睡眠時無呼吸症候群(SAS)の整体治療 緑内障の治療中偶然にSASが改善した症例の解説(?)です | 【大阪】 整体師養成校 ジャパン・ヘルスサイエンス専門学院                      JHSC整体治療室 = 公式ブログ

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)の整体治療
末梢性の自律神経失調(舌下神経)が原因か ?!

緑内障の治療中、偶然にSASが改善した症例の解説です。
患者Mさん=54才-男性-会社員の症例
 

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①    Mさんの病歴・・・1~2分おきに無呼吸状態に…
患者Mさんは、当院に緑内障の集中治療で三か月間ほど通院されていました。運よく緑内障の症状は改善していき、その後の眼科医院での定期健診でも好結果を得ることが出来ました。 【
Mさんの緑内障治療の解説はこちら
Mさんは、その整体治療中に爆睡される事が多く、ほぼ施術中は眠っておられました。その間、度々無呼吸状態になることがあり、一度の施術中で数十回に及ぶ無呼吸状態になっていました。

睡眠時無呼吸症候群については、Ⅿさんからその治療を依頼されていたわけでは無かったのですが、緑内障に関する整体治療を続けているうちに、この睡眠時の無呼吸状態も次第に改善していき、そして最終的には、その施術中の爆睡時に無呼吸状態になることが1~2回までに改善していました。これは意図していたわけでは無かったのですが、本稿ではその顛末について解説していきたいと思います。

 


舌の運動神経「舌下神経」


②    Mさんの診察・・・左目に視野欠損部分が…
※ 睡眠時無呼吸症候群に関する診察はしていませんので、緑内障に関する診察所見を記します
【緑内障に関する所見】
・右眼も正常眼圧緑内障との診断だそうですが、酷いのは左眼だそうです。視野検査では、全体的に感度が落ちていてるそうです。特に左眼の中心視野-上方部鼻側に「∩」状の視野欠損or沈下部分(ブエルム-弓状暗点)があり、かなり見えにくくなっていて、仕事等にも支障が出てきているそうです。眼底検査では、左眼底で緑内障性乳頭陥凹が確認されているそうです。隅角に問題は無いそうですが、最近になって左眼の違和感が強くなりだしているそうです。
・上記の視野異常や眼の違和感は、冬場になると悪化するそうです。また、午後より午前の方が、視野異常や違和感が強いそうです。
・血圧は上が110mmHgですが、下は覚えていないそうです。血液検査で、特段の異常の指摘を受けた事は無いそうです。
・20代の頃にアトピー性皮膚炎になり、増悪⇔寛解を繰り返してきたそうです。ステロイド剤も時折使用した事があるそうです。来院時は寛解期でしたが、顔面はやや赤黒く、頸部以下は黒っぽい皮膚色でした。また、鼻唇溝(ほうれい線)は、左側の方が深くて長く、右側は浅くて短めでした。顔面全体の形状として、四角形の顔立ちでした。
・左右眼瞼とも「クマ」がありましたが、左眼瞼の「クマ」の方が、かなり黒っぽくなっていました。この「クマ」は3~4年前から酷くなったそうです。
・耳鳴りや中耳炎の既往歴は無いそうです。
・鼻閉、鼻水、後鼻漏(鼻炎、副鼻腔炎、慢性上咽頭炎)などの既往歴も無いそうです。
・子供時代以外で、虫歯や歯周病などの既往歴は、それ程ないそうです。歯ぎしりは「多分していないと思う」との事です。ただかなり以前に、後頚部から後頭部にかけて、締め付けられるような頭痛があり、矯正歯科でマウスピースの処方を、約半年間受けていたそうです(☚顎関節症との診断)。その後、その後頚部から後頭部にかけた頭痛は改善したそうです。

 

(通算14診目のメンテナンス来院時に改めてお聞きすると、通勤時に電車の座席で下を向いて居眠りしている時、ふと気づくと、舌が口から少し出て、前方に垂れ下がっている事が多くあったそうです。)

 



➂ 治療目標と整体治療
※ 睡眠時無呼吸症候群を想定した治療目標は設定していませんので、緑内障に関する治療目標を記します。
※ 5診目から、舌の挙上を目的とする整体治療を追加しています

