新型コロナ感染による急性耳管炎?!・・・
難聴、嗅覚障害、味覚障害、自声強聴の整体治療
患者Tさん=43才-女性-会社員/主婦の症例
① Tさんの病歴…「まだ、難聴や味覚障害などが残っています」
患者Tさんは、三週間ほど前に発熱や倦怠感などの風邪症状が出てので、検査キッドで確認すると「新型コロナ陽性」の判定が出たそうです。その後新型コロナの症状は悪化し、さらに難聴や嗅覚障害、味覚障害あるいは自分の声が遠くから聞こえるなどの症状も出たそうです。一週間ほど前から新型コロナの風邪症状は少しずつ改善してきたそうですが(現在は37度前半の微熱と空咳が続く程度)、難聴、嗅覚/味覚障害、自分の声が遠くから聞こえるなどの症状はなかなか改善せず、現在も残っているそうです。
② Tさんの診察
・新型コロナの症状は、当初は喉のイガイガ感だけだったそうですが、2~3日後から38~9度の発熱と倦怠感、悪寒、悪心/嘔吐、食欲不振、咳、関節痛/筋肉痛などが生じたそうです。その後、咳をした時や立位時などに回転性のめまいが生じ、また時おり刺すような耳の痛みも、一日に数度生じるようになったそうです。さらに、耳の奥から喉の下の方にかけて、何かが流れている感触も感じていたそうです。この症状は約二週間続いたそうです。
・上記症状だけでなく、二週目頃から両耳に難聴が生じるようになったそうです。難聴は右側の耳の方がやや強いそうです。さらに自分の声が遠くから聞こえる感じも強くなり、嚥下時に耳の奥が「ポコポコ」と振動するような、耳管が開いたり閉じたりする感触と耳痛があるそうです。
・さらに臭いがほとんど感じなくなり、味覚もかなり分かりづらくなってきていたそうです。また、眼を開けていると悪心が強くなるので、出来るだけ眼を閉じて安静にしていたそうです。特に人の動きなど、チョロチョロと動くものを見るだけでも、吐きそうになっていたそうです。これらの症状は、現在も続いているそうです。
・耳鼻科を受診されたそうですが、中耳炎などは無い、との事だったそうです。
・瞳孔は正中にあり、左右対称で、眼球運動に異常はありませんでした。眼瞼下垂などはありませんでした。
・顔面の表情筋に異常は無く、構語や嚥下障害もありませんでした。
・開口時、口蓋扁桃はよく見えませんでしたが、若干腫大しているように見えました。口内炎等はありませんでした。
・口蓋垂は正中にありました。
・項部硬直などの髄膜刺激所見はありませんでした。
・指こすりによる聴覚の検査では、右耳の方が聞こえにくいそうです。
・初診時における前頭部でのウェーバーテストでは音を全く感じなかったそうです。2診目も前頭部の検査では同様の結果でした。しかしその事(=全く骨伝導が無い事)が若干不思議だったので、2診目ではそれとは別に頭頂部と後頭部でのウェーバーテストをしました。するとやや弱くですが、頭頂部、後頭部とも、正中で音を感じたそうです。リンネテストでは、左右とも陽性でしたが、左側の方がやや強く聞こえたそうです。
・嗅覚テストでは、右の鼻孔では匂い(ペパーミント)を感じられましたが、左の鼻孔では匂いが分からないそうです。
・胸頸部聴診上、血管雑音や心音、呼吸音の異常所見はありませんでした。
・歯ぎしりの癖が強く、歯科医よりマウスピースの処方を受けているそうですが、そのマウスピースを噛みしめて、潰してしまう事もあるそうです。
・頬部や頸部の前後面に、著明な筋緊張と圧痛がありました。
➂ 治療目標と整体治療…顔面臓器の免疫/細胞再生力を回復する !!
