『マシンガン・パニック』で警官が笑うのか | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。

 

引き続き勝手に【漢祭り】開催中!


『突破口!』と同時期に公開された本作品。主演もウォルター・マッソーだが、こちらは犯罪者を追い詰める刑事役である。二本立てで観ると記憶がちょっと混濁してくる恐れあり。
今の自分がそう。


『マシンガン・パニック』 The Laughing Policeman (‘73) 111分
梗概
乗合バスの車内で機関銃による乗客無差別殺人が発生。ジェイク(W・マッソー)の相棒も巻き込まれて死亡。彼は非番にもかかわらず個人的に何らかの捜査を行っていたことが判明。ジェイクは本件と二年前の迷宮入りの事件と関連性があると睨む。新しい相棒レオ(ブルース・ダーン)を無理矢理協力させて両事件の解決に挑む。

*このバス車内で皆殺しの惨劇が・・・*

 

ウォルター・マッソー。なんていい役者なんだろう。
ビリー・ワイルダー監督作品にジャック・レモンとのコンビで何度も起用された。これは素晴らしい履歴である。ワイルダーの脚本で彼を納得させる芝居をする。あのJ・レモン相手に霞むこと無き芝居をする。難易度の高さが分かろうと言ふものだ。


オスカー助演男優賞受賞作の『恋人よ帰れ!わが胸に』(67)でもワイルダーとレモンと組んでいる。喜劇からシリアス劇まで守備範囲が広い名優だ。


本作では家庭内では妻子と疎遠になった仕事人に扮している。これじゃあいけないと分かりつつもやはり仕事を優先してしまう警察官らしい警察官のお父さんだ。


相棒にブルース・ダーン。髭をたてるとかえって目立たなくなる感じだ。むしろ『ザ・ドライバー』(78)の時みたいに髭無しのほうが特徴的な口元が印象的で記憶に残りやすいだろう。


前年72年に『サイレント・ランニング』で主役を張った。ご存知ダグラス・トランブルが監督を務めたカルト的人気を保つSF映画である。

ちなみにだが、SFXはジョン・ダイクストラが担当。特撮界の二大巨頭が参画した夢のような作品である。音楽担当は何とジョーン・バエズ。脚本にマイケル・チミノが加わっている。


 

閑話休題


その他、ルイス・ゴセットJr.がJr無しでクレジットされ、『白熱』(73)でB・レイノルズと協力させられる整備士役のマット・クラークが検死官役で顔を出している。

 *左)L・ゴセットJr 右)アンソンニー・ザーブ*

まあ、地味な男優陣であるが、みんなが真面目な芝居を心掛けているのでどことなく重みのある作風に仕上がった。


ちょうどこの時期にはクライム・サスペンスやスリラーものが大量に生産されており、その時代感を反映しているように感じる。『110番街交差点』、『突破口!』、『サブウエイ・パニック』、『狼よさらば』、『ハッスル』、『セント・アイブス』等々。

疲弊した裏町の汚れ具合や黒人のポン引き、麻薬常習者や同性愛者などリアルな描写を特徴とする映像世界だ。


そして、ベトナム戦争の傷跡を垣間見ることにもなる。本作でもベトナム帰りと思しき人物による乱射事件の一コマが挿入される。『突破口!』でも主人公の相棒が、ベトナムでの経験がある。と発言していた。
振り返ると当時の米国ってマジで暗い世相だったと思う。


さてさて、これには原作がある。ご存知の方も多いだろうが、スウェーデンの推理小説家で、妻マイ・シューヴァルと夫ペール・ヴァールーといふ夫婦合作のミステリ作家の小説。題して「笑う警官」「刑事マルティン・ベック」シリーズだ。勿論、原作は舞台がスウェーデンだが本作は米国内である。
76年のスウェーデン映画『刑事マルティン・ベック』は小説「唾棄すべき男」の映画化だ。
北欧風犯罪映画『刑事マルティン・ベック』

中学生当時は、あの「笑う警官」、とか言われても何も知らぬゆえ全くぴんとこなかった。が、後年「87分署」シリーズと人気を二分するような小説だったことが判明した。が、未読である。
そういうことで、原作本を知る人は観てみるのもいいだろう。


また、勝手に【漢祭り】開催中だが、そんな渋い男優が好みの人も観ていいだろう。
監督は『暴力脱獄』(67)のスチュアート・ローゼンバーグ。音楽はチャールズ・フォックス担当である。


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。

 

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参考:

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