ブレーキカスタムのご相談で多いのが、キャリパー交換です。
1、ドレスアップ(見た目)
2、ブレーキの利きを向上させたい
3、現在使用しているキャリパーが使えない(錆などによる固着)
お客さまによって目的は様々です。
今回は、よくいただくご相談内容を踏まえて、解説していきます。
ブレーキの利きが悪くなる原因
そもそも論になりますが、しっかりメンテナンスができていないと
A.メンテナンス不良でブレーキの利きが悪くなっている
B.ライダーの要求に対して、ブレーキ性能が不足している
どちらか、判断できない部分があります。
ブレーキメンテナンス不良の例
実際によくある事例を紹介します。
※お客さまによる画像提供
マスターシリンダー
樹脂製のカップは、紫外線などによる経年劣化で割れることがあります。
劣化したブレーキフルード(ブレーキ液)
これでもまだ、マシなほうです。
酷いものだと、フルードがほとんど入っていなかったり、フルードが結晶化していたりします。
ブレーキホースの中が、結晶化したフルードでふさがっている事もありました。
フルードは、メーカーによって色がついている製品があります。
しかし、バイクショップの立場で言うと、無色透明のほうが劣化具合が判断しやすいと言えます。
劣化した状態で持ち込まれても、元々の色がわからないですからね。
なおフルード交換は、適切にエア抜きをおこなわなければ、たいへん危険です。ご自身でやるのは否定しませんが、確実に行ってください。
(わざわざ申し上げているのは、エア抜き不良の車両が非常に多いからです)
キャリパー
錆びた2POTキャリパー
ディスクブレーキのシステムを簡単に説明すると、
1,(マスターシリンダー側)レバーを引く
2,ブレーキホース内のフルードに圧力がかかり、ピストンを押し出す
3,押し出されたピストンが、ブレーキパッドとブレーキディスクを摩擦させる
→ブレーキが利く
という仕組みになっています。
国産車の純正キャリパーの場合、ご覧のようにキャリパーピストンに錆が発生する事があります。
金属ブラシで錆を落とすことはできますが、効果に持続性はありません。
環境によりますが、1,2ヶ月すれば錆が発生し、キャリパーピストンが動作不良になります。
例:
ピストンの1つが固着し、もう片方のピストンだけでブレーキをかけている「片利き」状態
そのほか、
キャリパーの錆の有無にかかわらず、キャリパーシール(ゴム部品)の劣化も、ブレーキ性能に影響します。
ブレーキパッドの残量も要チェック項目です。
使用するブレーキパッドによって、ブレーキフィーリングが変わりますが、マスターシリンダーや、キャリパーがきちんと動作していることが前提となります。
5年使用したブレンボ4POTキャリパー/ニッシン製4POTキャリパーピストン
ブレンボはおそらくアルミ製で、ニッシンのピストンと比較して軽量です。
ブレンボなど、社外キャリパーや、一部の純正キャリパーピストンはコーティングが施されていて、錆びにくくなっています。
余談になりますが、10年以上、屋外に放置していたゼファーから取り外した、写真と同じ型のブレンボキャリパーを分解したところ、ピストンは錆び一つなく、きれいなままでした。
ディスクローター
新品
ディスクローターも、使用し続けるうちに減ってきます。
(サービスマニュアルに使用限度が記載されています)
また、転倒などによって、歪みが発生する事があります。
海外製の激安ローターは、ホイールが振られたり、ディスクが歪んだりすることがあるので、使用はおすすめしません。
・ディスクローター大径化
・キャリパーサポートワンオフ
・ブレンボ4POTキャリパー
・ステンレスメッシュブレーキ—ホース
・ブレンボ ラジアルポンプ式 マスターシリンダー
部品はお客さまによるセレクション&持ち込み。当店でキャリパーサポートをワンオフ製作して、取り付けました。
純正フルメンテ vs 社外品交換
前出のCB125Tは当店でレストアしました。
他店で購入後、当店でブレーキキャリパーをオーバーホールして、さらにブレーキディスクも新品交換。
それでもオーナーさまはブレーキ性能に満足できず、自らさまざまなパッドをテスト。
その上で「自分には、純正ブレーキはもの足りない」と判断し、キャリパーや、マスターシリンダーなど、ブレーキ一式のカスタムを当店に依頼されました。
非常に満足した旨をブログに綴られています。
