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ブクリョウを石狩の特産物に!

111日に北海道石狩市で茯苓(ブクリョウ)生産施設の開所式に出席しました。

茯苓とはサルノコシカケ科のきのこの一種で、アカマツやクロマツの根に繁殖した菌核です。これの表皮を剥いで乾燥させたものを生薬原料とします。

我が国では多くの漢方に使用されますが、国内生産はほとんどなくもっぱら中国からの輸入に依存しています。中国では路地栽培の技術を開発し、大量生産が可能となっています。しかし、近年の中国の経済発展によって中国国内での需要が急速に増加しており、将来的に日本の製薬原料の安定確保が懸念されています。

石狩市にある社会福祉法人はるにれの里の有志が経営する株式会社てみるファームでは株式会社ツムラと連携して、茯苓の菌床栽培技術の開発に取り組んできました。茯苓の菌床栽培が可能になれば、社会福祉法人にとっては、季節を問わずに多くの障がい者が就労できるようになります。他方、製薬会社にとっては、国産原料の安定確保に道を開くことになります。

私が茯苓栽培のお話を伺ったのは、農林水産大臣政務官を務めていた2014年のことでした。菌床栽培技術が確立したので本格的な事業に臨みたいとの相談でした。その時には、農福連携、薬用作物振興、障がい者の通年雇用など有望な要素がぎっしり詰まったとても魅力的な事業と思えました。

製薬会社の原料確保を担うにはそれなりの施設規模が必要になるので、農林水産省や北海道に支援事業を問い合わせたところ、該当する事業はあるのですがスムーズに進みませんでした。社会福祉法人が取り組むには今までにない投資が必要なだけに、最大1/2補助の事業では半額負担すること自体ができなかったからです。

 

様々な検討の末に最終的には、株式会社てみるファームが地方創生先行型事業に、茯苓加工のために新たに設立した農事組合法人生振(おやふる)ファームが林業・木材産業構造改革事業にそれぞれ採択され、残りの事業費は地域ファンド等の出資で賄われることになりました。

 

石狩市の紹介で茯苓生産施設を開所した生振(おやふる)地区は、農業者の高齢化が進み遊休農地が多い地域です。それだけに将来的には近隣農業者の茯苓生産への協力も期待できると思います。

茯苓が石狩市の新たな農業特産物になることを期待しています。

温泉地振興のための新たな動き

最近、温泉利用についての要望を頂く機会が増えた。これは、2014年以来取り組んできた温泉利用型健康増進施設の認定要件の緩和が昨年4月に実現したことが大きいと思う。現在、新要件のもとで北海道の豊富温泉や大分県の竹田温泉等が申請に向けて準備を進めている。湯治場として人気のある温泉施設が医療費控除の対象となることによって、利用者の利便性向上と療養型温泉の知名度向上に期待しているところだ。

 

温泉地の利用推進のために、環境省は2015年に温泉地保護利用推進室を設置した。温泉法を所管し、温泉資源の保護と適正利用を図る、いわば規制官庁である環境省が温泉地利用を推進するというのは目新しい。この背景には、急速に増加している訪日外国人(インバウンド)の影響がある。今のところ東京、富士山、京都、大阪というゴールデンルートに集中しているが、これからは地方にもどんどん誘客したいというのが政府や多くの公共団体の思いだ。そのために各省が様々な取り組みを行っている。

 

インバウンドが向かう先にあるのは、買い物だけではない。日本国内の多様な温泉はキラーコンテンツの一つだ。そこで、環境省では、国民温泉保養地の指定見直しを行い温泉地の利用施設整備などを進めようとしている。また、昨年5月には全国温泉地サミットを開催して温泉地の活性化に向けて議論を行った。今後も様々な視点からの温泉地振興に取り組んでもらいたい。

 

昨年末に「観光インフラ整備プログラム」を策定した観光庁の動きにも注目している。これには我が国の国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化して、上質な宿泊施設・滞在施設等を整備することなどが盛り込まれている。

 

また、インバウンド誘客とは異なる温泉地振興も重要だ。近年急増しているメンタルヘルスの不調を防止するための温泉地利用だ。とりわけ、NPO法人温泉と健康フォーラムが推進する、観光・歓楽型ではない「日本の名湯100選」は、保養と療養に適している。これは温泉療法医が推薦するもので、環境省の国民温泉保養地とあわせ温泉によるメンタルヘルスケアの普及を図っていきたい。