⑴    眼球(シュレム管)~右心房に至る静脈還流を促進し、眼圧を下げ、燃え膜・視神経への血流を増進する
  ・静脈還流促進テクニック
  ・翼突筋静脈叢解放テクニック
  ・顔面深静脈解放テクニック
  ・後頭および後耳介静脈解放テクニック
  ・椎骨静脈叢解放テクニック

【5診目から追加…舌筋群や軟口蓋の筋肉群を支配する下記神経の治療】
  ・舌下神経解放テクニック
  ・三叉神経解放テクニック
  ・咽頭神経叢解放テクニック
  ・舌咽-咽頭神経解放テクニック
  ・頸部交感神経解放テクニック

 





④  経過と結果・・・一度の施術中に無呼吸が1~2回にまで激減 !!
※緑内障に関する経過と結果は『Mさんの緑内障治療の解説はこちら」をご参照ください。
【睡眠時無呼吸症候群に関する経過と結果】
・初診から3~4診目くらいまでは、毎回施術に入ると数分で爆睡状態になり、ほぼ施術中はずっと眠っておられました。その間、1~2分に一度のペースでMさんは無呼吸状態になり、一度の施術時間腸に数十回も無呼吸状態がありました。この施術中の爆睡状態は、最終診まで続きました。


・5診目くらいから「あれっ、無呼吸減ってるやん…」と、その施術中に気づきました。そこで改めて、舌下神経などの伝導を回復する目的で「舌下神経解放テクニック・他」を追加施術する事にしました。


・緑内障の集中治療を終了する9診目来院時には、無呼吸になる感覚が5~10分くらいにまで延長していました。


・9診目以降は、メンテナンス的に適当な間隔でMさんは来院されていましたが、次第に無呼吸になる間隔は延びていき、4回目のメンテナンス治療時には(通算13診目)、無呼吸になる間隔が20~30分くらいにまで延長し、一度の施術時間中に無呼吸状態が1~2回くらいにまで激減していました。

 

・通算14診目来院時(緑内障のメンテナンス治療)、今回も施術中はほとんど寝ておられましたが、今回はいびきもほとんど無く、無呼吸状態も一二度程度しかありませんでした。

 

・通算15診目来院時(緑内障のメンテナンス治療)今回も施術中はほとんど寝ておられましたが、今回はいびきも無く、無呼吸状態も一度もありませんでした。そして一か月後の16診目来院時も同様で、無呼吸状態はありませんでした。

 





⑤ 今回の症例の概説、、、

  末梢性の自律神経失調(舌下神経)が睡眠時無呼吸症候群の原因 ?!
※緑内障に関する経過と結果は『Mさんの緑内障治療の解説はこちら」をご参照ください。
◆ 整体師(手技療法家)は睡眠時無呼吸症候群の患者によく遭遇する…
・我々整体師の様な手技療法家であれば、1~2年も経験すれば、当該患者さんがその施術中に入眠(時に爆睡)される現象を何度も経験するものです。その科学的な機序は未だ不明ですが、業界人であれば誰もが何度も経験する現象ですので、何らかの医学的な機序があるのでしょう。


・変な言い方をすると、我々手技療法家は、その患者さんの家族以外で、唯一その人の寝顔を拝見する事の出来る職業かもしれません、、、との冗談はさておき、でも実際問題それは事実ですし、今回のMさんの症例の様に、施術中に睡眠時無呼吸症候群になる患者さんと遭遇する事は、普通にあります。

 

 


◆ 睡眠時無呼吸症候群の二大原因…閉塞性と中枢性
・それはそうなのですが、なぜか「睡眠時無呼吸症候群の治療をしてほしい」といった依頼は、不思議と今まで一度もありませんでした。成書によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんはかなり多く、持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)という、変てこりんな(と言ってはいけませんが)機械を就寝中に口につけて治療を受けている患者数は、50万人を超えるとも言われています。

 


・この様な睡眠時無呼吸症候群の原因についてですが、それは大きく二通りあるようです。
   1.    閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
   2.    中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)


