渋谷の交差点で、見知らぬ誰か
に抱きしめられたことがある。
一緒にいた友人によると、その
誰かは女性だったらしいのだが
私は友人の方を見て喋っていた
ので『誰か』の顔を見ていない。
フッと、首に腕を回され
ゆっくり抱きしめられて
「 会いたかった… 」と
耳元で小さく囁かれた。
ゾッとした。
足がガクガクし、相手の腕を
振りほどいて逃げてしまった。
『 人間じゃない 』
感じがしちゃったのですよね。
何の匂いもしなかったからか。
体臭も、香水や化粧品の
匂いも、何もしなかった。
でも友人にも姿は見えていた訳
だから、人だったのだろうけど。
「 みなもに向かって真っ直ぐ
歩いて来てたから、てっきり
知り合いなんだと思った。」
なんて聞いたら、余計に怖くて
動悸が数日間も治まらなかった。
イタズラにしては静かすぎて
痴女!?という感じでもなく
人見知りを直す為の修行?
でもしていたのだろうか?
もしも前世で何か関係があって
本当に、私に会いたかったのだと
したら、邪険にしてごめんなさい。
新一年のお子の歌は、絶好調。
「 トゥットゥらり、タリ〜
♪ トゥットゥらりッタリ〜
らるらるリルらり〜 ♪♪ 」
相変わらず何の歌だか
わからないけど、時々
「 あなたとコンビニ
フ○ミリーマート♪」
なんてのも挟まっていて可愛い
見た目も可愛い子なので
女子からよく触られてる。
「 ○くん、かわいいね〜」
と、ほっぺをツンツンされたり。
でも本人は、まったく無視。
当然ながら目も合わせない。
時折男子からも触られてる。
ただ、男子は触り方が荒い。
「 ○くぅ〜ん 」と
腕をガシッと掴んだり。
ほっぺたをギュウ〜ッ
と両手で挟んできたり。
これにはさすがに、日頃
無反応のお子も泣き出す。
「 青鬼が来たー 」
青鬼…かぁ。 彼にこの世界は
どのように見えているのだろう?
ボンヤリとしか映ってない気が
するんですよね。なんとなく。
そんな中で、怖いよな。
いきなり強く触られたら。
「 もっと優しくね、」と
周りの子には言ったけど。
…でもなぁ。
優しく、だったけど怖かったもの。
理由がわからず突然触られるのは。
痴漢とはまた違う怖さだった。
鬼 なんて表現が出てきたの
だから、彼も恐怖なのだろう。
親御さんは、周りの子達が
構ってくれるのは有り難い、
と仰っているけど…
お子の表情と、周囲の子らの
屈托のない無神経さとの間で
板挟みの私は、ちょっと複雑です。