計士官として「青葉」に乗艦し、猛訓練を受けたのだそうです。
以下の画像はいずれもWikipediaから。
 
 公試中の「青葉」(1927年)
 
対米開戦と同時にグアム島攻略戦に従事し、続くウェーク島第二次攻略戦には増援部隊として、翌年の1942(昭和17)年5月にはポートモレスビー作戦の一環として珊瑚海海戦に参加しています。
同年8月から始まるガダルカナル島の戦いでも、第一次ソロモン海戦、サヴォ島沖海戦に参加しており、特にサヴォ島沖海戦では戦闘不能に陥るほどの損傷を受けています。これは事前情報に反して現れた敵艦影を僚艦と誤認し、「ワレ、アオバ」と送信してしまった事による悲劇でした。
その後の「青葉」は、本土やトラック島で度重なる修理を受けつつ戦闘を継続するも、最終的には速力が落ちてしまい、主に輸送業務を行うことになります。1944年のレイテ沖海戦にも兵員輸送などに従事しますが、敵潜水艦の魚雷に被弾して内地の呉に帰投。そのまま防空砲台として本土空襲に応戦、そして終戦を迎えます。
 
 
 
上2枚の画像は終戦時の「青葉」。この頃のカラー映像が残っているので、下に紹介しておきます。映像を見るとよく分かりますが、砲身が山側に向かっていますね。そちら方面から来襲した米軍機を砲撃しながら擱座した姿は壮烈ですらあります。
1946年より解体。
 
「この世界の片隅に」第2巻 P.120より
 
 
冒頭の「青葉」のポスターにも描かれているように、「この世界の片隅に」には白サギが幾度も現れています。作中のすずさんの幼馴染が乗艦した「青葉」は、上記「ワレ、アオバ」の件もあり、正直、武勲艦とまでは断言出来ないかもしれませんが、それでも幾度も死線を超えて生還した事から「ソロモンの狼」といつしか呼ばれるようになりました。
そんな「青葉」と白サギの関係が何を意味するのかを考えながら、この作品に接してみるのもいいですね。
 
 
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