パシフィック・リムを見てきました。
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム、菊地凜子、イドリス・エルバ
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/
◆お話
2013年、海底から突如現れた怪獣がサンフランシスコを襲撃。軍は多くの犠牲を払いながらもこれを退けるが、半年後、マニラに再び怪獣が現れる。第三、第四の襲撃を受ける中、人類は一致団結して対怪獣用に巨人兵器「イェーガー」を開発する。
イェーガーは怪獣を相手に勝利をおさめ、襲来は一種イベントのようになるが、怪獣の襲来の間隔は徐々に短くなり、怪獣自体も徐々に強くなっていった。
イェーガーのパイロット、ローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)は、抗戦中に同じくパイロットの兄、ヤンシーを亡くす。この時のトラウマがもとでローリーは軍を離れ、「壁」の建設作業をして生活していた。
だがある日、司令官がローリーのもとを訪れ、再びイェーガーに乗るよう告げる。
「壁」が怪獣を止められないことを知り、自分が離れている間もイェーガーが怪獣を退け続けていた事実を突き付けられたローリーは、イェーガーへの再搭乗を決意するのだった。
◆思ったこと
なんせ怪獣が怖い!
イェーガー(=人類)が負けるんじゃないかと思いました。
私が幼いころに見た怪獣特撮モノといえばウルトラマンシリーズなわけですが、こんなに人類が危機に陥ったことはなかったはずだ。だってウルトラマンが安定のヒーローだったから。怪獣がどんどん進化するなんてなかったから。
私にとって、だいたいの怪獣はそのへんにたまたま町があるから踏み潰している、という存在でした(迷惑だけど)。
でも、今回見た怪獣は、明らかに人間を敵と認識して攻撃しているから怖い。
しかし、出てきて何かしようとするたびに、ちゃんとギャーーース!と叫んでくれるのが、恐ろしくも好印象でした。大して意味ないのに必殺技の名前を叫ぶジャンプヒーローのようで。
イェーガーが弱いわけではないのですが、怪獣が圧倒的に強い。強いというか、制作側の力が入っている。
イェーガーは「モノ」でした。
パイロットが入れ替わってもあんまり問題はないし、パイロットのほうにも「俺と兄貴の夢のゆりかごさ」みたいな思い入れはないらしく、新しいパートナーを歓迎する(まぁ、そうじゃないと動かないから仕方ないけど)。壊れても大して何も思わないみたい。
コクピットにはフィットネスマシーンのようなもの(すみません)があって、パイロットが体を動かすとイェーガーも同じように動く仕組み。ちょっとGガンダムを思わせるものもあり、個人的には面白かったです。
しかし、あんまり人間が乗っている必要性を感じないというのか、ここまで技術進んでるんだったら、リモートにすればいいじゃん、と思ってしまいました。
ガンダムにしろエヴァにしろマジンガーにしろ、そういうことって思ったことなかったから、むしろ不思議ですね。
本作では、人間とロボットの間の絆を描く時間はなかったのかもしれないです。
◆ストーリーのこと
ストーリーはいたってシンプル。
怪獣出現→戦って勝つ→怪獣出現。強くなっている→なんとか勝つ→怪獣が出てくる海底の裂け目をなんとか塞ごうとする→結末へ
ここにこってりしたヒューマンドラマが入ってくると胃もたれしそうなので、人間の話はこのぐらいでよかったのかもしれないです。
それでも、オタク生物学者のニュート、数学者のハーマンのコンビはいい味を出していたし、ロン・パールマン(メガネを取るまでわからなかった私を笑って)もオイシイ役で、ずっと緊迫が続くのではなく、いいタイミングできちんとユーモアが滑り込んでいて、かえって映画が締まっていました。
こういうのって、うまくしないと「おまえらはもういいんだよ!」ってイラッとしますよね(笑)
菊地凜子(森マコ役。森雪じゃないんだね)は、英語もうまいしアクションも良かったと思う。日本語が不自然なぐらいでした。
疲れていたのか、顔が怖かったけど。
芦田愛菜がマコの幼少期を演じていました。まぁなんというか…そんなに上手いのかなぁ? 外国の子役ってどうしてあんなにすごいのかな、と思いました。
もう少し知りたかったのが、ロシアの夫婦パイロットと、中国の三つ子パイロット。特に中国のパイロット、あとで写真を見たらすごくかっこいいんですけど!(本当に三つ子の俳優さんらしい)
ほとんど出てきませんでした。
最初の恐怖映像が長いので(笑)、結末はけっこうアッサリ感がありました。
あ、あともう一点。
ラヴクラフトのかおりがそこはかとなく。『エイリアン』もね。
◆イェーガーのこと
イェーガーに乗るパイロットは、自分の神経とマシンとを接続します。これが「ドリフト」。
しかし、一人で乗るには負担が大きすぎるため、二人で搭乗し、左脳と右脳を分担します。このとき、パイロットはお互いの意識と記憶を共有することになる。
二人のパイロットの同調性が高いほど、イェーガーは強くなる。だから、パイロットたちは親子・兄弟や夫婦が組んでいることが多いわけ。
はい、ここで思い浮かぶことがありますよね。
そう、エヴァンゲリオンです。
パイロットとマシンとがシンクロして動くわけで、(少なくとも字幕では)「シンクロ100%」という言葉が出てきていました。映画では、パイロットとマシンというよりは、パイロット同士のシンクロ率が重要視されてはいましたが。
しかし、イェーガーのデザインはエヴァよりはパトレイバー。がっしゃんがっしゃん走るところなんて、本当にメカっぽい。
エヴァは、生体兵器に近い印象がうすらぼんやりと残っています。傷つくと赤い液体が出ましたよね、確か。
エヴァのように動物的なしなやかな動き方ではなく、イェーガーは硬い重い機械の動き方でした。どうやったら機械っぽくなるか、研究したんでしょうね。
なんというか、カッコ良くないとはいいませんが、軍は実用に重点を置いて開発したのでしょう。
怪獣に立ち向かうイェーガーはとても頼もしかったですよ。ちゃんと必殺技もあるし。でも、基本的に殴り愛なんですね。火器でバカスカ攻撃するのでなく、ヒト型をしている意味が(現実的にあるかどうかはともかく、映画としては)ありました。
ロボットアニメを実写で表すとこうなるんだなぁ、と納得できました。
◆まとめ
一流の監督が大真面目に作った怪獣映画。
面白かったです。
監督の怪獣大好き(オタク)エネルギーがあふれていて、ある年頃の日本人なら好感を持つはず。それでなくても、怪獣好きならきっと楽しい。
デートムービーに向くかどうかはお二人の好み次第ですが、強くお勧めはしないかなぁ。
なぜなら、怖いから。
怪獣映画が怖いものだって初めて知りましたよ、私は。
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