先日、蚊に関する吉田松陰のエピソードを書いたが、同じような体験を思い出した。
先輩講師から、講師デビューのためのトレーニングを受けていたころの話だ。
数週間後の講師デビューに向けて、毎日必死にレクチャーの練習をしていた。マナー・コミュニケーション研修から始まって、営業基礎研修、プレゼン研修、経営・財務の基礎、提案営業研修と合計23日間に渡るプログラムを担当することになっており、準備は時間との戦いだった。
ほぼ毎日レクチャー課題を与えられ、話の骨格を考え、原稿を作り、先輩講師の前で実践さながらにプレゼンするのである。そして、その場でフィードバックをもらい、さらにプレゼンをするということを繰り返していた。
その先輩のモットーは「研修に命をかけること」であり、その指導は、厳しく、妥協を許さず、怒鳴られることもしばしばであった。
ある秋晴れの午後、天気がいいし、気分転換にもなるだろうからと公園でレクチャーのトレーニングをすることにした。
最初は、調子よくプレゼンをしていたのだが、やぶ蚊がたくさん寄ってきたのである。
ひとつかまれ、ふたつかまれ、痒みが押し寄せてくるが、トレーニング中であるから気にかけまいと集中する。お互いに何食わぬ顔でトレーニングを続ける。途中からは、お互い意地になってきて、さらにやぶ蚊に襲われながらも続ける。
小1時間ほどトレーニングを続けて、先輩がぼそりとと言った。
「場所を変えようか・・・。」
お互い顔を見合わせて、大爆笑しながら、かまれたところを掻きむしった。数十箇所はかまれていたと思う。
蚊にかまれることは不愉快ではあるが、それよりも大切なことはたくさんあるし、それくらいの集中力や意地、気合がないとなすべきこともなしえないとも思う。