『プロメテウス』の火は地球にもたらされたか | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


『エイリアン』(‘79)は公開後40年余り経過した現在でもその評価は高められることはあれども決して低められることはないだろう。
幾重にも重層化された構造は多様な情報の集積であり、多分野からの解釈と分析をいざなう。
社会学的、文化人類学的、心理学的、哲学的分野からのアプローチ。美術、造形、フェミニズム、企業倫理、帝国資本主義、人種問題などの切り口での研究。などを可能にしている。


続く3作品はそれぞれ土俵を異にしていて単純に比較できないところが面白い。ヒロインのエレン・リプリーが作品ごとに違う側面を際立たせるキャラ設定といふのも珍しい。各話別人とみなすべきだろう。
で、第一作の前日譚に相当するのがこれ。


『プロメテウス』 Prometheus (‘13) 124分
梗概
地球の各地で発見された古代遺跡の壁画には巨人が天の星を指差す画が共通していた。そのルーツを探るべく宇宙船プロメテウス号はウェイランド社肝入りの惑星探査に乗り出す。

目的の惑星には人類の創造主が眠っており、同時に他の生命体に寄生するエイリアンも制御・管理されていた。高齢のウェイランド社社長は創造主に永遠の生命を与えてもらうことを目論む。

アンドロイド・デヴィッドはエイリアンを地球に持ち帰るべく幼体が女性博士の胎内に宿るように画策。しかし、創造主の思いがけない反応にそれぞれの思惑が綻び始める。

思へばリドリー・スコット監督が指揮を執るのは『エイリアン』以来のこと。しかも自ら製作に乗り出してかなり力を入れていることが知れる。そして1作目を意識した作品作りであることも。

何しろあらすじはほぼ一緒なのだ。冒頭のタイトル表示も『エイリアン』を思わせる方式で懐かしい。アンドロイドの首がもげるのもリピートされるし。


当初は生命起源の謎を追及すべく、人類の創造主に接触する目論みがあったのだが、それはいともあっさりと達成。ミステリー色は極めて薄い。

 *エンジニアの覚醒*

 *なんか怒ってます?*

むしろ人類のルーツよりもエイリアンのルーツに迫る一面の方が興味深いといふ内容であった。

 *エイリアンの素*
そのエイリアンだが、どきどきしながら出現を待ちわびるものの、登場したエイリアンがあまりにも別物過ぎて吃驚。しかし、これ以降宿主を変えながら徐々に変態を繰り返すことにより、お馴染のメタリック系へと変化していくはずだ。

かように、エイリアンに関しても謎解きといふよりはその成長プロセス、変態プロセスを追って行くという塩梅である。

 *良く見りゃフェイスハガーに似てるぞ*

 *腕に巻きつかれて!*

 *ペイルマンぽいヤツ*

 *二個上の右の男がこんなんなっちゃった*

 *エンジニア強い!*

 *エンジニアの体内に・・・で、生まれたのはこの下のタイプ*

 *←コレ*

さて、壮大なスケール感を有する作品だが、大袈裟な割にはさほど実の無い印象を受ける。いや、逆か。内容が薄いゆえ、一大スペクタクルで興味をつないだのか。
しかも、続編を期待させるエンディングで了。これもまた不完全燃焼の要因だ。

 *カミカゼ!*
ただ、新事実が幾つか判明した。
1作目で乗組員が発見した巨大な宇宙船と異星人の遺骸。その正体が明らかになった。
かつ、その異星人=エンジニアが地球人を創造したことが判明。
しかし、何故か地球人を滅亡させようとしたこと
エイリアンの形態は、寄生を繰り返しつつ幼体も成体も変態していくこと。
この星は実験場であり、異星人=エンジニアの故郷は別の惑星にあること。
等々である。

 *生きてるスペース・ジョッキー*

 *ジョッキーのヘルメットを外すと・・・*

 *蘇格蘭の島で発見*
 

さて、今回のヒロイン、エリザベス・ショーン博士はリプリーですら経験しなかったほどの壮絶な状況に追い込まれる。これには観ている側が音を上げそうになってしまうほどだ。

彼女の意思の強さは、自分の体を扱う権利は他の誰でも無く自分だけに帰属する。といった倫理的問題に表明される。男性型アンドロイド提案の善後策に応じることなく幼体エイリアンを断固処置(堕胎)することがその謂いとなる。女性は子供を産む機械とみなす古典的体制への強烈なアンチテーゼだ。

結局、時代が違えどヒロインが立ち向かうのは既存の男性優位制度からの抑圧なのであろう。彼女は女性の権利獲得を目指し積極的自律的に行動する。


ついでだが、生存者は女性(白人)1名アンドロイド(白人)1体。人間の男性はゼロ。有色人種もゼロ。

さてさて、音楽に関してだが、開始後間もなくウェイランド社長のホログラムが登場する場面では、ジェリー・ゴールドスミス(以下JG)のスコアが静かに流れる。

恐らく新録ではあろうが『エイリアン』への原点回帰を音楽で切り結び、整合性を保たせているようだ。

JGファンだったスコット監督ならではの目くばせだろう。

なのに、かつて彼を激怒させた非礼な振る舞いは若気の至りとでも言ふべきなのか。もし良好な関係を保っていればどんな名コンビになれたかと悔やまれる。
『コヴェナント』でもJGの楽曲が起用されることだろう。

 *ジョッキーの頭部見っけ*
 

最後に、凶暴な大嵐のスペクタクルはスコット監督の手により『オデッセイ』(‘15)へと引き継がれるはずである。


同監督のライフワークとでも言ふべき作品作りの1ラウンド目では人類とエイリアンのルーツを辿った。次回は何を期待できるのか?


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。

 *ウェイランド社長*

 *御令嬢♡*

 

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