東京電力福島第1原発事故で汚染された土壌などの除染で出る廃棄物について、地域ごとの仮置き場で3年程度保管し、その間に中間貯蔵施設を建設することを環境省が月内に公表する工程表に盛り込む方針を決めたことが20日、分かった。関係者によると、中間貯蔵施設での貯蔵は数十年に及ぶ可能性が高いという。

 政府は「福島県を最終処分地にはしない」と表明しており、福島県内の発生分は中間貯蔵の終了後は県外に出す。福島県で出た廃棄物の最終処分に必要な敷地、技術などは今後の検討課題となる見通し。一方、他の都県で出た廃棄物は福島県分よりも量が少なく濃度は低いとして、各都県内での最終処分とする方針。

 政府は除染に当面、1兆2000億円程度を充てる予定だが、中間貯蔵関連の費用を含めると最大で5兆円を上回るとの見方も浮上している。

 政府は週明けにも関係自治体などへの説明を始め、月末に正式発表する予定。中間貯蔵名目での保管が長期間になることや、福島県と他の都県の扱いの違いに関し、自治体からの反発も予想される。

 福島県などで進む除染活動では、剥ぎ取った土壌など放射性物質を含んだ廃棄物が大量に発生すると見込まれている。

気象庁は、津波警報の精度を向上させるため、三陸沖約100キロにブイ式の海底津波計3台を設置することを決めた。東日本大震災の余震や、震災震源域東側で発生が懸念されている「アウターライズ地震」に対応する緊急措置。3次補正予算案に9億5600万円を盛り込んでおり、今年度中に設置する。

 海底津波計は三陸沖に数百キロ間隔で設置。深さ数千メートルの海底に沈め、水圧の変化から津波高などを観測する。データは海面上のブイに音波で送り、ブイの通信機から通信衛星を通じて気象庁に届く。

 気象庁によると、100キロ沖に設置することで、津波到達の約30分前に実測値を得られる。地震の規模を示すマグニチュード(M)から推定して発表される津波警報に反映し、より正確な警報に更新する。M9.0の東日本大震災では、気象庁が発生直後に「M7.9」と評価、津波警報も過小に発表された。

 大震災震源域の東側では、海溝型地震の後にプレート境界の外側で発生する「アウターライズ地震」が懸念されている。既に三陸沖40~70キロにケーブル式の海底津波計が設置されているが、アウターライズ地震に対応するため、より沖合に迅速に設置できるブイ式の導入を決めた。

 また同庁は3次補正予算案に、M8以上でも約15分で正しい値を算出できる新しい地震計「広帯域強震計」を全国80カ所に整備するため、3億2900万円を盛り込んだ。【池田知広】

東日本大震災で被災した事業者が新たな借金を抱える「二重ローン」問題で、民主、自民、公明の3党は20日、再建可能と判断しにくい事業者の債権についても国のリスクで買い取り、被災者の借金返済を軽減することで合意した。被災者の債権を金融機関から買い取る「東日本大震災事業者再生支援機構」(支援機構)を、政府の全額出資で来春までに新設する。返済は最長15年猶予し、債権が焦げ付いた場合は、国が損失を負担する。

 二重ローン対策で政府は、中小企業基盤整備機構などが出資して事業者の債権を買い取る「産業復興機構」(復興機構)を、被災県ごとに設置する準備を進めている。ただ、復興機構の対象は、再建可能だと判断した事業者の債権に限られ、取得枠も各県最大500億円程度。被災3県で救済が必要な債権は5600億円に上ると見られ、再建可能性の見極めが難しい中小・零細企業や農林漁業者などは対象外となる可能性があった。

 新設の支援機構は政府出資の株式会社とし、被災県に支部を置く。ただちに再生可能と判断しにくい中小・零細事業者や農林漁業者などの債権を、金融機関から重点的に買い取る。ただ、債権を回収できないと、出資した国が穴埋めすることになるため、最終的に国民負担が増大する。【吉永康朗、田所柳子】

東日本大震災で津波の被害に遭った宮城県石巻市にある、かやぶき屋根をふく専門業者が再建を目指している。保管していた1年分のヨシは流されたが、取引先の支援を受け、少しずつ仕事を再開している。社長の熊谷秋雄さん(47)は「この町でやらなきゃいけないことがある」と話し、ヨシ原が広がっていた古里の復活を願う。

 石巻市を流れる北上川の河口は、細く固い良質のヨシが取れる国内有数の産地として知られてきた。この地で熊谷さんの祖父は1948年、ヨシの刈り取りと販売を始め、父貞好さん(77)が93年、熊谷さんが現在社長を務める熊谷産業を設立した。

 会社は技術を評価され、世界遺産に登録された中尊寺(岩手県平泉町)の弁財天堂のほか、「日本一のかやぶき屋根」と美しさをうたわれる正法寺(しょうぼうじ)(同県奥州市)のふき替えや修復を手がけた。

 津波による被害は深刻だった。約30人の従業員は全員無事だったが、自宅が流された従業員も多かった。河口近くにあったヨシの保管倉庫や社屋を失い、仕事を支えてきた豊かなヨシ原は海水につかった。

 支援の手を差し伸べてくれたのは取引先だった。長野県にある寺は震災直後、自宅が被災した従業員を気遣って「住み込みで屋根をふき替えてほしい」と依頼してくれた。ヨシは青森県内の同業者がトラック3台分、無償で提供してくれた。

 熊谷さんは被害を免れたヨシを従業員と一緒に拾い集め、地元にある民家13軒の屋根も修理した。今は宮城県角田市や岩手県花巻市にある旧家で屋根の修復を手がけているが、十数カ所の寺院の発注を受けている。

 熊谷さんは今、倉庫跡地に建てた仮設の小屋で生活している。津波が押し寄せた北上川の川辺に、小エビや小魚がようやく戻ってきたのに気づく。熊谷さんは、黄金に輝くヨシの大群落が復活する日を待っている。【垂水友里香】

東日本大震災の津波で岩手県釜石市の釜石港岸壁に乗り上げたままになっていた元パナマ船籍の貨物船「アジア・シンフォニー」(4724トン)が20日、撤去され、港に再び浮かんだ。岸壁に打ち上げられた全長約100メートルの船は大地震の猛威を象徴する光景となっていた。

 午前9時ごろ、大型クレーンのワイヤ32本が巨大な船体を持ち上げた。ワイヤはきしむ音をさせながら船をつり上げ、午前9時半ごろ、港内に着水させた。ダイバーがすぐに海に潜り、船底に大きな損傷がないか、確かめた。

 3月11日、釜石港に停泊していた船は津波に押し流された。乗員のフィリピン人17人は無事に救助された。

 撤去作業にあたったサルベージ会社「フルサワ」(広島県江田島市)によると、船は数日後、釜石港を離れ、修復のため広島県内の造船所に向かう。【神足俊輔、市川明代】