前の記事の続き
緊急停止ボタンを押すと本当にすぐ止まってくれるんだ、と感心しながらも、男性ばかりの車内です。倒れていたのが若い女性だと分かったからには私が彼女のそばにいて声をかけた方がご本人にも安心してもらえるのではないかと思い、なるべく優しくて透明感のある発声を心がけながら「大丈夫ですよー。ゆっくり息をしてねー。」と声をかけ続けることにしました。
それと同時に身分証などを探すためにカバンに直接触れるのも私の役目になりました。
そうしているうちに、まもなく車掌さんがやってきて、状況を把握してくださいました。
それで車掌さんが「ひとまず次の駅で車椅子を待機させるので、次の駅まで電車を動かしましょう」と言い、そうすることになりました。
それからまもなくに車椅子の待つ駅に到着しました。
ホームに着き、扉が開くと車椅子がすぐそばに来ていました。
誰かが「男の人たち手を貸してください!」と声を上げたので、それに答えるかのように何人かの男性が集まりました。
私は、彼女がたすき掛けしているカバンに彼女のヘルプマークとヘルプマークの紐と、お財布、身分証などをなるべく元通りの位置になるように入れて、しっかりファスナーを締めました。
そして「カバンをしっかり閉めたので、もう大丈夫です。お願いします」と告げて、男性の皆さんに彼女を預けました。
彼女はあっという間に車椅子に座ることができました。
すると、真っ青な顔をしていた彼女が目を開けて、弱々しい声で「ありがとうございました」と言ったのです。
よかった!!
ヘルプマークのカードの中にも書いてあったのですが、座って呼吸を落ち着かせると大丈夫になるのだそう。
これで安心です。
その駅は、彼女の免許証に書いてあった住所の最寄りの駅でした。
多分、彼女が降りようとしていた駅で間違いないと思います。
そして、医療従事者だと名乗った男性も一緒に降りました。
第一発見者のほろ酔い2人組のお兄さんも「反対方向の電車に乗っちゃったからここで降りよう」と言って一緒に降りました。
車内の誰かが「忘れ物はないか?」と声をあげました。
私も周りを確認しました。
降りることにした方々も「僕の手荷物はこれだけだから」と答えてくれたので、これで大丈夫だということになり、お互いに感謝の言葉を述べつつ、やがて電車の扉は閉まりました。車内アナウンスによると、およそ8分遅れで出発したようでした。
出発した車内では周囲の方々と「ヘルプマークは気をつけて見ていないといけませんね」と話しました。
そして私は、自分の声をこんなところで役立てることができたのが嬉しくて嬉しくて仕方がなくて、1人で何度も思い起こしながら、窓の外を眺めて帰りました。
実は、先月まで2ヶ月近く喉の調子が悪くて、一時は声が元通りにならないのではないかと不安な日々を送っていましたので、元通りになった声が、こんなふうに世のため人のためになるなんて、もう嬉しくて仕方がないのです。
これからもこの声を大事に使います。
そして、この声で喜んでいただける現場があるのなら、何をおいてもその現場にベストな状態で馳せ参じないといけないと思いました。
そのためにも、自己研鑽と健康管理です。しっかり行いたいといっそう強く思いました。
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