1の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因は肥満で、その過多脂肪が上気道を狭める事で睡眠時無呼吸が生じやすくなる、というものです。ですからその主な治療法は、ダイエットとなるようです。

ただ非肥満の方でも睡眠時無呼吸は多いので、それ以外の原因もあるのでしょう(☚この点が本稿の主題となります)。


2の中枢性睡眠時無呼吸症候群ですが、この主な原因は心不全や脳卒中などですから、睡眠時無呼吸症候群だけをターゲットに絞った治療ではなく、その基礎疾患の治療が重要で、睡眠時無呼吸対策はその一環ですから、本稿とは少しその要旨が異なりますので、ここでは取り扱いません。

 


◆ 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の肥満以外の原因…舌筋のトーヌス減退(自律神経失調) ?!
・そこで1の閉塞性睡眠時無呼吸症候群についてですが、とにかく本症の直接的な原因は、舌(特にその根元の舌根部)が仰臥位で寝ている時に後方に沈下し、上咽頭を塞ぐことで無呼吸が生じるタイプです

肥満については先述しましたが、要は、その舌根が咽頭部に落ちず、上咽頭の気道が確保されていれば、睡眠時無呼吸状態に至らずに済む、、、はずです。


・逆に言うと、舌根を上咽頭の方に後退させないようにすれば、つまり舌筋のトーヌス(基礎緊張)を維持すれば、自ずと睡眠時無呼吸症候群は改善される、という事です。そこで原点に返って、舌の運動を支配しているメカニズムについて注目すると、その治療突破口が見えてくると思います。

特に、舌を前方に引くオトガイ舌筋のトーヌス(基礎緊張)減退が、大きな原因になると思われます。

 

・上記③「Mさんの診察」の最下段で『Mさんが電車での通勤時に座席に座って居眠りしている時、舌が口から出て前方に垂れ下がっている』との所見がありましたが、この所見は舌筋のトーヌス(基礎緊張)が減退している事を支持する所見だと思いますので、上記仮説の可能性が高まるのでは、と考えます。

 

 

 

 


◆ 舌を構成する7種の筋肉とそれをコントロールする自律神経(舌下神経)…
・まず構造ですが、基本的には舌はほぼ全て筋肉で出来ています。ですから自由自在に舌を動かすことが出来るのです。そして舌の筋肉は、舌の本体を構成して、その形態を変化させる4種の内舌筋と、舌の位置を移動させる3種の外舌筋に分けられます。


舌の構造
内舌筋 (舌の本体でその形状を変化させる・固有舌筋とも言う)
 1.    上縦舌筋
 2.    下縦舌筋
 3.    横舌筋
 4.    垂直舌筋

 


外舌筋 (外部にある骨から起始して舌本体に伸びている筋肉)
 5.    茎突舌筋
 6.    オトガイ舌筋
 7.    舌骨舌筋

(特に6のオトガイ舌筋は舌体を前方に引く筋肉ですから、同筋の麻痺は舌を後方に沈下する主因となりえる)

 

 


舌の運動神経

上記1~7全て舌下神経の支配で、各舌筋の運動やトーヌス(基礎緊張)をコントロールしています。

 

 


◆ 舌筋のトーヌス減退は、末梢神経(舌下神経)の走行ルートに問題あり !!
・舌下神経の中枢は延髄下部にある舌下神経核ですが、その末梢神経は延髄下部あるいは上部頚髄から出て頸部側面の内頚静脈の後内側を下行し、茎突舌骨筋と顎二腹筋後腹の内側部で弓状に前方に曲がります。その後上記5~7の外舌筋に枝神経を出しつつ前下方に向かって斜走し、舌の外側から舌に入って1~4の内舌筋を支配します。


問題は、この舌下神経の通り道だと思います1~7の筋肉に問題があっても睡眠時無呼吸症候群が生じる可能性はあります。しかしその可能性から言うと、やはり舌下神経の通り道で、同神経が頸部の筋肉緊張などによる絞扼性神経障害的な機序によって伝導障害を起こし、結果的に舌筋のコントロール不全に陥り、仰臥位時に舌が後方に沈下して上気道を塞いでしまう可能性の方が高いのでは、と考えます。