※以下、ブログから一部抜粋
ブレーキ強化のメリット
ひとことでいうと、圧倒的な制動力とコントロール性の高さだ。
「ブレーキの強化」というと、すぐにブレーキがロックして扱いづらくなる印象があるかもしれない。ブレーキングに対する慣れや、好みもあると思うが
ブレーキレバーで利きを自由自在にコントロールできて、その気になれば指2本で急制動が可能
といった感じ。(手が大きい人なら指1本でも可能だろう)
筆者のCB125Tは142cc化して、高速道路も走っているが、100km/h以上からの急制動も難なくできる。感覚的には教習所の30km/hからの急制動と同じ。
レバーの入力で強弱を調整できるため、絶対的な安心感があるのだ。
いつでも自由自在に、思いどおり減速できるというのは、何が起きるか分からない公道を走る上で、おおきな安心感につながる。これは高速道路を走るとか、飛ばす飛ばさないとは関係ない話。
公道だと、どこでも否応なく、急制動や緊急回避を迫られる事がある。
ブレーキのコントロール性能とは
たとえばノーマルブレーキが、2・4・6・8・10で利き具合を調整できるとしたら、ブレンボなら1・1.25・1.50・1.75・2・2.25・2.50・2.75・3(以下省略)というぐらい、こまかく利き具合を微調整できるイメージ。
・・・
既存のものをメンテナンスするか、いっそ交換するか
これが正解というものはありませんので、お客さまの考え方や、目的、状況によって、選択されるのがいいと思います。
4POTと6POT
代表 日向のレース用GSX-R1000に装着していた、レース用 Frandoキャリパー
多ければいい、というものではありませんが、6POTです。
レース用だけあって、超軽量につくられています。
6POTは部品点数が多くなるため、メンテナンス性が悪い、というデメリットがあります。
タイヤ性能や、ブレーキパッドが進歩した現代では、それほど恩恵がないと言えます。
一部、純正キャリパーに6POTが採用されていますが、やはりメンテナンス性の煩雑さから、4POTキャリパーに交換されるお客さまが、けっこういらっしゃいます。
VTR1000SP2
日向と同型のキャリパーです。長期間乗ったレビューをいただきました。
キャリパーサポートはワンオフ
おすすめのブレーキメーカー
キャリパー交換を希望されるお客さまの9割が
「ブレンボに交換してほしい」
とおっしゃいます。
「どうしてブレンボなのですか?」と聞くと、「ほかのメーカーを知らないから」という答えが返ってきます。
そこで、ガレージ湘南でおすすめしているのが、Frando(フランド)です。
・ブレンボと遜色ない性能
・高い信頼性
・(ブレンボと比較して)圧倒的に安い
という特徴があります。
台湾のメーカーで、年々、日本での知名度も向上し、MVアグスタに採用されたり、レースで入賞実績があります。
念のために申し上げると、代表の日向は、鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦し、キャリパーだけで1つ50万円(左右で100万円)するブレーキを使用していました。
1995年 RVF750 RC45 日向正篤
フロントフォークはオーリンズ、APロッキード製キャリパーを装着。
APロッキード、ブレンボ、ベルリンガー・・・さまざまなメーカーを試しました。
Frandoキャリパーを装着したレース用GSX-R1000で、富士スピードウェイで300km/h以上からのフルブレーキングテストを行っています。
これらの経験と、これまでFrandoキャリパーを使用したお客さまの感想を踏まえた上で、おすすめしています。
「安い割にいい」
ではなく、
「同価格帯の他メーカーと比較して、性能面(実際の利きや、コントロール性能)で遜色がない」
という理由です。
たとえば、Frandoなら、鋳造の4POT ブレンボキャリパーと変わらない金額で、よりグレードの高い鍛造キャリパーが買えてしまいます。
マスターシリンダーも同様です。
以下、前出CB125Tのお客さまのブログより引用。
フランド VS ブレンボ ストリート編
筆者はフランド製4ポット鍛造キャリパー、ラジアルマスターを装着したZRX400を借りて、ターンパイク箱根を走ったことがあります。
ZRX400は、車両重量が200kg以上。
