ブロンソンひとり自警団『狼よさらば』 | 徒然逍遥 ~電子版~

徒然逍遥 ~電子版~

「行政書士ができる往年の映画ファン」のブログ
映画・洋酒・カクテル・温泉・書籍 etc
Myニュースレター【CINEMANIA通信】と重複記事あり

こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


先月の『ザ・ドライバー』以降70年代の犯罪映画(なんか凄いネーミング)を選択掲載することが多くなって…。読者離れも進むだろうな。と危惧しつつも俺には同好の士がついてるとばかりに開き直って、

ここに【漢祭り】開催中を宣言。


『狼よさらば』 Death Wish (‘74) 93分
梗概
設計士ポール(C・ブロンソン)は出張先で住民が銃でもって自衛体制を敷いている現状を目にする。そこでもらった土産はなんと拳銃。ところが留守中妻と結婚間際の娘を凌辱され、妻は死亡、娘は精神のバランスを崩してしまう。銃を携え夜の街をぶらつくと犯罪者がそこらじゅうに跋扈している。そこで連中に制裁を加え始める。そうこうしているうちにヒーロー扱いされ始め警察も放っておけなくなり・・・。

すぐに連想したのは『アラバマ物語』(‘62)の主人公アティカス・フィンチ
非暴力主義かつ黒人擁護をいとわぬ正義漢弁護士だ。本邦ではノーネームだが米国内では堂々とヒーローの系列のトップに君臨する小説中の架空の人物。
モッキンバードを殺してはいけない『アラバマ物語』:参照

アラバマ物語DVD
彼は銃をも嫌う平和主義者だが、狂犬病に罹患した犬が跋扈しているとの報を得るや子供たちの安全のために躊躇せずライフルを手に取り一撃で射殺。図らずも一流の射撃の腕前を披露してしまう。
過去記事で“彼のような知性的な人間もいわば肉体的にも強くないといけない。という米国社会の規範のようなものが透けて見えます”と記述した。
これは今日でも深く根付いた思想だと思う。


記事はさらに“単に頭がいいとか勉強ができるだけじゃ駄目で、いざという時には男はマッチョでなくては己も家族も友人も護れない。・・・だからエリートたちは文武両道が求められているんですね”と続く。


本作の主人公も設計士といふホワイトカラーの職業。当初は拳銃にも無関心。だったが、徐々に“ひとり自警団”へと変容していく。そして願いかなって犯人たちを処刑する。
が、本来は家族の仇討ちのつもりがなにやら怪しくなってきて、犯罪者狩りの愉悦を覚え始めたんじゃないかと疑念が生ずる。アブないお父さんだ。
転居先(追放先)では大人しくできるんだろうか。それもまた疑問である。


さて、70年代当時ベトナム戦争の後遺症に悩む疲弊した米国社会を反映する映画が大量生産された。例へば『タクシードライバー』(76)、『ローリングサンダー』(77)、『エクスタミネーター』(80)など。

これらの主人公は動機はともかく外見上は、社会的正義の実現のために司法の手が及ばない悪を討つ。といった共通項がある。本作もそう。


よほど治安の悪化が深刻化していたんだろう。よほど泣き寝入りした市民住民がいたんだろう。その不安不満鬱憤を晴らすガス抜き的装置として勧善懲悪傾向の映画が製作されたんじゃなかろうか。あるひは問題提起のメッセージとして。


同時にブラックスプロイテーション映画(『黒いジャガー』『スーパーフライ』)や女性の自力救済ヴァイオレンスを描いた映画(『リップスティック』『ヒッチハイク』)が台頭する関連性も併せて考察できるだろう。


閑話休題
ブロンソンの娘が暴行による精神的ショックで変調をきたした姿を見るにつけいたたまれない気分になる。大袈裟じゃなしに人生を台無しにされたんだから。
それを思ふと、男子たるものいざという時にはマッチョでなければならぬ。といふ暗黙の米国社会規範が発動されるのも無理ないな。いや、当然でしょ。と納得してしまう。

 *愚連隊にジェフ・ゴールドブラム発見!(左*
 

そんな思念をだらしなく垂れ流しつつ執筆していたら本作品に関して何も書いていないに等しいことに気付いた。が、これもまた徒然逍遥そのものとしてご容赦願いたい。

 *刑事役にはヴィンセント・ガーディニア*


最後に当時のブロンソンの売れっ子ぶりについて。

74年4本。75年3本。76年3本。77年2本。日本公開作品群だ。凄いとしか言いようがない。


本日も最後までお読み下さりありがとうございました。

 

【漢祭り】特集記事

『ザ・ドライバー』低予算でも手抜き無し!

『影なき狙撃者』を換骨奪胎『テレフォン』

正月映画はクリントに任せろ!『ガントレット』

汗まみれのナイスガイ『白熱』

ブロンソンひとり自警団『狼よさらば』

整備士じゃないよ『メカニック』

つべこべ言わず『突破口!』を観よ!

『マシンガン・パニック』で警官が笑うのか

絶対君主の命令に背けるか『ロンゲスト・ヤード』

『帝一の國』だって漢だぜ

非二枚目オスカー俳優の対決『北国の帝王』

参考:

ここでやらなきゃ漢が廃る『ヤング・ジェネレーション』