 

さて、我が国は、多様な温泉が全国津々浦々にあり、地域住民、湯治客や観光客によって利用されているのだが、先進国の中では温泉研究が盛んでない国とされている。その背景には、温泉にかかわる研究者が少ないことや温泉をテーマとする研究助成がほとんどないことなどがある。そのため、日本温泉気候物理医学会やNPO法人温泉と健康フォーラムからは、入湯税の一部を温泉研究のための助成に使うことはできないかという声が出ている。私は温泉法を所管する環境省が、温泉研究の推進に関して積極的な動きがあってもよいのではと思っているが、いずれにしても温泉地振興には「温泉」のあらゆる面からの研究が盛んになることは重要なことと考えている。

 

海ごみ対策の推進

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。本年最初の記事は海ごみ対策についてです。

 

昨年に東北と北海道を襲った台風と台風くずれの温帯低気圧は、各地に甚大な被害をもたらしました。なかでも、北海道十勝地方の太平洋沿岸を埋め尽くしたのは大量の流木でした。災害関連の流木処理には「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」(国土交通省と農林水産省)を利用することができますが、流木が漂着した海岸が海岸保全区域であり、漂着量が1,000㎡以上という条件があります。ここで言う、海岸保全区域は漁港施設等の限られた区域のことで、海岸保全区域外ではこの事業を使うことができません。

 

平成21年度から23年度までは(平成24年度は残金対応)、使い勝手の良かった地域グリーニューディール基金事業(海ごみ基金)がありましたが、財政再建に伴って基金事業が廃止されてしまいました。このため、海岸保全区域外での災害漂着物対策には市町村が実施する「災害廃棄物処理事業費補助金」(環境省)が用意されています。

十勝地方の大規模な流木処理に対して北海道は、海岸漂着物処理推進法に基づく「海岸漂着物等地域対策推進事業」(環境省)の活用を決めました。この事業は地方自治体負担分の80%が特別交付税措置される仕組みになっており、自治体負担が軽減されます。しかし、これは、災害復旧として用意された事業ではないので、北海道が実施する海洋ごみの回収や処理に関して、地域計画を策定し、国の承認を得る必要があります。十勝地方での流木処理が遅れたのはこのためでした。近年多発する自然災害に起因する漂着・漂流・海底ごみに対する機動的な事業が必要と考えられる出来事でした。

 

海洋ごみは、災害関連だけではありません。

2015年のエルマウ・サミットにおいて、プラスチックごみによる海洋汚染が取り上げられ、海洋ごみ対策は世界的課題として初めて認識されました。2016年の伊勢志摩サミットにおいても、海洋ごみの発生抑制と削減に向けて対処することが確認されコミットメントが継承されています。

海洋ごみは、国内外を問わず多様な由来のものが混在しており、市町村にとっては地元住民以外から排出されたごみを、自治体財源によって処分しなければならないという問題があります。また、市町村が自ら発生抑制対策を行ったとしても、問題解決につながらない状況にもあり、国による海洋ごみ対策を進める必要があります。

 

国では、平成21年に議員立法により成立した海岸漂着物処理推進法に基づき海洋ごみ対策を進めています。平成26年には専門家による海岸漂着物対策推進会議での議論を踏まえ、それまでの漂着物だけに限定されていた海洋ごみを漂流する海洋ごみや海底に沈んだ海洋ごみにも対応できるよう、対象範囲を拡大しました。海岸漂着物処理推進法は、法施行後5年で見直すことになっていましたが、平成26年には国会での見直し議論はありませんでした。

 

海洋ごみを減らすには、複数の国にまたがる広範な陸域と河川や船舶などの多様な発生源対策が必要と考えられます。特に、海洋ごみの約7割は河川由来との指摘があり、河川管理者に任せられているごみ処理に加え、これらに対する発生源対策は重要課題です。さらに、今後深刻さを増すとみられるマイクロプラスチックによる海洋汚染の実態調査とその対策も進めなければなりません。

こうした多様な問題群に取り組むために、昨年末に公明党内に「海ごみ対策推進委員会」を立ち上げました。第1回の会合には、海洋ごみの調査やクリーンアップを展開している一般社団法人JEANや全国離島振興協議会にご参加いただき、JEANの金子理事長には国内の海洋ごみの現状などについて講演してもらいました。今後、海岸漂着物処理推進法の見直しも含め海洋ごみ対策を推進していきます。