★ 亜鉛について
- 亜鉛は、細胞分裂増殖をはじめ、タンパク質合成、卵子や胚の防御機能に関与し、受精、着床、妊娠予後に有利に作用することが知られています。
- 亜鉛はフリーラジカルを除去するスーパーオキシドディスムターゼ(Cu-Zn-SOD)の主要構成元素として抗酸化作用も亜鉛の重要な機能の1 つとして知られています。
- 直接的にも間接的にも生殖機能に関与していることから、反復不成功で血清亜鉛が低値の場合は、食事を改善し、亜鉛サプリメントの補充が推奨されます。
★ 亜鉛濃度と妊孕能の関係
- 亜鉛はタンパク質と結合し、機能が発揮され、300 種類以上の酵素の構成要素として触媒作用に、また多くのタンパク質の構造の維持作用に関与しています。
- 男性に比べて女性の妊孕能との関連についてはそれほど知られていません。
- 亜鉛が不足すると、男性では精子不良、女性では間接的に着床障害や不育と関係しているのではないかと考えられています。
★ 亜鉛濃度と妊娠率(Time To Pregnancy)
Nutrients 2019; 11: 1609.
妊娠前の血清亜鉛濃度は妊孕能に良好な影響を及ぼすことが示唆されています。
Grieger らは、1060 名の妊婦の妊娠初期の血清セレンや銅、亜鉛濃度と妊孕能との関連を後ろ向きに検討しています。血清亜鉛濃度が低レベルの女性は中レベルの女性に比べて妊娠まで長くかかりました。また、血清セレン濃度が低レベルの女性は高レベルの女性に比べて妊娠まで長くかかりました。
★ 銅/亜鉛比の上昇は原因不明不妊のリスク因子となり得る
AJPS 2005; 2: 72
26 名の原因不明不妊の女性と20 名の妊孕能正常な女性の血清中の銅と亜鉛濃度を比較したところ、不妊症群の亜鉛濃度は対照群に比べて有意に低く、反対に銅濃度は有意に高いことがわかりました。また、銅/ 亜鉛濃度は不妊症群で有意に高いことがわかりました。
★ 銅が上昇すると着床の障害となる可能性があります。
BMC Res Notes 2017; 10: 387.
銅亜鉛濃度と妊娠率の関連について、40歳未満、3BB以上のホルモン補充周期凍結胚盤胞移植について、妊娠群と非妊娠群を比較したところ、銅濃度は妊娠群と比べ非妊娠群で有意に高くなっていました。最も適切なカットオフラインは、銅濃度160未満、銅/亜鉛比1.60未満でした。
★ 亜鉛と不育症
FASEB J 2009; 23: 2244
不育症の検査項目のうち凝固機能検査のプロテインSとプロテインCは、血液が固まることを抑える働きがあります。その働きに異常があると、血液凝固が進み、子宮や胎盤で血栓ができます。亜鉛が不足すると、プロテインSのブレーキ機能が減少することが推測されます。
以上より流産既往がある場合や不育症の方では、妊娠成立後も継続が推奨されます。
★ 女性の亜鉛摂取量
厚労省の食事摂取基準(2015 年度版)
30~49 歳の女性の推奨量は1 日8mg、妊娠後は10mg(付加量+2.0mg)です。それに対して国民健康・栄養調査(平成30 年)では30~39 歳で7.7mg、40~49 歳で7.5mgしか摂取していません。
★ 血清亜鉛値
日本臨床栄養学会
・80μg/dL 以上・・・・・・・・・充足
・60μg/dL 以上80μg/dL 未満・・潜在性亜鉛欠乏
・60μg/dL 未満・・・・・・・・・欠乏
★ 当院管理栄養士の望妊レシピ
亜鉛は、牡蠣、牛肉、豚肉、うなぎなどに多く含まれています。
食事からのバランスのよい摂取を心掛けましょう!
望妊レシピ:油揚げのOKAZUピザ