 

 


◆ 緑内障治療と睡眠時無呼吸症候群治療の関係性…  

  意図せず、睡眠時無呼吸症候群の治療をしていた ?!
・ここで緑内障の整体治療方針と整体テクニックが関係してきます。緑内障の治療目標は、眼球からの静脈還流を促進して眼房水の循環を促進し、以って眼圧を下げたり、あるいは血流を改善したりする事が目的ですが、その具体的なテクニックとして前出しました「静脈還流促進テクニック」他を施術します。

このテクニックは内頚静脈に近接する筋肉群の緊張/硬化を解放し、静脈還流を回復-促進するテクニックです。

 

  

眼から頸部にかけての静脈還流ルート

 

静脈還流ルートに近接する舌下神経の走行ルート

 


・そしてこの「静脈還流促進テクニックは、実は舌下神経の走行ルート付近の施術でもあるのです。例えば、上記でも記しましたが、舌下神経に近接する茎突舌骨筋や顎二腹筋前腹なども、そのルート上にある筋肉です。

ですからこのテクニックは、同神経を絞扼している筋肉(茎突舌骨筋・顎二腹筋後腹)への施術にもなるので、当該筋肉緊張による舌下神経の絞扼性神経障害があったりすると、(ついでにというか)舌下神経を絞扼している筋肉への施術にもつながります。

 


・つまりこの事は、舌下神経の伝導障害が軽減していく事になり、その効果が就寝中にも維持できれば、自ずと舌筋のトーヌス(基礎緊張)も維持され、舌が上咽頭に沈下する事も減る道理だと思われます。この様に考えると、Mさんの様に緑内障の整体治療によって、偶然にも睡眠時無呼吸症候群が改善していく事も、案外可能性があるのかもしれません。

 


◆ 舌だけでなく、軟口蓋(のどちんこなど)の治療も必要…
・ただ睡眠時無呼吸は、舌根の沈下だけでなく、鼻腔と口腔の関所となる軟口蓋(☚のどちんこなど)の沈下によっても鼻呼吸が障害されて無呼吸に陥るので、その可能性も視野に入れた整体治療を5診目から追加しました。

 

 


軟口蓋の構造
 1.    口蓋帆張筋
 2.    口蓋帆挙筋
 3.    口蓋垂筋
 4.    口蓋咽頭筋
 5.    口蓋舌筋

 

  

 

 


軟口蓋の運動神経
1の口蓋帆張筋だけが三叉神経(第三枝)の支配で、それ以外の筋肉は咽頭神経叢(舌咽神経、迷走神経、頸部交感神経)の支配です。

 

 

 

◆ 軟口蓋を支配する末梢の自律神経(咽頭神経叢・他)の整体治療も追加する !!
・ですから5診目から、下記整体テクニックも併せて施術した訳ですが、実はこれらのテクニックも上記の説明とよく似ていて、緑内障の治療に酷似しているので、結果的には1~4診目もこれらのテクニックを施術していたのも同然状態だったのかもしれません。

  ・舌下神経解放テクニック
  ・三叉神経解放テクニック
  ・咽頭神経叢解放テクニック
  ・舌咽-咽頭神経解放テクニック
  ・頸部交感神経解放テクニック

 

 


◆ 40年の整体師歴で初めて認識、、、まだまだ修行不足です。。。
・今思えば、整体師を40年以上もしているので、Mさんと似た様な治療も何度もしていますから、Ⅿさんの様に、その施術中に睡眠時無呼吸が改善していった患者さんは他にもいたのかもしれません。ただⅯさんについては、初診時からその無呼吸が際立っていましたので、逆にその改善傾向も目立ち、今回気づけたのかもしれません。その意味では、睡眠時無呼吸などの患者さんの変化に今まで気づけず、まだまだ修行不足ですね、、、。


・Ⅿさんの睡眠時無呼吸症候群は、現段階で(通算13診目)完全に治りきっていませんが、Mさんは緑内障のメンテナンス治療に時折来院されていますので、睡眠時無呼吸症候群についても(ついでに?!)施術していければ、と思います。

 

 

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