⑴ 耳管領域の血流を改善し、耳管の局所免疫力と細胞再生力を回復し、耳管機能を正常化する
⑵ 嗅神経の下辺領域(鼻腔の天井付近)の血流を改善し、局所免疫力を促進させて、嗅覚を回復する
⑶ 鼓索神経、舌神経、舌咽神経の伝導を回復し、味覚を回復する
⑷ 迷路動脈、脳底動脈の血流を改善し、内耳および後頭葉の機能を改善して、回転性めまいや眼の機能を回復する
⑸ 頭蓋骨(特に前頭骨、頭頂骨、蝶形骨、側頭骨)の縫合あるいは骨膜、硬膜の緊張を解放し、骨伝導を改善する
⑹ 頭蓋内圧の軽度亢進状態を解消する
・上行咽頭動脈解放テクニック
・上行口蓋動脈解放テクニック
・翼突管/蝶口蓋動脈解放テクニック
・後篩骨動脈鼻中隔枝/外側鼻枝解放テクニック
・鼓索神経解放テクニック
・舌神経解放テクニック
・舌咽神経解放テクニック
・椎骨動静脈解放テクニック
・静脈還流促進テクニック
・翼突筋静脈叢解放テクニック
・頭蓋骨矯正テクニック
・頭蓋仙骨療法(オステオパシー)
④ 経過と結果・・・
・初診治療後、
治療前に嗅覚障害の強かった左鼻孔での嗅覚テストで、匂いの感覚が回復し、当初感じなかったペパーミントの匂いが分かったそうです。しかし難聴は改善されていませんでした。
・2診目来院時、
難聴や左鼻の嗅覚障害、および自分の声が遠くから聞こえるなどの症状は少しマシになっていたそうです。咳や頭痛、あるいは開眼時の吐き気は無かったそうです。ただ、嚥下動作時に耳の奥が「ポコポコ」とする感触(耳管が開いたり閉じたりする感触)と耳痛、そして軽度のめまい感は残っているそうです。施術後、右耳の難聴はかなり改善し、また耳管の開閉感や嚥下時の「ポコポコ感・耳痛」、あるいは左鼻の嗅覚も改善していていました。
・3診目来院時、
難聴、自分の声が遠くから聞こえる、嗅覚障害、味覚障害、眼の動きによる吐き気、耳管のポコポコとする開閉感は、ほとんど解消していたそうです。ただ少しだけ空咳が残っているそうです。施術前の前頭部でのウェーバーテストは、音を感じなかったそうですが、施術後の検査では、正中で音を感じたそうです。
・4診目来院時、
前回(3診目)来院時には、嗅覚障害は解消していたと思っていたそうですが、お酢(酢酸)だけ匂わない事が分かったそうです。それ以外の難聴や自分の声が遠くから聞こえる、味覚障害、眼の動きによる吐き気、耳管のポコポコとする開閉感などは解消していたそうです。ただ左右の耳の奥で「ピキッ」とした一瞬の耳痛が、数回生じていたそうです。また音叉によるウェーバーテストでは、前頭部、頭頂部、そして後頭部でも正中で聞こえたそうです。
・5診目来院時、
全ての症状が改善していたので、今回の集中治療を終了する事にしました。
⑤ 今回の症例の概説、、、
◆ 増加傾向にある新型コロナ感染の後遺症?・・・
・当院でも新型コロナ禍以降、その後遺障害としての嗅覚異常や味覚障害の患者さんが増加傾向にありました。専門的な事はよく分かりませんが、今回の新型コロナウイルスは、鼻腔等に感染した際、そこだけでなくその上方である篩骨孔~嗅神経領域・他にまでもその勢力を伸ばしていく特徴があるのかもしれません。
・ところで今回のTさんの症例については、新型コロナの後遺障害(過去形)というよりは、上記①のTさんの病歴や、②のTさんの診察でも記していますが、当院初診時には未だ微熱と空咳が続き、難聴や嗅覚障害なども引き続き強い状態という、現在進行形的な状況での来院となりました。ですから本来であれば、自宅で安静にしている方がよく、そうすればいずれ自然に治癒していくと思われまます。しかしTさんは、このままでは難聴や嗅覚障害等が改善しなくなり、そのまま後遺障害として残るのでは、との不安な思いで来院されました。
◆ 急性耳管炎の可能性 ?!
・その様な経緯から、新型コロナ感染症の現在進行形ではありますが、当院で治療する事になりました。ところで耳鼻科では「中耳炎は無い」との診断でしたが、当院ではTさんの所見から、中耳炎は無くともその一歩手前的な急性耳管炎の様な病態があるのでは、との想定のもとに整体治療の計画を立てました。何となれば、難聴、耳痛や自分の声が遠くから聞こえると、耳管がポコポコとする開閉感などの、耳管開放症的な所見があったからです(☚リンネテスト陽性などの所見からも、中耳炎(伝音声難聴)の可能性は低いと思われる)。
口腔と中耳を連絡するトンネル=耳管
◆ 回転性めまいや悪心に対応する治療計画も追加…椎骨動脈の血流改善 !!
