疲れていたのは確かだ。
だけど少しも眠くない。
そしてついさっきまで感じていた疲れも、まるで魔法でも使ったかのように、きれいに消え去っていた。
理由は判っている。なぜかと考えるまでもない。
愛しい女を初めてこんな場所で抱きしめてるんだから、疲れなんて吹っ飛ぶだろう。
静寂で満たされた部屋に二人きり。
そのことを意識すると、途端に緊張感が俺を包み込んだ。
「テギョンさんの心臓の音がよく聞こえます」
「そ、そうか?田舎は静かだからな」
「ドクドクって・・・すごく速いような気が・・・それに何だか身体も熱いですよ、大丈夫ですか?」
「シャ、シャワーが熱かったんだ」
心配そうな顔で俺を見るミニョの瞳に吸い込まれそうだ。
『手は出さない』
『ファン・テギョンは有言実行の男だ』
どうしてあんなことを言ってしまったのか、と少し悔やんだ。
首元に鼻を近づける。
俺がいつも使っているボディーソープなのに、そこから香るのは少し甘さを含んだミニョの匂い。
腕、胸、脚・・・
触れているすべてが柔らかくて、気持ちよくて・・・
「あ、あの、テギョンさん?」
おとなしくなっていたミニョが、またごそごそと動き出した。
「こら、動くな」
「でも、あの・・・脚が・・・テギョンさんの脚が、動いてます」
指摘されて気づいた。いつの間にかミニョの脚を挟み、すりすりとその感触を楽しんでいることに。
「お、俺は手は出さないと言ったが、脚を出さないとは言ってない」
顔を上げたミニョと目が合い、俺は気まずくて視線を逸らした。
「ぷっ・・・くくっ・・・」
ミニョが笑いだす。その笑いはなかなか止まらなくて。
俺はそんなに可笑しなことを言ったんだろうか?
俺の胸で笑い続けるミニョ。
一応俺に気を遣ってるのか、笑うのを堪えようとして、でも堪えきれず、くすくすと身体を震わせ続ける。
その姿が可愛くて。
穏やかで幸せな時間。
俺がずっと求めていたもの。
ここはミニョの部屋で、ミニョの布団で・・・
あーもう、ダメだ!
俺はミニョに覆いかぶさり、そしてそのまま唇を塞いだ。
「んっ・・・テギョンさん、手は出さないって!」
「手は出してない、俺は口を出してるんだ」
「口を出すって・・・使い方、違ってませんか?」
「う、うるさい、嫌ならやめる、はっきり言ってくれ」
さっきのような笑いはミニョには起きていない。
俺を見つめる目。
恥ずかしげに少し流れた視線は、すぐに戻ってきた。
「いや・・・・・・じゃ、ない・・・です・・・」
カーッと真っ赤に染まる顔。
俺はゆっくりと顔を近づけ、深く深く、口づけた。
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