どのような講師になりたいのかを年間の稼働日から考察する。


自分を振り返ってみると、企業研修の他、オープンセミナーや大学の授業も含めて150日の稼動している。私の場合は、これでキャパシティがいっぱいである。


私の場合、企画書も書いて、営業にも出ているし、新しい研修やソリューションの開発にも取り組んで、コンサルティングもやっているので、その調査分析、報告書の作成などにも時間を割かなければならない。


さらに、研修の移動日やリハーサルの時間、新たな知識のインプットを考えると、これでもういっぱいになるのだ。


年間200日以上稼動している講師もいるが、おそらく営業や新しい研修の開発はほとんどできないだろう。中には300日以上という猛者もいるが、たいていそういう方はプレゼンテーション研修一本やりとか、決まった研修のみを実施していることが多いようである。


ということは、200日以上稼動したいならば、営業とコンテンツを確立しなければならない。


自分が動かなくても仕事が入ってくる仕組みが必要であるし、新たな研修開発やインプットの時間が取れないので、確固たるキラー・コンテンツを持っていないと難しい。


確固たるキラー・コンテンツとは、平たく言うといつもいつも同じ研修をするということである。新たな研修と違ってリハーサルの時間も少なくてすむ。


私は、どちらかというと同じ研修が続くと飽きてきて、ムラムラと新しい研修を創りたくなる。


また、研修をこなすことよりもその研修で現場がどう変わったのかということに興味があるので、コンサルティングやファシリテーションが多くなる。

お客様に選ばれる前に条件交渉を始めると敬遠される。


大変お世話になったある製薬会社の役員の方は、よく「損して得取れ」とおっしゃていた。損な条件でも、それを黙って呑んで成果を出していれば、次回は向こうのほうから好条件を提示してくるものだ、と教えられた。


まずはお客様に選ばれる努力をする。


そして、さらに成果を出した後には、交渉する必要がない。仮に条件に不満があって、難色を示すと、交渉をするまでもなく、条件を上げてくれる。


お客様の要望に応えようとお客様に選んでいただこうと真摯に努力し実力をつければ、世の中でいう交渉術とかアサーションなんて必要あるのだろうか。逆にいうと、交渉のテーブルについた時点でもう負けているとも言える。なぜなら多少は譲歩や妥協をせざるを得ない場面が出てくる。


交渉術を磨くよりも、交渉をされないような実力をつけたほうが早いような気がする。

先日、蚊に関する吉田松陰のエピソードを書いたが、同じような体験を思い出した。


先輩講師から、講師デビューのためのトレーニングを受けていたころの話だ。


数週間後の講師デビューに向けて、毎日必死にレクチャーの練習をしていた。マナー・コミュニケーション研修から始まって、営業基礎研修、プレゼン研修、経営・財務の基礎、提案営業研修と合計23日間に渡るプログラムを担当することになっており、準備は時間との戦いだった。


ほぼ毎日レクチャー課題を与えられ、話の骨格を考え、原稿を作り、先輩講師の前で実践さながらにプレゼンするのである。そして、その場でフィードバックをもらい、さらにプレゼンをするということを繰り返していた。


その先輩のモットーは「研修に命をかけること」であり、その指導は、厳しく、妥協を許さず、怒鳴られることもしばしばであった。


ある秋晴れの午後、天気がいいし、気分転換にもなるだろうからと公園でレクチャーのトレーニングをすることにした。


最初は、調子よくプレゼンをしていたのだが、やぶ蚊がたくさん寄ってきたのである。


ひとつかまれ、ふたつかまれ、痒みが押し寄せてくるが、トレーニング中であるから気にかけまいと集中する。お互いに何食わぬ顔でトレーニングを続ける。途中からは、お互い意地になってきて、さらにやぶ蚊に襲われながらも続ける。


1時間ほどトレーニングを続けて、先輩がぼそりとと言った。


「場所を変えようか・・・。」


お互い顔を見合わせて、大爆笑しながら、かまれたところを掻きむしった。数十箇所はかまれていたと思う。


蚊にかまれることは不愉快ではあるが、それよりも大切なことはたくさんあるし、それくらいの集中力や意地、気合がないとなすべきこともなしえないとも思う。