・それだけでなく、咳をした時や立位時などに回転性のめまいが生じたり、あるいは開眼時(特に動いている物を見ている時)などに悪心が生じるなど、頭蓋内圧亢進or内耳や後頭葉付近の機能障害を彷彿とさせる所見もあり、内耳や後頭葉を支配する椎骨動脈-脳底動脈の循環低下などにも対応する治療計画も並行することにしました。
主に内耳や後頭葉を還流する椎骨動脈
◆ 頭蓋骨縫合の緊張と硬膜も関係か ?!
・さらに2診目には、ウェーバーテストの結果から、頭蓋骨(特に前頭骨、頭頂骨、蝶形骨、側頭骨)の縫合あるいは骨膜、硬膜の緊張による骨伝導障害の疑いも予想されましたので、頭蓋骨の矯正や骨膜の緊張解放などの治療計画も取り入れました。
頭蓋骨の縫合
頭蓋骨の骨膜と硬膜
◆ 上記仮説と新型コロナウイルス感染の関係性は ?
・ただ上記の「頭蓋内圧亢進or内耳や後頭葉付近の機能障害」や「頭蓋骨(特に前頭骨、頭頂骨、蝶形骨、側頭骨)の縫合あるいは骨膜、硬膜の緊張による骨伝導障害の疑い」は、今回の新型コロナウイルスによる影響の可能性は低いのでは、と思いました。
・その理由は、上記「②Tさんの診察」にも記しましたが、「歯ぎしりの癖が強く、歯科医よりマウスピースの処方を受けているそうですが、そのマウスピースを噛みしめて、潰してしまう事もあるそうです。」といった問診所見から、Tさんの外側/内側翼突筋や側頭筋などの咬筋群、あるいは頸部の筋肉群の緊張-硬化があり(☚実際に、触診検査から” 頬部や頸部の前後面に、著明な筋緊張”といった所見があった)、それが耳管や鼻腔上層部(嗅神経付近)、あるいは後頭葉や内耳付近の血管を絞扼して血流障害を生じさせ、その結果局所免疫力や細胞再生力の減退を生じさせるという状態が基礎にあるのでは、そしてその事が、今回の新型コロナ感染症状の複雑化に影響しているのでは、と考えたからです。
内/外翼突筋と前頸筋群
頭頚部を還流する血管
◆ 下記の治療目標-整体手技で5診目で改善 !!
・ここまで仮説を立てると、その治療計画は素直に導かれます。それは上記「➂ 治療目標と整体治療」に掲げる治療目標、
⑴ 耳管領域の血流を改善し、耳管の局所免疫力と細胞再生力を回復し、耳管機能を正常化する
⑵ 嗅神経の下辺領域(鼻腔の天井付近)の血流を改善し、局所免疫力を促進させて、嗅覚を回復する
⑶ 鼓索神経、舌神経、舌咽神経の伝導を回復し、味覚を回復する
⑷ 迷路動脈、脳底動脈の血流を改善し、内耳および後頭葉の機能を改善して、回転性めまいや眼の機能を回復する
⑸ 頭蓋骨(特に前頭骨、頭頂骨、蝶形骨、側頭骨)の縫合あるいは骨膜、硬膜の緊張を解放し、骨伝導を改善する
⑹ 頭蓋内圧の軽度亢進状態を解消する
となります。
味覚などの刺激を伝える鼓索神経・舌神経の走行ルート
・この⑴~⑹を実現させるために、上記「➂ 治療目標と整体治療」に掲げる、数多くの整体テクニックを施術したわけです。結果的にその施術直後において、1診目では嗅覚障害が改善されていたり、2診目では難聴や耳管の開閉感、あるいは嚥下時の耳のポコポコ感や耳痛が改善され、そして3診目では前頭部でのウェーバーテストも回復していたり等、それぞれ整体治療の効果がありましたので、上記仮説で概ね妥当であったのでは、と思います。
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