こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
先回は米国内の社会情勢に鋭敏なハリウッド映画『エイリアン』後の女性像の有様を概観しました。
これらの映画群を通してベトナム戦争以降のウーマンリブ運動は影をひそめても未だフェミニズム的視点に立脚した気運は存続していることが伺い知れます。
では『エイリアン』シリーズ、現時点での最終作品に登場ねがいませう。
『エイリアン4』 Alien: Resurrection ('97)
梗概
『3』で絶命したリプリーが復活。その正体は軍の実験宇宙船内で彼女のDNAから誕生したクローン8号！しかも彼女にはエイリアンの遺伝子が含まれており見た目人間だが超人的能力を有している。
そこに体内にエイリアンを寄生させた人間を搬送してきた宇宙貨物船が合流。
その後実験用のエイリアンが知的発達を遂げ大脱走状態になり軍関係者も科学者も殲滅。
逃走するリプリー一行だがウィノナ・ライダー扮するアンドロイド、体内にエイリアンを宿した男、ゴリラ顔の大男もいたりの異色さ。
最終的にリプリーを母親とみなして懐いてくる新型エイリアンを船外へと吹き飛ばして事無きを得る。
では早速逃走グループの面々を見てみませう。
宇宙貨物船の乗員：①白人系男性リーダー②褐色の肌をした女性③白人系ゴリラ顔の大男④ドレッドヘアの黒人⑤下半身不随の白人系男性⑥ユダヤ系っぽい顔立ちの男（エイリアンを寄生させられている）⑦白人系女性型アンドロイド。
実験宇宙船の乗員：⑧リプリーのクローン8号⑨南米系顔立ちの兵士⑩白人系のエイリアン研究科学者。
両方合わせて10人。
南米系の兵士が最後の最後まで来て死ぬとは。黒人も不在。そして人間の女性はダメでした。リーダーに至っては真っ先に脱落します。
生き延びたのは三人＋一体。またもこの組み合わせ！
その内訳は③類人猿的異形の大男⑤歩行できない男⑧エイリアンの遺伝子含んだ女性クローン。そして⑦女性型アンドロイド。
*普通の人間じゃない二人* *どう見ても人間ですが*
*ゴリラ顔のロン・パールマン190ｃｍ* *血液が強酸性のリプリー*
何とも奇妙な生存者です。正統血統のヒーローは不在です。
ちょっと言いづらいんですが誤解を恐れずに表現するとまるで「フリークス」的一団ですね。
で、このあたりは米国社会におけるマイノリティや社会的弱者の存在感が大きくなっている社会情勢の反映とみなせないでせうか。
クローンや人造人間への蔑視はそのまま異端者への不寛容へとスライドする危険性を秘めています。マイノリティへの対応に関する警告となり得ますし。
*綺麗なアンドロイド*
公開当時は黒人云々言ってる時代じゃありませんでした。
大量流入した異端者＝ヒスパニック系は黒人を上回る勢いで増え広がり下層社会を形成します。英語も喋れない人々も大勢に。
そしてバリアフリーやユニバーサルデザインが浸透し体の不自由な人の生活を支援するのも普通の事になります。
こんな現実が生存者を通して透けて見えるような気がしますがどうですかね。
ところで本作では『エイリアン』でジェンダー・フリーのヒロインとして登場したはずのリプリーの母性が強調されます。
新型エイリアンは彼女の遺伝子を含んでおり互いに親子と認識し合います。彼は生みの親であるクイーン・エイリアンを殺害してしまいますが彼女には甘えるようにすり寄っていくのです。彼女も愛おしさを感じてしまいます。
*新型エイリアンと母性全開リプリー*
思へば彼女は娘を既に失った設定でした。それに『2』で命がけで救出した女の子も『3』で冷凍睡眠中の着陸時に死亡したことになっていました。
そこでめぐり逢った血を分けた「子」に愛着を抱くのも無理なきこと。
ゆえに彼を撃退するには心が引き裂かれる思いで一杯です。
この場面はぐっと胸に迫ります。
ここから強い女性とは社会的進出を果たし性差別と闘うだけでなく自分の家庭も守らねば。みたいな感覚が働いているようにも感ぜられます。
社会的立場も大切だけど家庭も大事。昔から男性はこの手のジレンマを抱えてきましたが次は女性もですね。
『エイリアン4』を観てからその生存者の異様さが気になっていたので記事にしておきました。
本日も最後までお付き合い下さりありがとうございました。
*可憐なウィノナ・ライダー*
関連記事
●『エイリアン』シリーズ（1～4）：印象的キャラ・トップ10