シングルとダブルディスクという違いはあるものの、ブレーキタッチやコントロール性能、実際の効き具合は、ブレンボを装着したCBTとまったく遜色ありませんでした。
「なにこれ? まるっきりブレンボと同じじゃん」という感じ。
ストリートで、一般のライダーが乗るぶんにはフランドで十分というか、おそらく、ブラインドテストすれば区別できないと思います。
ブラインドテスト:ブランドや商品名を隠して客観的な評価や、意見や感想を聞くテスト。
ちなみにZRX400のオーナーは、筆者のCB125T改に試乗した際、「ブレンボの操作性に感銘を受けて、ブレーキを交換した」と言ってました。
ほかにもCB125T改に試乗した人がブレーキをカスタムし始めて、ちょっとしたブーム?みたいになっていました。
補足すると、当店にブレーキカスタムを依頼された時点では、Frandoというメーカーをご存じありませんでした。
記事にあるとおり、実際に試乗テストした後、
「もっと早くFrandoの存在を知りたかった。それがブレーキカスタムで唯一、惜しい点です」
「性能が同じで価格は半分以下。(次にブレーキをカスタムするなら)あえてブレンボを選ぶ必然性はないでしょうね」
このように話されていました。
ブレーキキャリパーの種類
鋳造=ちゅうぞう。金属を型に流し込んで固める製法。比較的、安価に製造できる。
鍛造=たんぞう。強度を高めるため、金属を叩いて成形する製法。
ブレーキング時、キャリパーに高い圧力がかかります。その際、鍛造と鋳造でブレーキタッチに違いが出るといわれています。
一般的にキャリパーの剛性が高いのは鍛造、次いで鋳造です。
またキャリパーの構造も、左右のパーツを組み合わせた2ピース、一体構造のモノブロックがあります。
モノブロックのほうがより高剛性ですが、たとえば300km/hでサーキットを走行するといったライダーじゃない限り、公道では恩恵は実感しにくいと思います。
鍛造4POTキャリパー装着例
ピッチが同じなら、ブレンボキャリパーとパッドは共通です
フランド鍛造4POT&ワンオフキャリパーサポート
前出のエピソードに登場したZRXです。
フランド鍛造4POT&ワンオフキャリパーサポート
後日、アルマイト処理しました。
アルマイト処理後(オーナーさまのレビュー)
代表 日向のNSR250R サポートはT2 Racing製
出典:Frando正規代理店ガルーダ
マスターシリンダー
マスターシリンダー装着例
マスターシリンダーにも鋳造と鍛造のほか、シリンダー径、レバーの種類、レバー調整、対応するハンドルバーの径など、種類があります。
ブレーキタッチ、ブレーキフィーリングに大きく影響するパーツです。
キャリパーとセットで交換するのが基本になります。
キャリパー交換作業の基本的な例:
キャリパー、マスターシリンダー、ブレーキホース、フルード、キャリパーサポート交換
ブレーキカスタムの注意点
最後に「これだけは注意したほうがいい」という点を挙げます。
1、確実に信頼のおける製品(メーカー)をえらぶ
ブレーキ製品は年々、海外の激安品が増えています。
精度、検査、耐久性など、目に見えない部分がおろそかになっている製品を使用すると、万一の場合、重大事故につながります。
※いわゆる有名ブランドの偽物も出回っています。
広告宣伝を鵜呑みにせず、レース実績など、客観的な信頼性を確認しましょう。
2、適切に取り付ける
当店に持ち込まれるブレーキカスタムされた車両のなかには
・エア抜き不足
・ブレーキホースが長すぎる or 短すぎる
・ブレーキホースの取り回しが悪い
取り付けミス、もしくは適切とは言えない取り付けがされているケースが多々、あります。
また、ご自身でパッド交換し、走行中にパッドが脱落・・・という話はめずらしくありません。良いパーツも、取り付け方がまずいと、意味をなさなくなってしまいます。
3、社外品もメンテナンスが必要
最後になりますが
・ブレーキフルード(残量、色)
・パッド残量
・ディスクの状態(厚み、偏摩耗、曲がり)
こうした日常点検はもちろん、定期的なフルード交換が必要です。
ブレーキフルードは吸湿性が高いため、梅雨明けのツーリングを計画している方は、梅雨があけた頃に交換するといいかもしれませんね。
FRANDO正規輸入品 取扱い店
有限会社ガレージ湘南
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